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最終試験×後半×電話
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「始めようか❤」
そう言ってヒソカは楽しそうに口元を歪めた。
「…これ、返す」
そう言って先ほど借りたトランプを差し出すと、ヒソカはにぃ…と笑った。
「良いの?♦自分から武器放棄しちゃって、負けちゃうかもよ⭐」
「…ヒソカ、それ本気で言ってる?」
とうとう自分の育てた子供の力量すら分からなくなったのかと、ヒソカの顔を覗き込んだ。
この間叩きのめされ、たったいま殺気のみで立てなくなったというのに。
「奇術師に不可能はないの⭐でも、唯一の不可能があるとしたら…」
俺から受け取ったトランプを懐へしまい、ヒソカは自分のトランプを取り出した。
「君と両思いになること、かなぁ♦」
ゴンやキルアがヒソカを凝視している。
「…またそれ、辞めてよヒソカ。悪い冗談だよ」
「冗談じゃないよぉ❤」
ヒソカが言って楽しそうに笑った瞬間、その手から俺にトランプが投げられた。
真っ直ぐすごいスピードで飛んで来たトランプを叩き落とし、顔をあげるとヒソカは既にそこにいない。
本気で楽しむ、ということかな。
天井へ飛び上がっていたヒソカが俺を狙って真っ直ぐ落ちてくるので其れをバク宙で避ける。
その際に足を思い切り蹴り上げると、ヒソカが蹴り飛ばされ壁に後頭部からのめり込んだ。
パキッ、ピシッと壁にヒビが入り、ゴキュ、と頭が地面に落ちる痛そうな音が響いた。
ヒソカが殺られるなんて予想していなかっただろうゴンたちの開いた口が塞がらないのが見える。
「…ヒソカ、参ったして」
「んー…やーだ❤」
勢いよく起き上がり、ヒソカはもう一度中腰に構えた。
まだまだやる気のようだ…
足元にカードとは思えない音を立てながら突き刺さるトランプを後ろに飛んでよけ、其れと同時にヒソカも向こう側まで下がる。
此方の壁にバンジーガムをつけているのを見て、その反動で飛んでこようとしているのはすぐに検討がついた。
…どうしようかな。
正直、避け続けるだけじゃヒソカは諦めない。
…いっそ、真っ向勝負?
ヒソカが飛んでくるであろう所に立ち、ヒソカを待つ。
ぐぉっと音がするほどの速さで突っ込んでくるヒソカを、正面から思い切り殴り飛ばした。
顔の骨が折れる音が響いて、鼻血が噴き上がる。
「…ヒソカ、そろそろ参ったしない?」
「…けほっ、まだ…♠」
「…しつこい男は嫌われるよ」
別にヒソカと戦闘するのは嫌じゃない、他の人より骨があって死なないと分かっているのだから、むしろ楽しいくらいだ。
…まぁ、それでも本気は出せないのだけれど。
けれど、こうやって他の人の晒し者として戦うのが嫌なのだ。
必要最低限の戦いだけして生きていきたいのに、こんなの…。
「…ごめんねヒソカ、ちょっと沈んで」
「え?♦…ッ♠」
この状態で出せるだけの殺気をヒソカにのみ集中させて放出する。
刺すように、わざとコントロールして。
「ひどい、よ…♣ラファ…ッ♦」
ぜぇっはぁっと必死で息を尽きながら地面に手を付き心臓を抑えるヒソカを上から眺めた。
「ヒソカ、参ったって言って」
「…いや、だっ、よ…♦」
その体を、壁にぶつかるくらいの力で蹴り、懐から出した短刀を喉元に突きつけた。
「ヒソカ」
つー…と細い血の筋がヒソカの白い首を伝う。
わずかに触れた短刀の刃に、ヒソカの血が付いた。
「…っ…仕方、ないっなぁ…♠参った…⭐」
ヒソカの言葉に短刀を引き、ネックレスのかけた部分を復元する。
スッと消えた殺気に、どさりとヒソカの身体が地に落ちた。
「勝者、0番ラファエル!」
「ヒソカ、平気?」
目が虚ろになってしまっているその体を仰向けにさせて覗き込んで見るが、反応は薄そうだ。
「…終わったら治してあげるからね」
部屋の隅に寝かせて、ギタラクルに持たせていた俺のマントを掛けた。
マントに少し念を送り込んで、ヒソカを守ってくれる防御にする。
其処から離れようとすると、弱い力で足を引かれた。
バンジーガムが足首にくっついている。
「…ヒソカ?」
「ラファ…僕、頑張ったんだけどなぁ…♥」
掠れかかった僅かな声、本当にボロボロにしてしまったことを少し悔いた。
「…何して欲しいの?」
そっとしゃがみ込むと、ヒソカはちょっとだけ微笑んだ。
「…いつもの、だね?」
ちゅっ…
軽くリップ音を立ててヒソカの唇に触れさせると、へにゃっと笑って念を外してくれた。
「…すぐに戻ってくるから。待っててくれる?」
こく、と小さく頷くのを見て、また皆の中心へ歩き出た。
「第8試合、53番ポックル、前へ‼」
審査員の声でポックルと呼ばれた冴えない顔の男の子が出てきた。
…こんな子いたっけ…
「はじめ!」
「参った。俺じゃあ、正直勝てないよ」
そう言うと、ポックルはぺこと小さくお辞儀をして壁際へ帰って行った。
「勝者、0番ラファエル!」
あまりの早さに一瞬放心していたらしい審査員が慌てて声をあげた。
