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飛行船×プレート×助けて
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「本当は最終試験で出てくる予定じゃったが、現場のピリピリとした空気もいいのう。このまま同行させてもらう事にしたわい。ホッホッホ」
ネテロ会長がそういい、それから再び口を開いた。
信じられない言葉を、その口から出す。
「それと、もう一つ。よく聞くのじゃぞ。0番のプレート、これを試験が終わるまでの間に盗れた者は即合格とする」
「…!?」
バッと皆がこっちを見る。
…何故、俺が…!?
「尚、0番は守り切れれば合格としても良い」
何考えてるんだ、この人…
「いたぞ!あっちだ!」
バタバタと飛行船内を走り回る音。
武器を片手に俺を追う受験者たち。
女子供も例外ではなかった。
「…っ…」
真っ暗な倉庫の片隅でじっと息を潜め、やり過ごす。
どうしてこんな目に…
寒い倉庫で、はぁっと息を漏らす。
誰もいなくなったのを見計らってからそっと倉庫から出た。
とにかく、何処か暖かいところへ…
と、不意にマントを何かに掴まれる。
…猿…?
他の受験者のペットの、猿。
猿は俺のマントを引っ張りながら、けたたましく鳴き喚きはじめた。
「キキーッ!キキーッ!」
「や、めろ…っ」
「いたぞ!」
「こっちだ、早く来い‼」
「逃がすな!挟み撃ちだ‼」
「…っ」
何とか猿の手から逃れ、廊下を走る、走る、走る。
けれど行く手を阻まれ、後ろからも追われ。
…逃げ場が、ない…
念は基本的に試験中は使えない。
…どう、したら…
ジリジリと後ろへ下がる。
と、ぶつかる壁と…ノブ?
そうか、飛行船のハッチ…!
俺はマントで一瞬の隙を作り、ハッチを開け素早く外へ出た。
具現化で作っているマントを慌ててワイヤーに変え、エンジンモーターのすぐそばに巻きつけてぶら下がる。
外は運悪く雨。
寒い中、ずぶ濡れになってしまったけれど、背に腹は…というか雨に命は変えられない。
悔しそうに受験者たちが銛や弓矢を使って攻撃してくるが、雨のせいで上手く狙いが定まらないようだった。
1時間もそうしていると、やがて受験者たちは退散して行った。
上からは、まぁ、まだ時間はあるし、という言葉が漏れ聞こえてきた。
…どうして、どうして…
…寒い…
そっとワイヤーを伝って上へ登り、誰もいないのを確認してから中へ入った。
寒い、寒い、辛い…
ずるずると濡れた身体を引きずって歩く。
けれど、また何処から襲われるかわからないため、頭は常に緊張状態。
遠くから、次こそはと意気込む声さえ聞こえた。
…誰か…皆、俺を狙ってる…
そうだ、1人だけ、いた…合格に執着してない奴…
「…ぅ…ヒソカ…」
壁伝いに歩いて、ヒソカを探す。
少し大きめの団欒室の片隅で、ヒソカはトランプタワーを作っていた。
何人かの受験者が部屋にはいたけれど、俺はもう何もかもが辛くなっており、どうにでもなれとそのまま部屋に入った。
「…ヒソ、カ…」
ずるずると歩く俺に驚き、ヒソカがトランプタワーを崩してすぐに俺の身体を抱きかかえて支えてくれた。
「寒いよ…ヒソカ…」
「…どうしたんだい、こんなに濡れて…?♦」
「寒い…」
ヒソカはトランプを集めるのもそこそこに、俺をお姫様抱っこして試験官の部屋へ向かった。
コンコンッ
「はーい、誰よ」
メンチさんが顔を出す。
「僕⭐お風呂、貸してもらえないかなぁ♦僕たち、まだ個室ないでしょ?♠」
「駄目よ、1人だけに貸すわけにはいかないの」
「どうしても、今すぐラファの身体を温めなくちゃいけないんだ♥」
メンチさんは、俺に目を移す。
俺はただ寒さに震えていた。
「いいんじゃない?可哀想だしさぁ、ねぇ、メンチ?」
後ろからブハラが声を掛ける。
「仕方ないわねえ…。特別よ?」
「ありがと⭐」
ヒソカは礼を言うと、俺を連れて脱衣所へ入った。
「ラファ、脱がせるよ…⭐」
「ん…」
精神的にも肉体的にも負担が大きく、動きたくない俺を床に座らせ、水を吸って重くなった俺の服をヒソカが脱がせて行く。
俺はそれをただただ見ていた。
ヒソカも服を脱ぎ、俺を抱きかかえると、そのままお風呂に浸かった。
2人で入っても余裕があるほどお風呂は大きい。
「ラファ、少しは温まるだろう…?♦」
ぎゅうと抱きしめられながら、お風呂に浸かる。
…あったかい…
「ありがとう、ヒソカ…」
「ううん、いいの⭐そんな事より、何があったんだい?♦」
ヒソカなら…と、俺は口を開く。
「…そう♦」
ぶわっとヒソカの身体から殺気が立ち上る。
普段の、数倍…その分、本気という事だろう。
「殺していいかなぁ…その人たち♣」
「…合格したくて必死なんだよ…」
それでも、あんな風に追いかけ回されて、すごく辛かった。
辛くて、寂しくて…胸が、痛かった…
「…ラファ、そんなに泣かないで♦」
「え…?泣いて、なんか…」
あれ、おかしいな、ヒソカの顔がちゃんと見えないや…
どうして…どうして…?
