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アルバムをなぞる指先の決断30
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記憶後退で18歳になってしまった神くんと一緒に住んで3日目になった。
神くんは相変わらず僕を警戒してるようだけど、神さんと住んでる時とそう変わらない、ゆったりとした時間が流れてる。
ただ唯一違うのは、同じベッドに寝ながら、触れることも抱きしめてもらうこともないことくらい…
神くんが寝入って、あどけない表情の寝顔を朝まで眺めながら、可愛いなぁと微笑ましかったり、その初々しい彼に触れてしまいたい淫らな欲望を抱いたり、体は熱くなるばかり…
たった3日…、されど3日。
あと何日寝顔を眺めたら、その瞳は僕をマキと呼んでくれるのだろう…
マキ「……神さん……」
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午前中からお昼過ぎまで大学の僕は、心配だけど神くんを残して行くしかなく、午後の遅い時間の講義は必須以外は休んで帰った。
昨日、谷崎さんに会った神くんは、今日も谷崎さんと会う約束をしていて、夕方出かけて行った。
本当はついていきたいけど、今は神くんに落ち着いてもらうのが大事だし、信頼を損なうと取り返しがつかなくなってしまうから、後をつけることは出来ない。
それに、今日も神くんと入れ替えで忽那彩さんがやって来た。神さんの診断書を渡し、僕の知ってることはだいたい話終わり、今度は百目鬼さんの話を聞きに来ると言って帰ろうとした彩さんは、優しくも厳しい眼差しで僕の頭を撫でた。
忽那「よく眠れてないんでしょう」
質問というより。決めつけに近い言葉に、またかと思いつつ、彩さんの手を避けて僕はにっこり返した。
マキ「寝てますよ、神くんの隣でたっぷりと♪」
僕の返事に彩さんがにっこり笑ったけど、信じてないって顔してる。
忽那「手が温かい気がしたんですが…、体調は大丈夫ですか?」
ほんのちょっと触れた指先の体温を気にするなんて…
この人に僕の現状がバレたら物凄く厄介だ。
マキ「僕、体温高いんで♪」
忽那「そうですか、それならいいんですが。今年は熱の出ないインフルエンザが流行ってますから、下火になってるとはいえ油断できませんよ」
マキ「はーい♪気を付けます♪」
忽那「今の百目鬼さんはおそらく免疫力が低下してますから、百目鬼さんに移ったら重症化するかもしれませんし。マキちゃんが元気なら良かった」
サラッとかわしたつもりだったのに、ど真ん中貫かれた気分だ。
でも、僕は本当に体調は悪くない。
…そう…体調〝は〟…。
マキ「僕予防接種受けてますし♪僕の知り合いのお医者さんにこないだ診察してもらったばかりだから大丈夫です♪、風邪も引いてないし元気100倍♪マキちゃんです♪」
僕の茶目っ気ポーズを見ても顔色を変えず、優しげな厳しい瞳のままの彩さんはにっこり笑って、また僕の頭を撫でる。
忽那「それなら良かったです」
って、全然信じてないって感じなんだけど…
忽那「…そおいえば、〝奏一が〟」
突然、意味ありげに笑みを深め、奏一さんの名前を口にした彩さんは、僕の瞳を覗き込む。
忽那「今日凄く会いたがってましたけど、遠慮したみたいです。後で連絡してあげてくださいね」
ニコニコと優しさ溢れる極上の微笑み。
この人は、奏一さんの話してた通り、優しくて頼りになる賢い人、まさに才色兼備って言葉がピッタリ。
マキ「…わかりました♪」
彩さんの優しい微笑みは、誰もが安心するような笑顔。だけどこの人は優しいだけじゃない。奏一さんのように、優しさと厳しさを兼ね備えた人。だから、ニコニコしてるけど、探してる…、いや、最悪感づいてるのかも…
忽那「それじゃ、また後日」
