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アルバムをなぞる指先の決断46
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緋色さんに連れてこられたのは、以前賢史さんと来た個展会場のビルの三階事務所。
暖房の効いた暖かで広々とした部屋の中は、美術品とアンティークな家具に囲まれていて。その部屋の真ん中に、2畳ほどの広い檻の中で飼育されてる金色の毛並みのフェネットがいた。
金色の麦畑が夕日に照らされたような鮮やかな暖色のグラデーション、ふわふわの毛生に大きな耳と尻尾。ダークグレーのまん丸の瞳。
マキ「あ〜ん♡きゃわいぃー!」
思わず大きな声で叫んでしまったから、フェネットが巣穴に隠れてしまった。
大興奮中の僕は、緋色さんの方を振り返り、フェネットの名前はってキラキラお目々で質問すると、ちょっと笑いをこらえながら教えてくれた。
緋色「あの子の名前は、リプカ」
マキ「可愛い名前ぇ♪。リプカ君、初めましてマキです♪」
緋色「?、リプカ君って、この子が雄だって分かるの?」
マキ「だってイケメンじゃん」
緋色「…」
マキ「リプカ君、おいで、お部屋から出てきて、もう一度綺麗な姿を見せてほしいなぁ」
巣穴から、目だけを光らせる彼に、優しく話しかけると、緋色さんがそれは難しいと肩を上げた。
緋色「この子警戒心が強いから檻の中に手とか入れない方が…」
マキ「やぁ〜ん。この子想像よりフワッフワのすべすべっ!」
巣穴から出てきたリプカが、僕の手に擦り寄ったのを見て、緋色さんは目を丸くして驚く。
言葉を発さず口をパクパクさせてるけど、全部顔に書いてあった。
緋色(リプカの頭に触ってる!?俺っ1週間かかったのにッ!!)
マキ「あははっ、擽ったい」
緋色(リプカが手を舐めたっ!)
マキ「可愛いい♪、ねぇねぇ緋色さん、リプカ君抱っこしていい?」
緋色(か、完全に懐いてる!?)
マキ「うふふ♪、綺麗な毛並み、ふわっふわでサラサラ、ご主人様が大事にしてくれてるんだね」
緋色「……膝の上に乗った…。こないだのハスキーといい、このフェネットも警戒心強い動物なのに…」
警戒心の強い動物…。
そう言われて一番最初に浮かんだのは、ライオンのような警戒心で僕を威嚇した神さん。
マキ「ふふっ♪、僕、警戒心強い動物と仲良くなるの得意だから♪」
それに、修二やむつ、賢史さん、奏一さんも最初は怖い顔してたっけ。みんな、自分の秘密や大切な部分だったり、大事な人を守るために毛を逆立てて睨むけど、そう言う人たちはみんな、僕からしたら可愛らしく見えちゃうから怖くない。
警戒する人たちは、みんな敏感だから、僕が怖がってない、危害を加える気がないことがすぐ分かる。
だから、割とすぐ仲良くなれる。
緋色「…へー。だから、奏一さんとも仲良くなったの?」
なんだか含みを感じたけど、ここはサラッと流す。
緋色さんは、バカじゃない、腹黒ではないだろうけど、何も考えてない人とも違う。
マキ「あは♪、そうそう、奏一さんにも、最初は凄い睨まれたよ。僕が修二の周りをうろちょろしたからね、ふふっ♪」
緋色「で?、今では奏一さんの一番のお気に入りってわけだ」
マキ「…んー、それに関しては、ちょっと違うかな。僕、修二が困ってる時思いっきり足突っ込んだから、奏一さん恩返しのつもりなんだよ。僕自身やんちゃで危ないことするから心配してくれてて、お気に入りっていうより、修二の代わりに守ってるっていうか、奏一さんの過保護が爆発してるというか…。」
僕と修二が頑固者ってところで似てるから、過去に修二にしてあげられなかったこと、今度は僕にしておきたいっていうのもあるんだろうね。
緋色「まぁ、確かにあの人は過保護だけど、修二への過保護はしょうがなかったっつーか。奏一さん、朱雀の時向かう所敵なしだったから、奏一さんに敵わない奴の中の馬鹿な連中が修二を狙ったりして、怪我したこともあったからな」
…、緋色さんは、修二が百目鬼さんに監禁されて、本当はナニをされたのか…知ってる側なのか?
