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2話「再会した」
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「サイッテーよこの馬鹿!!!」
パシンッ!
といい音が響いて。
「あー、ごめんな」
「もう別れる!!」
「はい・・じゃあ、お疲れさまでしたー」
高いハイヒールに足を突っ込んだたった今別れた元彼女は、ぶーたれた靴音をたからかに響かせて部屋から出ると、振り向きもせずに乱暴に玄関のドアを閉めた。
「はー・・・」
重たいため息をついてその場にしゃがみ込む。
なんてこった。
これで9人目。
別にセックス目的とかではなく、誰かと違う恋ができたらと足掻いているだけなのだが、どうにも上手くいかない。
「・・・」
千田が出て行ってから半年。
何の音沙汰もなく、相変わらず行方も解らないまま。
俺はアパートも部屋も帰る事無く、ただ空っぽになった隣の部屋のドアをたまに見つつ、ここで生活していた。
そして、もういい加減にアイツにこだわるのはやめようとしている。
が、やっぱりうまくいかない。
「ったくもー、別にセックスしなきゃいけねえっつうルールはねえだろうがよー、付き合ったからって」
立上がって歯を磨こうと洗面所に入る。
だが実際、セックス所ではないのだ。
いくら相手を可愛いな、綺麗だな、と想った所でキスもできなければ手を繋ぐ事すら出来ない。
そんな現状が続いている。
「・・・」
シャコシャコシャコ、と口の中の歯ブラシを動かす。
鏡に映る自分は半年前とは似ても似つかない。
伸びっぱなしの髪は派手な金色で、耳にはいくつかのピアス。生やし始めたあごひげ。
なんてこった。
アイツがいなくなった瞬間にこの様だ。
完全に、救馬のようなチャラ男路線に入っている。
(あーあ。なんだよこりゃ、痛くねーやとか想ったら、想いっきり痕んなってる)
先ほど叩かれた左頬を見る。
鏡に映ったそこには、くっきりと綺麗に元彼女さんの手形が残されていた。
「・・はあ」
シャコシャコシャコ。
まったく、良い事が無い。
千田がいなくなってからの半年。沢野には会う度に怒られる程、俺は荒れに荒れていた。
父さんの言いつけを守って酒とタバコはやっていないにしろ、夜中に女の子を連れ回して遊んで、家に持って帰って一緒のベッドで寝て。でもそれ以上の事はしない。いくら迫られてもキスもしなけりゃ体にもあまり触らない。そうしてその内、別れ話。
そんな生活を繰り返していた。
(あーあ・・柔らかくて可愛くて、いい匂いがして背も小さくて、昔の俺の理想の子とばっかり遊んでる筈なのに、)
なんというか、勃たない。
(はあ・・)
一切魅力を感じない。性的欲求がわかない。AV見ても何しても勃たなくなったこの足の間のイチモツを想う限り、
(俺・・・不能になったのかも)
と考えが至ってとても怖い。
だがそれくらいに、俺の目は誰にも向かないようになってしまった。
(あーあ・・もう、無理なのかなぁ)
帰って来ては、くれないのだろうか。
シャコシャコシャコ
シャコシャコシャコ
シャコシャコ
ピンポーン
「・・?」
え、まさか、さっきの女帰って来た・・?
忘れ物とかした・・?
鳴り響いたインターホン。
その音を聞くや否や、先ほどの女の顔が脳裏をかすっていって不快な気分になった。
顔にこんな痕つけられたっていうのに、また部屋に入れなきゃならないのか。
ピンポーン
「・・はあ」
出るっきゃねえか。
そう思って、一度唾を流しに出して水をだしてから、また歯ブラシを咥えて玄関に向かう。
先ほど閉めた鍵を開け、取っ手を掴んで思い切り前へ押した。
ガチャ
「はーい、どちらさ・・?」
丸い。
丸い頭だ。
真っ赤な、丸い、頭だ。
それが目に飛び込んで来た。
「あー、おはようございます〜、あの、この度隣に引っ越してきました西浦と申しますー。お隣さんにご挨拶をと想いまして」
10センチ以上低い視線。
赤い髪と丸い髪型。
張り付けた様な笑顔と、口元にあるホクロ。
「・・・」
「これ、つまらないものですがどうぞ〜」
想いっきり引いている態度。
さっきの騒ぎが、きっと全部筒抜けになっていたんだろう。
関わり合いになりたくないと言うあからさまな動きと対応に、見下ろしながら。それでも目の前にいる人物に、目を丸くしていた。
「あのー・・?」
一向にその引っ越しのご挨拶の品を受け取ろうとしない俺を不審に思ってか、引き笑いしながらぐるんと見上げて来た顔は、やっぱり想った通りの人間だった。
「・・恋?」
「は?」
西浦という名字から言ってもそうだろう。
西浦。
西浦、恋だ。
「・・・えっと?」
「いや、俺・・大輝、だけど」
「え・・?」
まん丸くなった目が、俺を見上げて。
まじまじと顔を見た。
「大輝って・・宮崎、大輝?」
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