「続いて、第9試合、301番ギタラクル前へ!」
カタカタカタカタっと相変わらず針の音を響かせているギタラクルが前へ出てくる。
「始め!」
すると、ギタラクルがカタカタ言いながら頭を横に振った。
「?降参するの?」
そう聞くと、こくんと頷いてギタラクルは審査員を見つめた。
審査員はギタラクルの風貌に少し怖がっていたようだが、すぐに俺の勝利を口にした。
ギタラクルは静かに壁際へ。
「…ヒソカ…お待たせ」
ヒソカの脇に膝をつき、マントを取って着る。
そのままヒソカの身体をお姫様抱っこすると、ネテロの方を向いた。
「…ヒソカを治してくる」
「ちゃんと帰って来れるかのう?」
「…時間までには返す。ヒソカの時になっても来なければ呼んで」
「俺も一緒にいこうか?一応医者の卵なんだ」
レオリオがスーツケースを持ってそう言ってくれたが、心だけもらっておく。
「ううん、慣れてるんだ…こういうの」
ありがとうと呟き、部屋を出た。
すぐ脇の医療室だと思われる場所にヒソカを寝かせ、神秘なる力を発動させる。
手をヒソカのお腹に押し当てると、淡いオレンジ色の光に包まれ、たった10秒ほどでヒソカは完治した。
「いつ見ても君の念は綺麗だねぇ…♦」
よいしょ、と起き上がったヒソカを撫でる。
「…ごめん、やりすぎた」
「いいんだよぉ♥いつか本気のラファと戦いたいくらいなんだから♠」
ふふと笑ってヒソカは満足そうな顔をした。
「僕はまだあるし、戻るよ⭐ラファはどうする?♣」
「そうだなぁ、俺は…」
ブブブブブッと機械的な震えを感じて携帯を取り出す。
「…ごめん、外で電話してくる。終わったら行くから」
「わかった♥」
そう返事をしたヒソカは、スキップでもしそうな軽い足取りで会場へ戻って行った。
俺は、手の中の鳴り続ける携帯に目を落とす。
「…出なきゃ、だめかなぁ…」
外へ出て、通話ボタンを押した。
「…はい」
『ずいぶんと出るまでに掛かったな』
「…今ハンター試験中なんですよ、勘弁してください…シルバさん」
『ハンター試験?そうか、お前もイルやキルと同じ試験を受けているのだな』
電話の向こうから、威厳のある父親…シルバ・ゾルディック…の声がする。
「…はい。被ってしまいました。2人とも残っていますよ」
『そうか、それでは丁度いい』
シルバの機嫌の良い笑い声が聞こえる。
「何がですか?」
『試験が終わったらそのままイルと一緒に帰って来い、ラファ』
「…いいえ、帰りません…帰れません、シルバさん」
『…もう、お前が出て行ってから4年が経つな』
「…はい」
依頼では何度か顔を合わせたが、それ以外では会って居ない。
『久々に、キキョウも会いたいと言っている。イルと帰って来い』
「…いえ」
『…依頼だ。うちに来い』
「…依頼?」
『言い値で出そう。依頼なら来るな?』
「…はい」
『では、待っている。ヒソカを連れてきても構わない』
「…分かりました。シルバさん」
そう答えると、満足そうにシルバは笑って携帯を切った。
…帰る…
正直もう考えていなかった事態に、空を見上げたけれど、どこまでも青い空が広がっているだけだった。
会場を抜け出たついでに依頼を確認する。
ハンター試験で抜けただけなのに、通知が1000件を超えている。
まだ最終試験終了までは時間があるはずだし、俺は幸いもうやることは終わっている。
其れを整理する作業に取り掛かった。
「ふう…」
結局あまりめぼしい依頼もなく、全消去してしまった。
終わったので携帯を閉じ、会場へ戻ることにした。
中へ入ると、中は殺伐としていた。
「…?ヒソカ、何があったの?」
聞くと、ヒソカが懇切丁寧に説明してくれた。
ゴンが怪我したことから、イルミに逆らえなかったキルアがボドロを殺したところまで。
「…ふうん」
「聞いた割りには興味なさそうだねぇ♠」
「イル兄もキルも死ななかったんだろ?良かったじゃん。キルは?」
「…帰ったよ⭐ねぇ、ラファ、呼び方戻ってる♦」
「…」
ヒソカの指摘に少し黙る。
「明日はライセンスカードの説明会があるんだってサ⭐」
「…そう。ねぇ、ヒソカ」
「なぁに?♥」
「…シルバさんから連絡あった」
その一言だけで、ヒソカは何と無く察したようだったけれど、俺は言葉を続けた。
「…一旦家に帰って来いって」
「そう…♠どうするの?⭐ラファ♦」
「…行く、予定。ヒソカは?」
「ぅーん、僕もすぐに天空闘技場に戻らなきゃいけない用事もないし、一緒に行っちゃおうかなぁ…⭐」
「…ありがとう、俺のわがままに付き合ってくれて」
「で?♠どうやって来いって言われたの?♣」
「いるに…イルと来いって」
「イルミと…?♦」
じゃぁ、飛行船かぁ…と呟いてヒソカは顎に人差し指をおいた。
「…ねぇ、ヒソカ」
「なぁに?♦」
「…ヒソカはどうして俺といるの?」
ヒソカはびっくりしたように俺を見つめて、くつくつと笑った。
「好きだからだよぉ♥」
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