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イルミ×記憶×真実?
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この回は全てイルミ視点となっております。
一人称は俺です。
若イルちゃんの一人称が分からないのでそのままです。
設定は、アニメの9年前から4年前までです。
今更ですが、身内?内の暴力、グロ表現があります。
苦手な方はどうか控えてください。
当方責任は負いかねますのでご了承ください。
イルミside
「今日から一緒に暮らす予定の子だ。お前たち、仲良くしてやれ」
父さんからそう言われたのは、俺が13になって間も無くのことだった。
やっと本格的な仕事が一人前に任されるようになったのに、また子守…?
隣で目を輝かせる、うちの次期当主を見つめる。
「この子だ。ラファエルくんというらしい」
父さんと同じ銀髪。
目は、不思議な色をしていた。
「一緒に暮らすって、俺たちと何の関係もないじゃん」
うちにはすでに手のかかるキルアがいる、と少し不満に思いながらそう言うと、父さんは少し困ったように頭を掻いた。
「実は、ヒソカの頼みでな」
「…ヒソカ?また何考えてるの?」
「拾い子だそうだ。すでに念は使えるし、イル、お前とも渡り合える程度には強いはずだ」
「ねんってなにー?」
幼いキルアが無邪気な質問をするが、それと3つしか違わないはずのラファエルはただ無表情でキルアを見つめていた。
「今まで、あまり良い目にはあって来なかったため、ヒソカ以外には懐いていないらしい。でも、イル…お前なら任せても大丈夫だな」
正直不満ではあったけれど、父さんの言葉に逆らうようなことは出来ない。
「…分かった」
そう返事するしかなかった。
ラファエルは、静かな子だった。
キルアのようにイタズラをすることもなく、騒ぎを起こすでもなく、いつも座ってじっとしていた。
そんなラファエルが笑うのを初めて見たのは、ラファエルが来てから2年目の事だった。
「ラファ、新しいRPGゲーム買ったんだけど、お前もやるか?」
ミルキが部屋から出てくるなんて珍しいこともあるものだ、と、部屋で次の仕事の資料を揃えながらふと外を見ると、外でじっと座り、ミケにもたれかかっていたラファエルが体を起こした。
「うん!今度は、何のゲーム?」
「今度は、この間やったFFの続きだぞー」
「やった!」
わーい、なんてキルアがイタズラを成功させたときみたいな無邪気な声をあげて、ラファエルはミルキに抱きついた。
ミルキも満更でもなさそうにラファエルを肩車すると、そのまま喋りながら部屋へと帰っていった。
…それを見て、自分はそうはならないと、そう思った。
家族以外のことを考え、情が移るなんてことになれば、暗殺者として致命的だ。
自分の弱点を自分で増やしに行ってどうする。
関わりたい、でも、関わってはいけないと、自分の中で自分を自制し始めている事に気がつかなかった。
それほどに、うちの家訓は、俺の体に染みついているものだった。
その翌年。
ラファエルは、人が変わったように遊ぶようになっていた。
外でヒソカと鬼ごっこをし、キルアとはしゃぎ回り、ミルキとゲームをし、アルカやカルトと本を読んだりおままごとなどのごっこ遊びをしたりした。
たまに、ではなく、いつも笑顔が絶えなくなっていた。
…俺はラファエルが嫌いだった。
自分の家族が外部の人間に侵食されていくようで。
まるで、自分だけが取り残されていくような不安を抱え、それでも俺は、仲良くするという選択肢から逃げていた。
…逃げていた、はずだった。
「あ、イル兄!今からヒソカとキルと一緒に鬼ごっこするの!イル兄も一緒にやろうよ!」
仕事の資料確認を終え、少し外の空気でも、と、外へ出た瞬間だった。
わっと走ってきたラファエルに抱きしめられ、きらきら輝く目で見つめられ、懇願された。
「こら、ラファ❤️イルミは忙しいんだから、無理に誘っちゃダメだよぅ♠️」
「でも、俺、イル兄とも遊びたい!ねぇ、イル兄、お願い!いいでしょ?」
忙しいからヤダ、そう言えば良かっただけなのに。
「…仕方ないな。少しだけだよ」
ラファエルのきらきらした目に、俺は逆らえなかったんだ。
「ラファ、誕生日プレゼント何がいい?」
ラファの10歳の誕生日が明日に迫った夜、そう聞いた。
父さんから、遠慮していってくれないから聞いてくれと言われていたこともあるが、本当の弟と兄のように仲良くなった今では、むしろ買ってあげたいとすら思った。
「うーん、俺、いいよ」
「いいんだよラファ、俺があげたいだけだから」
「…あのね」
少し言いにくそうにもじもじした後、ラファは顔を赤くして、口元に手を当てた。
内緒話がしたい、というポーズだ。
そっとその小さな口に耳を寄せると、
「…おれ、かぞく…欲しいの」
予想もしていなかった言葉が吐き出された。
家族?どうして?