優しく抱き寄せられて、ヒソカの肩口に顔を押し付けさせられる。
「…っヒソカ…」
「大丈夫、僕は君のプレートを狙ったりしないよ♦」
優しく、優しく撫でられた。
その優しさがひどく心地よくて…俺は、柄にもなく…泣いてしまった。
優しさなんて感じたのは、いつぶりだっただろう…。
のぼせない程度にお風呂であったまり、ヒソカはまた丁寧に俺の身体を拭いた。
「ラファ、やりたくないだろうけど…この服は今はずぶ濡れで着られないから、何か服を具現化させてくれるかい?⭐」
ヒソカに言われて、服とブーツを作り出す。
ヒソカはそれを俺に着せ、最後にマントを羽織らせた。
さすが無敵のマント、濡れてない…
ヒソカは、俺のプレートをマントから外し、中の服に付けた。
「この方が、取られにくいだろう?♦」
こく、と頷く。
ヒソカは、自らも着替えをし、頭を軽く拭いた。
それから俺の髪を丁寧に拭いて梳くと、ドライヤーで乾かしてから器用に三つ編みにし、いつも通り右側の髪を上げて留めてくれた。
ヒソカも自分の髪を乾かす。
その顔に、そっと手を触れる。
「何だい?♦」
「俺、ヒソカ、このままの顔と髪型が好き…」
そう言うと、分かったよ、とメイクをしないでくれた。
ヒソカは再び俺をお姫様抱っこする。
「ちょっ…もう1人で歩けるよ‼」
「だーめ…大丈夫、僕といれば襲われたりなんて絶対しないから⭐」
そう言って、団欒室のようなところへお姫様抱っこのまま連れていかれた。
そこではトンパが大いびきをかいていて、クラピカとレオリオがうるさそうに耳を塞いでいた。
「ここは寝られそうにないね…⭐」
結局俺とヒソカが寝床に選んだのは、大きくも小さくもないただの部屋。
ヒソカは地べたに座り、その足の上に俺を乗せた。
「寝ていいよ♦疲れたでしょ?♥」
「ヒソカも疲れたでしょ…?」
「僕は大丈夫♦さぁ、ゆっくり寝ていいよ⭐僕がみててあげるから♥」
ヒソカの言葉に甘え、抱きついたまま目を閉じた。
ヒソカside
眠ってしまったラファの顔を見つめる。
本当に可愛いなぁ…⭐
これでさらに強いんだから、文句無しである。
と、ふと部屋の入り口付近からボソボソと話し声がした。
アレ、隠してるつもりなのかなぁ…僕には筒抜けだよ♦
『抱きしめてるのが誰か知らねえが、寝てるぜ…チャンスだ!』
誰か知らないって…そっか、僕今メイクしてないんだっけ。
気配から察するに、相手は7人。
42人中の7人なんだから、少なくはない。
寄ってたかって子供に大勢で…。
必死でも弱者のすることだよねぇ…♦
『今だ!』
僕がため息をついた瞬間、男たちが動きを見せる。
その足元ギリギリに、トランプを7枚、それぞれ一枚ずつ撃ち込んだ。
床に刺さって静止するトランプに、男たちの足が止まり…冷や汗を流しながら僕を見る。
「君たち…何してるんだい?⭐」
脅すように目を細めて殺気を向けた。
もちろんラファは起こさないように気をつけて。
「ヒ、ソカ…!?」
「ラファに指一本でも触れたら僕が許さないよ…♦それがプレートでも同じだ、今はプレートも大切なラファの一部…⭐ラファを悲しませたり、邪な気持ちで触れる奴は、僕が…」
男の顔のすぐ横にトランプを投げる。
「殺しちゃうかも⭐」
ひぃっと喉の奥で悲鳴を上げて、1人が逃げ出したのを合図に全員走り出した。
「クックック…⭐弱いくせに一丁前なんだから…♦」
そっと眠るラファを撫で、優しく抱きしめた。
朝。
俺はヒソカの上で目を覚ました。
目の前にはメイクされてない綺麗な顔。
「おはよ♦」
「ん…おはよう、ヒソカ…」
おそらく一睡も出来なかったであろうヒソカには疲れは微塵も見えない。
目をこすっていると、ヒソカに頭を撫でられた。
「…もう行く時間なんだけど」
「…!?」
突然隣で響いた声に声にならない悲鳴を上げる。
横には、ギタラクル。
でも、カタカタという音じゃなくて、今普通にしゃべった…
良いのかな…
「時間…?」
「うん、3次試験開始までもう時間がないよ」
「そっか…。ヒソカ、ありがとう。行く…?」
「うん、もちろん⭐」
ヒソカとギタラクルと一緒に外へ出る。
降りるとそこは、石の塔のてっぺんだった。
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