マキ「…奏一さん、その事凄く責任感じてた。でも、修二には華南とむつがいたし、奏一さんには彩さんがいたから、今はもうだいぶ気持ちも軽くなってると…」
緋色「今だにあの調子だけどね。…まぁ、前よりはマシになってる…けど…」
マキ「けど?」
緋色「修二離れが少しはできてきたのかと思ったら、マキちゃんが現れた」
マキ「あは♪、まぁ、僕が足突っ込んだからね♪」
緋色「奏一さん結構警戒心強いし、そう簡単に受け入れる人じゃない、でも、マキちゃんが現れてから、変わった。色々悩んでた事も吹っ切ったみたいだし、ずっと苦しんでた事にも一区切りつけて今は落ち着いてる。修二もそうだ、修二も、高校卒業するまではいつまでも奏一さんに守られて大人しかったのに、急に男な顔するようになったし、やっぱりマキちゃんの存在があった」
マキ「んー。確かに、僕は足を突っ込んだから無関係とは言わないけど、修二も奏一さんも自分の力で変わったんだよ。2人を知ってる緋色さんなら分かるでしょ、あの2人が、他人の意見をはいそうですかって聞く人じゃない事。2人には、友達や仲間がいた、ずっと支えてくれる人たちがいた、だから、頑張ったんだよ」
緋色「…、確かにそうだ。奏一さんにはずっとあの人を慕い、あの人のためなら動く仲間がいた。それに、1人でなんでも背負うあの人を叱る谷崎さんと、頼れる彩さんがいた。でも、それでも、あの人は、背負いこんでるもの下ろそうとはしなくて…」
マキ「…緋色さん?」
緋色「…、あんたが現れてからだ…」
マキ「えっ?」
あれ?
会話の流れ…怪しくない?
緋色「マキちゃんが現れてからなんだ、奏一さんが、やっと背負いこんでるもの一旦下ろして休んでくれたの」
マキ「緋色さん、だから、それはみんなの協力と、奏一さんの心が整理できるだけの時間が経ったってことで…」
緋色「確かにそれもある。でも、それだけじゃない」
マキ「…緋色さん、あの…」
緋色「マキちゃん。君にとってもそうじゃないの?奏一さんのこと、特別頼りにしてるよね」
マキ「緋色さんにとっても、奏一さんは特別頼りになる人でしょ?」
なんか、よくない方向に話が進んでる気がしてそらしたけど、緋色さんの目は真っ直ぐ僕を見た。
緋色「特別頼りになるよ。ってか、腹の探り合いとか、遠回しなやりとり、実は得意じゃねーから、このさいハッキリいうわ。ってか、マキちゃんぶっちゃけ奏一さんのことどう思ってんの?」
マキ「えっ?どおって、緋色さんと同じで、奏一さんは特別頼りになるお兄さん的存在だよ」
緋色「今言ったろ?腹の探り合いとか得意じゃねーって。目を見りゃわかる。何度もリングに上がって敵の攻撃を読んでた。目で相手の心理を分からなきゃやられる世界にいたんだ。騙されないぜ。マキちゃんのその目で笑ってるのは完全な誤魔化しだ」
!?
マキ「誤魔化してなんかいないよ。奏一さんは本当に、すごく頼りになるお兄さんで…」
緋色「それだけじゃないだろ?」
…これって
マキ「…何が言いたいの?」
緋色「……マキちゃん、奏一さんのこと、恋愛対象として好きじゃない?」
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