マキ「ありがとうございました。百目鬼さんのことよろしくお願いします」
彩さんを見送って玄関を閉め、その足音が聞こえなくなって、やっと肩の力が抜けた。
マキ「はぁー、疲れたぁー」
別に彩さんが嫌いなわけじゃない。
だけど…、神くんと暮らしだして現れ出した不都合を、あの人に知られるわけにはいかない…
疲労感よりも強く溜まってきてるものに呆れ、僕は玄関にそのまま蹲る。
神さんと暮らしていた時もコレが無かったわけじゃない、だけど…、今ほど激しく、足の先から這い上がってくるような感覚に襲われたことはない。
マキ「…そろそろ、神くん帰って来るよね…」
彩さんと入れ替わりで、谷崎さんに会いに行った神くんが帰って来る。
そろそろ晩ご飯の支度をしないと…
「ニャー」
玄関で蹲る僕に、ミケが心配そうにすり寄ってきた。
ここ数日、三毛はずっと悲しそうな表情をしている。それもそのはずだ、ミケは神さんが大好きで、神さんが飼ってる猫だ。だけどもう随分と神さんに構ってもらえず、神くんは生き物が苦手らしく、ミケに触れようともしない。
マキ「ふふ♪ありがとう、僕はなんともないよ」
「ニャー」
マキ「ミケも早く神さんに構ってもらいたいよねぇ。もうちょっと僕で我慢して」
ミケを抱き上げると、ミケはゴロゴロ喉を鳴らしながら僕の頬に擦り寄り嬉しそうにしてくれた。
マキ「さぁミケ、キングと一緒にご飯食べようね」
あとどのくらい
時間が経てば良いのだろう…
あとどのくらい
ベッドの隅で彼の寝顔を眺めれば良いのだろう…
ゆっくり待つ自信はある…
だけど
予想以上に早いスピードで侵食する飢えを
あとどのくらい抑えておけるだろう…
このままではダメだ…
明日にでも先生の所へ行かなくちゃ…
体に渦巻く熱をどうにかしなきゃ…
僕は…
自分が自覚してるよりもはるかに…
彼の与えてくれる温もりに…どっぷり浸かりすぎてた…
僕は弱くなってる…
こんな大変な時に、自分を抑えられないなんて…
人の心を救う仕事をしたい人間が…
一番守りたい人すら守れないなんて…
僕は神さんを守りたい…
神くんに寄り添ってあげたい
ずっと願ってた
アルバムの中の冷めた目をした彼に会っていたなら、絶対にそんな顔させないかったのにって…
僕がもっと早くアルバムの中の彼に会っていたら、絶対にあの過ちを犯させなかったのに…
絶対に絶対に、笑顔にしてあげたのに…
って…
マキ「まだまだだなぁ…」
記憶が戻って欲しいと思ってる…
強く抱きしめて欲しいと思ってる
ドロドロに抱いて欲しいと思ってる…
今の僕は未熟すぎて…
何1つ神くんの役に立ってない…
百目鬼「ただいまー」
神くんが帰ってきた!
マキ「おかえりなさい!」
無事に帰ってきてくれたと玄関に駆け寄ったら、神くんはなんだか俯いて落ち込んでるようだった。
マキ「神く…、神、どうしたの?」
百目鬼「…、あんたは、俺のことなんでも知ってるんだよな」
マキ「…うん」
百目鬼「俺、なら教えてよ。地元でなんかやらかしたのか?」
…。
地元でやらかしたことがなんなのか、それを説明するにはあまりにも酷なこと。
一瞬判断に迷ったのが、神くんに伝わってしまい、彼は肩を落とした。
百目鬼「…やっぱそうなんだ」
マキ「…谷崎さんに何か言われたの?」
百目鬼「仲間の顔が見たいって言ったら、反対された」
マキ「そっか…」
それは谷崎も困っただろうな…
百目鬼「なぁ、…あんたが前言ってた人って誰なの?」
マキ「え?どの人?」
百目鬼「…あー…、いち…、いち?…しゅういち?とかそんな名前、言ってたじゃんか二人、それ、谷崎にも言われたんだけど、俺が知らないって言ったら露骨に話しそらされた」
奏一さんと…
修二のことだ…
百目鬼「なぁ、30歳の俺はいったいどんなやつだったわけ?」
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