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湯馬は、俺を見つめ、キスを交わしたあと、上半身を起こす俺の身をそっと抱き締めた。
傷の傷みを配慮したその優しい行動に、俺は少し口元を緩めた。
「湯馬‥‥」
呟くように言うと、湯馬は不意に俺の体を離した。
顔をうつむかせ、湯馬は俺から手を離した。
「湯、馬‥‥?」
それの意味が分からずに俺はそう口にして、
でも、‥駄目ですよねーーと、そういう湯馬の声に目を開いた。
えー‥‥?
駄‥目‥‥?
目を泳がせる俺に向かって、湯馬は優しく笑って、言葉を刻んだ。
「‥‥‥だってあなたには、俺でない、‥それ以上に大切な恋人がいるからーー」
ー‥‥‥
‥‥俺はその言葉に、
現実を突きつけられたような感覚が、
‥‥‥そのとき、初めてしたような‥気がした。
ー
「ゆう‥」
「先輩はまだ、あの男と終わっていませんよね」
湯馬の言葉に、顔を上げる俺。
終わって、ない‥?
「俺、先輩のことすごい欲しいし、抱きたいけど‥でも、先輩が好きなのはやっぱりあの男なんですよね。」
「え‥‥?」
「俺‥前の関係に戻ってもいいけど、でも先輩を大切にしたいから、もう本当に、忘れられることはないと思うけど、先輩のことは、本当にこれで‥最後にしようと思うんです」
ーえ‥‥?
湯馬の言葉に、目の前が真っ暗になっていく。
「もう、変な関係なんてしませんよ。これからは、あなたのこと、もっとちゃんと、優しい目で接したいから‥。もっとちゃんと、堂々とあなたといたいからー」
「ー‥、」
「俺、ちょっと大人になったでしょ?」
湯馬はそう言って、恥ずかしそうに笑った。
「好きな人のことは‥やっぱり、泣かせたり、脅したりするんじゃなくて、そばで‥笑っていられるような‥その人の幸せを願ってられるような、そんな存在の方がいいかなって、‥俺、思って」
湯馬は、‥‥言って、真っ直ぐに俺を捉えた。
湯馬は、強い光を目に持って、揺らぎのない瞳を俺に向けていた。
‥‥湯馬は、変わった。
湯馬が言うように、大人になった。
前の執着心を持っていた人間ではない、湯馬は‥
もう、‥‥中身までかっこよくなってしまっていた。
ーけれど。
「‥‥‥」
‥‥‥だけど。
「‥?‥‥先輩?」
だけど、
‥‥‥だけど、違う‥。
「先輩?」
こんなこと、‥こんなものを
俺は‥‥‥求めていたわけじゃないー
違うよ、ー湯馬‥‥
俺はそんなお前、求めてないよ‥
そんな潔いお前を、俺は求めていないよ‥
何で分からないんだ、
どうして分からないんだ、
‥俺がどんな気持ちをお前に抱いているか、どうして分からないんだ、
俺はこんなにもお前が好きだと、胸の奥で叫んでいるのに、それがお前には分からないのか‥?
他の男といても笑ってやるなんて、そんなこと本気で言っているのか?
「先輩‥どうしたんですか?傷、痛みますか?」
湯馬は、‥そういった湯馬の声は、心なしか酷く優しく聞こえた‥‥から、
だから‥‥‥
だから、
「先輩‥‥?」
‥‥‥もう、何も‥
‥言えなくなるじゃねぇか。
「先輩‥」
うつむいた俺の顔を、湯馬の手が上に上げて‥‥俺はなぜかそれだけで泣ける気がした。
「何で急に黙っ‥」
でも、
それはいくらなんでも癪だったから。
だから、
だからー。
「ん、‥‥‥先輩っ?」
だから代わりに‥
俺は、
湯馬の唇に、
自分の唇を合わせたんだー
湯馬が、俺が、息をせずにいられなくなるまで、俺は唇を合わせたまま、目を閉じたー。
‥‥静寂が俺たちだけを包んで、熱が、唇に集まるー。
これが、自分の気持ちだった‥。
これが、湯馬に対する‥俺の愛の表現の仕方だった。
けれど、きっと‥湯馬には届かない。
今のこの湯馬には‥届くことはないのだ。
でも、それでもいいー。
彼が俺をそう見ると言うならば、俺はそれで‥‥
‥もう、十分だ。
湯馬がそれを望むなら‥‥‥‥
湯馬がそれを肯定するのならー
俺は、それでいい。
「‥‥‥なぁ、どういうこと?‥‥‥」
‥‥‥‥
‥‥‥‥けれど、
現実は‥そう簡単にすんなり事が進むことはない。
そう、分かっていたんじゃ‥‥
‥‥なかったのか、俺は‥‥‥ー
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