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ピピピッ
「38.2℃‥って、高っっ!アホかお前、超高熱じゃんっ」
「‥‥うるさい黙れ、‥頭に響く‥」
翌日は、運良く土曜日だった。
両親は共にいなく、留守だったのだが、昼頃また勝手に高藤がやってきたので、寝込んでいる俺を見て事情を悟った高藤は勝手に体温を計ってきた。
「どうやったらこんな数字に‥。飯は?食ったの?」
「‥いい。食欲、ないから‥」
「バーカ。なくても食わねーと、治るもんも治んねーぞ」
「うっさい‥お前に言われるとムカつく‥」
「どーいう意味だよそりゃぁっ!」
それにまたうぅっと頭をベッドに仰向けになりながら手で押さえると、高藤はうっといった顔をして、その場を立つ。
「‥わりぃよ。じゃあ俺キッチン借りて、何か適当に作ってくるから、ちょっと待ってろ」
その言葉に、目を開く俺。
「い、いいよ。何でそんな‥高校生の男子が同級生に料理なんか」
「仕方ないだろ?誰もいないんだし、俺が作るしか」
「え‥でもお前料理‥」
「出来るよ。俺のとこもよく親いないから、妹に俺が食べさせてやったりしてんの」
‥嘘。高藤ってそんなできるやつだったの?‥‥
「お粥くらいでい?」
「え、あ、‥うん」
「了解。じゃ、ちょっと待ってろ」
パタン‥
高藤が部屋を出て、階段を降りる音が聞こえ、そこで俺はようやく、小さな息を吐いた。
頭が痛かった。
体が、昨日は冷たかったはずなのに、今は燃えるように熱く苦しかった。
ー俺は、いつの間にか起きたら自分のベッドで寝ていた。
グショグショだった服も、何故か着せ変えられていた。
とてもじゃないけれど、親がしたなんて、考えられなかった。
‥そういうことに、手を焼く人たちではないし。
風邪ごときで、慌てるような人じゃないし。
でも、‥記憶がない。
ここまでどうやって帰ってきたのかも、どうやって着替えたのかも、何もかもー。
考えようとすると、頭痛が邪魔をして、思考を遮断される。
通行人の心優しい誰かが、送ってくれたのだろうか‥
いや、いくらなんでもそれは‥
けれど、
でも、じゃあ、一体誰がーー
ー
「ほい、できたぞ。お粥」
「あぁ、サンキュ」
お粥を運んでやってきた高藤に、お礼を言って体を起こす俺。
「平気?食える?」
スプーンを渡し聞いてくる高藤に、うんと頷く俺。
ふーと息を吐いて熱を冷まし一口お粥を口に運ぶと、高藤がじっと俺を伺うように見る。
「なに」
いうと、えっと言う高藤。
「あ、い、いやー、一応その、美味しいとか美味しくないとかいう意見を‥聞きたいなーとか‥」
手を頭に持っていきあせるように言う高藤。
なんだ、そういうね。
‥かわいいとこあんだな。
「んー‥‥まぁまぁかな」
「ーえっ!!」
言うと、途端声を出しショックを受けた表情を見せる高藤。
それに思わず吹き出す俺。
「あはは、お前なに、落ち込みすぎ」
「だ、だってその反応ってさ‥!嘘でも美味しいとかさーっっ」
「‥アホ、冗談だよ。美味い、普通に。美味しいよ」
「ー本当か!?」
‥ぷ、本当何なの、この高藤。
何か弄りたくなる。
ブーブー、ブーブーッ
と、携帯のメールを知らせるバイブレータの音が鳴る。
見ると、雛原だった。
「ー誰?」
高藤が尋ねる。
「んー‥雛原から」
言うと、高藤は少し目を開いたように見えた。
「へー‥野上って、雛原と仲良いんだな。あんまクラスで喋らないのに」
「‥まぁ、あれだ。勉強関連」
言うと、高藤はふーんと言って俺を見た。
‥平静を装い言いながら、内では心臓が少し、いやかなり、どきどきと音をたてていた。
「したら俺、帰った方がいい?」
「え?」
その言葉に、顔をあげる俺。
「だって、ずっと俺いても変だろ。彼女ならまだしもよ」
言ってにっと笑う高藤。
「あ、‥あぁ」
それに頷くしかできない俺。
「じゃあまた学校でな。あっちゃんとお粥全部食えよ」
「えー」
「おいっ!」
「嘘嘘、食うよ。ありがと」
高藤はにこやかに笑って、部屋を出ていった。
雛原のメールからは、お前の家行くからというもので、高藤と俺と雛原の三人がここにいるのは気まずいと何となく感じていた俺は、高藤の行動に少しだけ胸を撫で下ろした。
