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寂然
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新井を今度話すから、の言葉で宥め早く帰宅したい一心で歩き続け、
普段より少し早く家についた。
(五時間長かった・・明日も休もうかな・・)
彼が来るまでわりかし行っていた授業だから少しくらい休んだっていいだろう。
そう思いながら自分の部屋の番号を確認してカバンの中の鍵を探しているうちに少しずつ不安になっていく。
(大丈夫かな・・部屋の中で倒れてたり・・・)
焦って焦って焦りまくった上に震える手で鍵を開け、急いで中に入る。
しんとした室内にまた不安が増し、今朝の柊くんの言葉を思い出す。
『心配性』
(だって柊くんあんなに不安定で・・・)
部屋を覗くと柊くんが居らず、益々パニクってきた。
柊くんの部屋、風呂、
(どこ・・・!?)
まさか連れ去られたんじゃ・・!?なんて思っていたその時、
俺の部屋の寝室のドアを開けるといつも俺が使っている薄い掛け布団にくるまって寝ている柊くんを発見した。
とりあえずほっとした、
が、
(何で俺の布団に・・・?)
窓から差し込んでいる光が柊くんの白い首や腕を照らしている。
安らかな寝顔で眠る柊くんに近付いて頬をさらりと撫でた。
長いまつげが縁取る瞼がぴったりと閉じている。
(まさか、)
(寂しかった・・・・とか?)
いやいやいやいや・・・・・
でも他に何の理由が・・
と、考えているうちに、
細かい睫毛がぴくりと動いたと思ったらそれが静かに開いた。
それと同時にはっ、という不規則な呼吸音が耳に届くとどきっとした。
普通に起きたのではないな、なんて見ても分かったしやっぱり不規則な息がそれを際立たせた。
俺が柊くん、と言いかけた瞬間に彼は狭いベッドの上で少し後ずさり、両手で自分のくちを塞ぎ、
必死なその形相に「とにかく落ち着かせないと」と思った。
「柊くん、俺。圭太だよ、大丈夫だからおいで」
ふ、ふ、と苦しげな息を繰り返しながらそのまま後ずさった末にベッドから落ち、
俺がそれに驚いて思わず立ち上がると柊くんは涙を溜めた目からぼろぼろとそれを零して俺を見た。
「柊くん、・・・」
柊くんは布団を体に絡ませたまま壁に体を寄せていた。
俺は彼にゆっくり近付くとぎゅう、と抱き締めた。
その間もからだの震えが伝わってきたが、それでもずっと抱き締めた。
暫くすると柊くんは俺の肩口で「ごめんなさい」と小さく呟いた。
「・・・なにが?」
「また、迷惑・・・・かけちゃった」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
ふるえる手が俺の背中に回っている。
それだけで充分だった。
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