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慈郎×ブン太(庭球)
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「すき」
「ぅえ?」
「丸井くん、すき」
俺がぼーっとしてる時、寝てる時、雑誌を捲ってる時、こいつはちょいちょい不意討ちでそんな事を言う。
理由は単純、構われたいだけ。
「すき。すんげー好き」
「…知ってるし」
「世界で一番すき」
すき、すき、すきって。
今まで何度言われたかなんて、最早数えきれない。死ぬほどだ。
好かれて悪い気はしないし、気持ちを言葉にしてくれるのはもちろん嬉しい。嬉しいんだけども、だ。
そんなに連呼されると有難味に掛けて来るし、なによりどうにもこう…気恥ずかしくて困る。
「あーもぅ、わぁーかったって!」
いつもなら堪え切れなくなって、そそくさと逃げ出してしまうところだ。
でも今日は逃げない。
「…俺もだし」
絶対退かない。
なんでって…まぁ、なんと言うか。
いつも言われるばっかりじゃ、ダメだろうと常々思ってはいるわけで。
「俺も、好…っんん」
好きだよ、って続くハズだった言葉は、まるで狙いすましていたかのようなキスに邪魔されて、最後まで言えずに終わった。
「…丸井くん」
ちゅっと音を立てて唇が離れてく。
薄目を開けて盗み見たその表情は、どうしようもないくらいに甘い色を帯びた男のそれで。
「ぶんちゃん」
「ん、だよ」
「あいしてる」
熱っぽく掠れた声が耳を擽られてしまえば、もう俺には為す術なんて何もない。
「…人がせっかく、っ、甘やかしてやろうと思った、ってのに」
「うん。だからいっぱい甘えちゃうC」
「ん、なんだよもう…」
降り止まないキスは、額に、目蓋に、耳朶を噛んで、鼻に、それから再び唇に。
嵌められた、と気付く頃には既に手遅れなのだ、いつも。
…ああもう駄目だ、結局いつだってこうなる。全部飲み込まれる。
仏心なんか出さなくたって、コイツはいつも好きな時に好きなように甘えて、噛み付いて、したいようにするんだった。
「…好き、だ」
せめてもの抵抗とばかりにさっきの続きを吐き捨てて、あとはもう。
「好きだ、慈郎」
「知ってる」
痛いくらいに掻き抱いてくるこの腕の中で、じわじわと侵されてしまえばいい。
だから俺は、
「っは、んん、ん…」
その髪を掴む力で無理矢理引き寄せて、離れそうになった唇を思う存分貪ってやるのだった。
罠
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