そもそもラファに家族は?
本来いるはずだ、ヒソカが拾ったなら、ヒソカが家族のはずだ。
そんなことが頭を駆け巡って、けれど、少し不安そうに俺の顔を見つめるラファを見たら、そんなことどうでもよくなってしまった。
…ラファの10歳の誕生日は、家族。
俺たちゾルディック家の一員という称号だった。
紙の上での拘束力があるわけでも、養子にしたわけでもないのに、その言葉にラファはとびっきりの笑顔を見せてくれた。
…そして、4年前の秋。
すべての転機が訪れる。
いつも通りの仕事を終えて、家に帰ったらラファと一緒に本を読む約束を果たそうと、少し軽い足取りで帰宅した。
けれど、家に着く前に可笑しな事に気付いた。
…血の匂いがする。
ミケもいない。
そこら中から、血の匂いが漂ってくる。
…襲撃?
ゾルディック家に?
父さんや爺ちゃんがそんなに簡単にやられたのか?
戦う音は聞こえない。
兎に角現状を把握したいと、家へと走った。
初めに目に入ってきたのは、右腕と左足首を捥がれた父さん。
その隣では、爺ちゃんが腹から血を流して倒れていた。
でも、幸い二人ともまだ息はあるようだ。
キルは?ヒソカは?母さんは?
足音を立てないよう、絶をしながら暗歩で先へ進む。
途中、脇腹を抉られ足を切られた母さん、体を真一文字に切られたキル、頭から血を流して横たわるカルトはいたが、ラファとヒソカが見当たらない。
まだ無事だろうか?
そう思い、更に奥へ進み、ぐるりと周りを見回した時、後ろから声が聞こえた。
…なんてよく聞きなれた声。
「…おかえり、いるにい」
「ラファ、無事だっ…っ!?」
背中に鋭い痛み、慌てて硬をしようとするも間に合わず、右腕を捥がれた。
痛みに少し顔をしかめ、何が起こっているか把握しようと努めるが、出血から頭が朦朧とする。
兎に角、このラファは敵だ。
それだけを認識し、蹴りを繰り出すが、それもあっさりと受け止められてしまった。
ばきゃ、と、不穏な音が俺の足から響いた。
ラファは、俺の脛を半分で折り取り、下半分を力任せに引っ張った。
ぶちぶちと皮が破れ、血管が切れて血が溢れ出し、神経が表へと露わになる。
立っていることができなくなり、尻餅を着くと、顔面に鋭い蹴りが入れられ、ラファの膝が俺の鼻にめり込む。
念で強化された一撃に、あっさりと屈した俺は、地面に倒れこんだ。
霞んでいく意識をなんとかつなぎとめ、目を開く。
ラファが、変形した手で、俺の首を狙っている。
ラファは、笑顔だった。
この上ないほど楽しそうに微笑んで、まるでケーキを前にした子供のよう。
小さな鼻歌など歌いながら、その手が俺の首へと突き込まれる。
その瞬間、白いものが視界を横切った。
それが仕事を終えて帰宅したヒソカだとわかるまでに暫くかかり、その背中からラファの腕が生えていることを認識するのに更に数秒かかった。
「…ら、ふぁ…ぼくなら…ころしてもいいよぉ…♦️」
ヒソカはラファの手を掴み、さらに自分の中へと突き込む。
ラファは楽しそうに微笑むと、
「まだいたんだぁ…」
ヒソカから腕を抜き、更にもう一度ヒソカの腹に腕を貫通させた。
ヒソカはまるでそれを待っていたかのように、ラファの首にネックレスをつけた。
いつもラファが付けているのと同じもの。
「らふぁ…いいこ、だ…ね♠️」
どちゃっと汚らしい音とともにヒソカが俺の隣に倒れた。
ヒソカも、息はあるが意識は朦朧としているらしい。
「あ…ぁ…おれ…俺何を…」
ラファは頭を抱え、蹲った。
床の血だまりに、透明な涙が注ぎ込まれていくのを見つめながら、俺もまた意識を手放した。
俺たち、世界にも有名な暗殺一家は、たった11歳の子供にも歯が立たなかった。
夢を見た。
真っ白で、ほんのり暖かい、夢。
これが天国かと思うほどに。
最後に、ラファの声が聞こえた気がする。
…僕のことを全て忘れて、と。
起きた時、何故か俺は体にかすり傷一つ無く、そしてラファのことも、何もかもを忘れていた。
ぽっかり5年分の記憶がないまま、俺は今日まで…生きてきたんだ。
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