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ドーナツの甘み(6)
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――こんなこと……。
頭の中で強く念じていたはずなのに、龍広はその丸い小さな空気口に、息ではなく、舌をはわせていました。
かすかに、甘い風味がしました。
龍広の視線は響の手元のペットボトルへ注がれます。
漆黒の液体に真っ赤なラベル――。
「……んっ」
その味がまた舌につたわった瞬間、思わず、喉の奥から声が漏れてしまいました。
なんという邪な感情。罪悪感が込み上げてきます。
情けない。それなのに、とまらない。
心臓をバクバク鳴らし、入口に舌を這わせながら、少しずつ少しずつ空気を吹き込んでいきます。
「……っふ」
自分と彼の吐息が中で混ざり合って――。
「ふぁ」
まるで生き物のように、ふくらんでいく――。
「龍広くん!? 顔、真っ赤だよ」
「……っ」
「もしかして肺活量無い?」
「――んっ!」
龍広は無言のまま、すべての元凶である浮き輪を突き返しました。これ以上やったら頭がおかしくなってしまいそうで。
「もー……、しょうがないなあ」
響は呆れたように肩をすくめ、自分でふくらまし始めます。ふぅ、ふぅと息を吹き込む度、龍広は胸の奥の方がうずくのを感じていました。
あまりにぞわぞわするものですから思いがけず、ピクンと、跳ねたりもして。罪悪感がますます大きくなっていく。
「ねぇ、まだ赤いよ」
「……ん」
「日に焼けた?」
すっかりのぼせてしまった彼はただ、こくん、と、うなずくので精一杯だったのでした。
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