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ーーー
…その空き教室は、ちょうど秋の陽が差しており、ほんの少し暖かかった。
時刻は午後の授業開始まであと15分ほどの時間があった。
湯馬は、真顔で俺を見つめていた。
昨日殴られたそれは、見えないところだったせいかまるで嘘のようで、俺はそれが逆に痛々しくも見えてしまった。
「…先輩、昨日大丈夫だったんですか?」
湯馬は第一声、そう言って俺を見た。
それは背中の殴られた傷のことなのか、それとも別のことなのか…俺にはその判別はつかない。
「大丈夫って、だからそれはさ…俺のセリフなんだけど」
言うと、湯馬は黙って俺を見つめた。
何故黙るのか、俺には分からなかった。
湯馬はしばらくして、口を開いた。
「そうじゃなくて…俺が言っているのは恋人の、方なんですけど」
キッパリとそう言い切った湯馬に、俺は堂々と構えていた内を早くも少しだけ崩す。
鋭い…真っ直ぐの目に、中を見抜かれるような錯覚をする。
「恋人って…関係ないだろお前に。俺らはそういう関係でも、なんでもないんだし」
湯馬の瞳に、俺は耐えられず、反らしながら何とかそう言った。
すると湯馬は、すぐ側に立っていたせいか、俺の腕をすぐ糸も簡単に取って、俺のことをさらに見据えた。
「…なんだ」
「何で目を反らすんです」
「どうでもいいだろ…」
「ーはぐらかすんですか?」
「別に意味なんかない、」
「じゃあ俺の目を見て言って」
湯馬はぐい、と俺の顔を自分の方へ向けた。
俺はそれに抵抗するでも、ほほを染めるでもなく、ただじっと前にある湯馬の顔を見つめた。
「…あぁ、分かった言う。言うよ…言えば良いんだろう?」
湯馬は俺を見つめていた。
「ー…雛原には、別になにもされてない。お前がどう思ってるのか知らないけど、俺は何もされてない」
「…」
湯馬は俺を、見ていた。
「あいつは…ああいう奴なんだ。気に入らないとすぐ手を出してしまうんだ、…でも誰だってそうだろ?付き合ってるやつが他の奴とあんなことしてたら嫉妬するし、」
「…」
「お前には…正直悪かったと思ってる、関係ないのに巻き込んだ、殴らせてごめん…。本当にごめん…。でも恨むなら、あいつじゃなくて俺にしてくれ」
「…どうして」
「……俺が自分からお前にキスしたからだ」
湯馬はじっと俺を見つめた。
…目をじっと見られ見つめられるそれに、いつかのここでの出来事が甦り、少しだけ脈拍が速く打たれるのが分かる。
頭の中を、急に走馬灯のようにして彼の表情や声が駆け巡る。
…不思議と思い出すと、彼の優しい顔と声しか、浮かばなかった。
雛原にいつばれるか知らない恐怖の瀬戸際で、俺は彼のことを見る余裕がなかったのかもしれない…と言えば言い訳にもなるのだが…
…ーでも、今ならばはっきりと言えた。
やはり俺は、彼のことが好きだ…と。
「湯馬、」
「……」
けれど。
「わざわざ声かけて、俺のこと心配してくれてありがとう。お前のがよっぽど辛い痛い目遭ってるのに…ほんとごめん、もう本当にこれで、俺たち会わないようにしよう。お互いのために」
「………」
これ以上…俺たちは一緒にいてはいけない。
これ以上、湯馬に被害を加えさせてはいけない。
雛原の激情が冷めるその時まで、俺は俺自身を保たなければいけない。
俺がすべての、発端だったから。
俺が彼を、ここまで導いてしまったから。
…湯馬はここにいるべきじゃない。
これからはすべて、俺と雛原の問題だけー
俺が湯馬を好きなら尚更だ…
俺は彼と、いてはいけない。
もう、大分前から分かっていたような気がするこんな展開に、そんな自分に、俺はただ自分を嘲笑うしかない。
ごめん…と、何度言ったって、湯馬に伝わらない気がした。
言えば言うほど、その言葉は何故か事の重さを軽くさせるように感じた。
「ーーじゃあ…」
ーだから俺は
「もう、……行くから」
……だけど俺は
ー好きです………あなたのことが…先輩……
「……ー」
だから、俺は…
「先輩、待って」
「、」
「行かないで」
………彼のこの手を、
取るわけにはいかない。
ーーーー
「ぁああ…ンっ!!」
ー記憶が飛ぶ。
激しい刺激に、まぶたの裏にあった、彼の表情が消えるー。
「ああぁ…、…んんっ…ぁ……も、やめて……、もう…ひな、はら…雛原…」
ーー何もかも、砕け散る。
頭の中で、すべてがぐちゃぐちゃに掻き乱されていく。
ー行かないで……
そう言った彼の言葉は、2週間経った今も、俺の耳を離れずにいつまでもこびりついている。
あの顔も、目も、声も。ー何もかも。
「あぁ……ッッ」
俺はまた…ずぶずぶと、海の底へと沈んでいくー。
もう、決してぬけだせないように。
もう、決して這い上がることのできないように。
