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伸ばした手
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ゆらゆらと、海の中で僕の苦手な金髪の髪の毛が揺れる。伸ばして掴んだアイツの手は、いつもみたいに温かくなくて、冷たい。その冷たい手を思いっきり引っ張って、自分の体をバネにするかのように上へと投げた。
...だから、海に何て来たくなかったんだ。せめて、深い方に来るなら浮き輪を持っていけばいいのに、子供の頃も少し成長した今も、そういう馬鹿な所は変わらない。そのせいで、いつだって僕が巻き添えを食らうんだ。せっかく、一度助かった命なのに...。
僕等がまだ小さくて、仲良しだった頃。泣き虫で怖がりの幼馴染は、何故か何処かチャレンジ精神が溢れていて、僕はよくそれに付き合わされていた。きっと、虐められっ子の幼馴染は僕以外に遊んでくれる友達がいなかったんだからしょうがないと当時の僕はそう思っていた。そして、毎度ながら家の家族と、その幼馴染の家族とで海に遊びに行く事になった。
そこで、僕が海を嫌いになった原因が起こった。
夕立が降り始め少し波が荒くなった頃、僕はその幼馴染に連れてられて海岸とは少し離れた所に居た。その場所は、大人にとってはそれほど深くない場所だったかもしれない。でも、幼い僕達にとっては、十分に深い所だった。浮き輪も着けずに泳いでいた僕等。それを覆い被さるようにやってきた波。海中に沈む幼馴染。自分を犠牲にして、自分が沈み幼馴染が浮き上がるように引っ張った僕。暗闇のような深い海の中、ぼやける視界、誰か大人が助けに来るのを最後かのように僕は意識を失った。
次に目が覚めたのは、あの暗闇のような海の中ではなく、真っ白で消毒液のような匂いがする部屋。耳を劈くような幼馴染の泣き声。それと両親たちの安堵した声と、その幼馴染の感謝の言葉とお詫びの言葉。あんな事にまたなってしまったら、今度こそアイツは心を閉ざしてしまいそうだから、僕は何としてでも生きなければならない。
「ゲホッ、ゴホッ。」
「ぁ...うッ、俺...。」
「あー、最悪。海水飲んだ。しょっぱ。」
「ごめッ...。」
「カキ氷、溶けただろうなぁ...。助けてやったんだから、ブルーハワイのやつ奢って。」
浮き輪をはめて、海岸の方へと押していく。僕に押されて、泣きながら僕の手を振るえている手で掴む或兎。海水を飲んでひりひりする喉。安堵した僕の心の中。
海岸に着くと、立てない或兎を抱き抱えて、浮き輪を持ち主の女の子に返した。
「いやぁ、王子様みたいだねぇ。」
「あぁ、確かにかっこよかった。」
「...弘樹、或兎のお金でカキ氷買ってきて。ブルーハワイとイチゴ。」
「えッ、俺かよ!!...まぁ、俺にも責任はあるから行ってあげるけどー。」
レジャーシートの上に或兎を下すも、震える手で必死に僕の腕を掴んでいるから、僕は動きが取れない。俯いて、震える或兎の頭をポンポンと撫でる。...何か、ギャラリーが多いな。
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