けれど、高藤が俺のそういう気持ちを何故か始めから悟っていたように感じてしまって、なんだか心が落ち着かない。
高藤って、ああ見えて俺より実はすげぇ大人だったりして‥。
はぁ‥‥。
ーピンポーン
そうして、インターホンの音に、はっとする俺。
慌てて携帯で勝手に入っていいよと、送信する。
すると、ガチャと扉の開く音が聞こえ、すぐ階段を昇る音が聞こえる。
それを寝転びながら少し緊張気味に待っていると、自室の扉が音もなく開く。
「よぉ」
昨日ぶりに見た雛原は、俺を見てそう言った。
「ーなに?風邪?」
雛原は心配する素振りを見せる様子もなく、ドカッと俺の側に腰を下ろし尋ねた。
「あ、うん‥まぁ」
まさか昨日どしゃ降りの中を歩いて帰って熱を出したとは思わない雛原に、目を少し泳がせそう答える俺。
すると、雛原はふーんと言って、ふと側にある先ほど高藤が作っていったお粥に視線を落とす。
「これ、誰が作ったの?」
「ーえ?」
それにドキンと心臓を鳴らす俺。
「誰って‥それは」
「ーお前のとこって、両親基本放ったらかしじゃん。飯なんて作って看病とか、するっぽくないのに何で?」
ー、
言葉を遮るようにして淡々とそう言った雛原の言葉に、目を開く俺。
‥全部、どうして雛原にだけ、こんなにもわかってしまうのかー
彼にばかり、何故なんだろう‥。
「‥何?」
端正な横顔を見つめていると、それに気づいた雛原がこちらを振り向いて、あわてて目を反らす。
「、何で、来たの?昨日も会ったのに、何か用事?」
平静を装い言うと、雛原はじっと仰向けになる俺の顔を見つめる。
「用って、わけじゃねーけどさ‥」
言って、雛原はまた、俺をじっと見た。
「、‥‥なに?」
意味が分からずにそれに?を浮かべ尋ねる俺。
すると、雛原はいや‥と言って、ポンと俺の頭に手を置いた。
「‥何となく、来ただけ」
そうして、雛原はぼそっとそう少し顔を背けるようにして言った。
‥いつもと何かが違う雛原に、俺は目をきょとんとして雛原を見つめていた。
なんと言うか‥堂々とした感がないというか、‥‥何か、変。
しかも何となく、とか、普通に言えばいいのに。何でこんなに言いづらそうに‥
目なんか反らして、らしくない。
「野上、」
「ー何?」
「‥あー」
あー‥?
「なに‥?」
再び尋ねると、あーとまた言う雛原。
何て言うか、本気で雛原がおかしい。
「いや‥その、だからそのさ」
「うん」
「‥‥お、」
「‥‥?」
「‥‥お、」
‥?
いや、だから何?
「おい、雛原‥」
「お大事に‥、」
不意に声を出した言葉に、俺はえ、と声を漏らす。
「‥‥って、言いたかっただけ」
‥見上げた雛原の顔は、見たことない表情をしていた。
ガタッ
「、それだけ、それだけだから」
すると、雛原はスクッと即座に立ってその場を去ろうとした。
つか、ちょっと待ってよ‥
何でそんな急にそんな態度なのか全然意味が分からないんですけど‥。
中身だけ入れ代わったかなんかしたか?
それとも‥雛原の顔って、まだあったわけ?
それらを聞こうとして腕を掴んだ。ーのに。
「おい、雛原‥ちょっと待」
「ーまた学校で」
去ろうとした腕を掴むと、‥それは思い切り、振り払われてしまった。
扉は呆気なく閉められ、雛原は5分も経たない内に姿を消した。
‥訳が分からない。
雛原に関して、未だかつて解読できたことは、ないといえばないのだけれど‥
にしても、何か今日は‥可笑しすぎる。‥絶対。完全に。
俺は、ボスッと枕に顔を下に向け埋めてから、顔を横に向けた。
‥まだ火照る顔はあって、頭はぼうっとしていた。
もしかして、昨日ここまで運んだのは雛原ー‥?と、少し一瞬思ったが、それはないとすぐ頭を振って、目を閉じた。
ふと、高藤が作った食べきれていないお粥を思い出したが後で食べることにした。
‥そういえば、今思い出したけれど、さっきのお大事にを言いに来たってあれ‥
俺が熱出したこと、何で雛原は事前に知っていたんだろうー?‥
だって、知ってるから言いに来たって言えるんだし‥‥
何でだろう‥?
‥‥
まぁ、どうでもいいか‥
そう思うと、急に睡魔が襲ってきて、俺は布団を上に上げた。
ーそうしてその日は、
そのまま夜になるまで、俺は目を開くことはなかった。
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