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ドーナツの甘み(3)
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◆ ◆ ◆
バス時間まではあと二十分もありましたので、二人ならんでベンチに座ります。
この暑い中、ぺたりと密着するように。
「楽しみだね! ねっ!」
響はとにかく浮かれています。
「そういうとこってさ、やっぱカップルばっかりなのかな? ねぇ、ボクら寂しいヤツって思われないかな? ねぇ、ねぇねぇ!」
本当に本当に、心底楽しそう。数秒たりともじっとしません。
足をぶらぶらさせたり、肩を回したり、龍広の小脇をつついたり。
「まあ、いいか! せっかく行くんだもんね。思い出をつくりに行くんだし、他人の目なんかどうだっていいや! 楽しみだなー、流れるプールとかあるのかな? ねぇ、ねぇ!」
龍広はもう、暑さで余裕が無いほどくらくらしていましたので、
「うるさいっ! 少し、黙ってろ!」」
と、思わず叱りつけてしまいました。
「……むぅ」
眉間にシワを刻みながらも、響きはまだ何か言いたそうに龍広を見ます。けれども言われた通り、それっきり黙りこみました。
「はあ」
龍広は何度目か分からない溜息をまたひとつ。
黙っていても汗だけは噴き出してきます。
なのに、熱は皮膚にとどまって、うまく出ていかない。
いくら水を飲んでも舌の上で蒸発していくようで、身体にまったく染みません。
鳴くセミの声が、しゃんしゃんと、近くなったり遠ざかったり――。
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