ー先輩……、
…俺は静かに、見えない涙を流した。
ー
「…次は何をしようか、野上」
ベッドの上で、四つん這いだった姿勢を崩れるように落とす俺を見て、雛原は笑った。
俺は両手首を金属の手錠に拘束され、上手く体勢を整えることができなかった。
腰辺りだけがびくびくと震え余韻に浸り、俺は雛原の手により首もとに付けられていた首輪をぐいっと上に引っ張り上げられる。
「…ッ!、…っひ、なは…」
「ーそうだ良いこと考えた」
言って雛原は苦し涙を浮かべる俺を見て、楽しそうに笑っていた。
…雛原は冷酷な笑みを浮かべて俺にキスをした。
…俺は雛原により、身動きできないように身体を拘束された。
素っ裸でベッドに座った姿勢で手錠をかけられていた手を上に上げられ、頑丈な縄のようなもので吊るされるように縛り付けられる。
足は大きく左右に開かされ、閉じると尋常になく痛い平手打ちに遭うー。
「…どうだ野上。…感じるか?」
雛原は俺の前に自分の膝をベッドに立たせて、体と顔を近づけてくる。
「お前こういうの大好きだろ…?叩かれるのも、無理矢理縛られんのも」
雛原は弧を描くように口端をあげる。
「…ちが、う。…違う…俺はこんなの、好きじゃない、……好きじゃない」
言うと、雛原は少しの間を開け、ーそうして上に上げられ振りかざしたその右手に、俺は息をのみ体を震わせ縮こまらせる。
「……」
「……」
「…クス。……そんなに怖がんなよ、野上?」
ービク
振りかざした手は、俺の頬にそ…っと添えられる。
その手の大きさと冷たさに、体がびくつき、冷や汗を流させる。
雛原はそんな俺を見て、また笑った。
そしてそのまま右手を下へと下ろしていき、俺のその中心部分を触って、雛原は笑った。
「好きじゃないってその言葉…覆してやるよ」
雛原の言葉と、さわられ握られるその感触に、
俺は抵抗もできずに…ただ唇を噛むことしかできなかった。
ー
「ん…っ、……、、ん…んんっ…」
…俺の体からは、いくらかの汗と、熱い微かな息が漏れて出た。
雛原の急速な手による扱きで、体は抗えずソコはしっかりと熱を保ち、立ち上がり、芯を持たせた。
上に吊るされるようにしてあげられた両手首は金属製の手錠が手にギチギチと当たって痛み、俺が体を微かに動かすだけでガチャガチャと音を響かせた。
大きく左右に開いた足は刺激にプルプルと震え、自分の力で閉じてしまわないように足の先にぐっと力を込め開くことに精一杯だった。
怖い、
…ただそれだけのはずなのに、感じて先走りをし出す自分に、汚れを感じて顔を垂れて下を向き目をきつくつむると、雛原はそれを許さずに俺の顔をぐいっと上に無理矢理あげる。
「…おい。何急に恥ずかしがってんだよ、淫乱」
雛原の言葉に、びくりと体が震える。
…嬉しくてじゃない……その言葉が、怖くてだった。
「好きじゃない、とか言っときながら、…やっぱり好きなんじゃねえかお前。…股広げて体震わせて……とんだド変態だな」
雛原はそう言って嘲笑うようにして笑った。
…俺は何も返せなかった。
雛原にただ、従順にしているしか、方法はなかった。
「、…あっ、ぅ」
雛原は、俺がイキそうになるのが分かると、不意に動かす手を止め、その硬くなったソレの根元部分をぎゅっとどこからかまた持ってきた縄で縛った。
途端、競り上がっていた刺激を押さえられ、妙な圧迫感に攻め立てられ、俺はぐっと上に上げられていた手を力強く握りしめた。
「ーー苦しい…?野上」
雛原は確かめるようにして俺にそう尋ね、は…と途切れる息を漏らす俺を見て、楽しそうに笑う。
足の先がプルプルと震え、汗が額から滴り落ち、体が限界を知らせようとしていた。
雛原は俺の顎を掴んで目線を合わせるようにして俺を見た。
「ほら、…イキたいならイキたいって言えよ。したらイカせてやるよ」
雛原は言って、俺の顎をくすぐるように撫でた。
…もう、自分の中にある全てのプライドが滅茶滅茶にへし折られるような感覚だった。
当にプライド等存在しないと思っていたが、言えと言われ言えない自分がいるということは、まだ、少なからず俺にもそれは残っていたということを今知ったのだ。
「ほら…言えよ。野上」
「……」
「言え」
「……」
「ー言え」
…でも。
プライドなんてあったって、…一体何が、どう変わると言うのだろうー…?
そもそも俺に、拒否権と言う言葉は存在していたっけ。
意見を言う立場を、なくしているのはいつからだっけ。
ーどうして俺は、…こんな人を好きになったりしたんだっけ。
もう、何も分からなかった。
「………イキたい。………イカせて。…イカせて、ください…………」
その言葉を言うのに
大した抵抗など、存在しなかった。
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