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番外編 彼の素顔②湯馬 春斗の場合(1/2)
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「……あの日見たあの瞬間から、先輩のことが好きだった……って言ったら、先輩は、笑いますか?…」
By湯馬
ー「ちょっとあんた……大丈夫?」
あの日、あの瞬間から、俺はあなたに惚れていたー。
……
…
ー4月を迎える春。
俺は、一人大学の校門前にて、ある人と待ち合わせをしていた。
辺りを桜が散り、見慣れない男女が歩き、俺は携帯をいじりながらその人を待っていた。
ーそれからしばらくして、おい、というその声に俺は顔をあげた。
顔を上げたその先には、俺の愛しい愛する人がそこに立っていた。
「ー先輩…!」
俺は瞬時にそう言って、まるで映画かドラマのワンシーンのように側へ駆け寄ろうとすると、それはその先輩の手によって遮られてしまった。
そうして俺は頭を掴まれるようにして止められたその手を掴んで、少しむすっとした顔で顔を上げると、先輩はため息をつくように、半ば呆れたような顔をしてこちらを見つめていた。
「…何ですか?」
「……」
「…?先輩?何か言いたいことがあるならちゃんと…」
と言うと、先輩は不意にあるに決まってんだろ、と言って俺を睨みつけた。
俺はそれにえ、と目を瞬かせると先輩は一度俺から離れ、一人頭を抱えるようにして眉を寄せた。
「…お前なぁ、ここが何処だが分かってるのか。ここは俺の通う大学だ」
「…え?知ってますよ?」
「…。それに俺は男だ、それでお前も男だ。意味分かるか?」
……。
「…うーんと…俺たちは…ホモ?」
「ー違う‼︎そういう意味じゃない…!」
先輩の声に周りにいた人たちが反応した。
「…そうじゃなくて…、俺とお前は男同士だからこんなところで抱き合うとかしちゃいけないんだよ…それを言いたかったの」
げんなりとする先輩に、あぁと俺はうなづいた。
「なんだ、そういうことですか。そういうことなら遠回しに言わずに直接言って下さいよ~」
「はぁ…?お前な、」
「先輩そうですよね、恥ずかしがり屋ですもんねー」
「…は?」
「じゃあ今度から、あんまり人のいないとこでやりますねー」
「……」
俺の言葉に、先輩は何故かまた呆れたようにして目を反らした。
俺はそれをにっこりとして見てから、さっさと歩き出す先輩の横について歩いた。
大学から離れ、あまり人目がなくなってから俺は先輩の手に自分の手を重ね握った。
先輩は瞬間ビクッとして体を強張らせた。
「わ、ちょ…」
「ー恋人同士でしょ?これくらいはしてくれないと、俺拗ねちゃいますよ」
何か言おうとする先輩にすかさず俺はそう言って、先輩の手を強く握ると、先輩は少し目を彷徨わせる。
そうして俺とは反対側の方を向いてから、その手を振り払うことはしなかった。
俺はそれを見て、先輩に見えないように軽く笑った。
ー先輩は優しい。
何だかんだと言って、結局俺の言うことを全部呑んでれる。
眉を寄せながらも、俺の言うことに絶対に嫌とは言わずに付き合ってくれる。
…ほら、今もこうやって、俺の横で嫌々ながらも頬を染めて、俺のその手に緊張している。
…可愛い。可愛すぎる。
ていうか先輩、分かり易すぎ。
「せーん、ぱい?」
顔を覗くように横から声を掛けると、先輩は少し目を開いてから俺から目を反らす。
左手はしっかりと…握って。
「先輩、どうしたんです?急にだんまりですね。何か話しましょうよ」
「…い、いい。今は別に、…話すことない」
「何ですかそれ。可愛いなぁもう」
「ーは!?」
「俺と体を重ねることまでしといて、俺が恋人になった途端先輩初めて彼氏が出来た女の子みたいな反応するんだもん~、今更何恥ずかしがってるんですか」
満面の笑みでそう言うと、先輩は少し頬を染めてから、俺を見て眉を寄せた。
「……だって、学校帰りに待ち合わせしてわざわざこんなことなんか…初めてだし、…なんか、デート…みたいだから」
「ーへ?」
「……」
黙る先輩を見て、俺は目をきょとんと少しさせてから、先輩を見つめた。
すると先輩は、こういうの…と言った。
「え?」
先輩は目を瞬かせた。
「…俺、雛原のときは…こういう、手とか、…なかったから…だから、…どうすればいいのかわかんないって…いうか、…」
「…」
「…だ、だから…お、お前は、こういうの慣れてるんだろうけど、…俺はその…初めてだから、無駄に…緊張するって…いうか、…なんか、恥ずかし…」
「ーも~先輩可愛過ぎ!」
それから俺はそのまま最後まで聞かずに先輩に抱きついた。
先輩は、耳まで赤くさせて、抱きつく俺に大きく反応した。
…だってだってだって、先輩ってばすごいもじもじしてそんなこと恥ずかしそうに言うんだもん、可愛いに決まってるでしょ!
普段があの無表情プラス何?て感じだから、こういう先輩のデレってしたところ堪らないんだよね。
ツンツンツンデレな先輩が俺に対してこんなにも愛の表現をしてくれてるなんて…!
一々びくびくしちゃって、可愛いなぁもう!
こんな先輩と付き合えてる俺って、もしかして超幸せ者…!?
…て、
……何か俺、浮き足立ってないか。…
先輩にこんなこと考えてることバレたら、即恋人から下ろされる…用心しないと。
「ーほら、飲み物」
「あ、ありがとうございます」
気づいたらもう先輩の家だし…
しかも一人暮らしの先輩の部屋だし…。
「えぇと…、先輩、もう大学慣れました?」
こほん、と心を冷静に落ち着かせる為にもと、とりあえずそんな質問をしてから、俺は先輩の入れてくれたお茶を一口ゴクリと飲んだ。
すると、先輩はソファに座る俺の隣にぽすん、と座ってから、あーと言った。
「慣れたけど…」
「へ~」
「でも…なんか、なんて言うか」
「はい」
「…なーんか、…むやみやたらと人が寄ってくるっつーか…」
…。
ーん?
「人…ですか?」
「ん?うん、そう、人」
「…。…何でなんでしょう?それは…俺も知りたいなぁ…」
「んー、さぁ…。俺も知りたいな、それは」
……。
「……」
「……」
「湯馬、あのさぁ」
「ー先輩、」
「何?」
「……その、一応聞くんですけど、寄ってくる人って、男ですか?女の子ですか?」
……。
「……んー、」
「……」
「ー男?」
…………
……
………な、……。
俺は瞬間即座にその場を立ち、隣に座る先輩を見つめた。
「ん?…湯馬突然どうし、」
「ー先輩…‼︎それどういう意味ですか⁉︎、ちょっとヤバイですよ!男に近寄られてる…?先輩狙われてますよ…‼︎そんな呑気にオレンジジュース飲んでる場合じゃないです!早くその男達を先輩から遠ざけないと…‼︎」
「ちょっ…湯馬突然何…」
「先輩鈍いんだから用心して下さいよ…‼︎前みたいに俺が側にいるとは限らないんだし、先輩ただでさえ力ないのにもし集団で男に迫られたりしたらどうするんですか‼︎一瞬で先輩食べられますよ…!?」
「はぁ…⁉︎、食べ…、お前何言って!」
「あぁもう~…先輩はどうして先輩なんだろう。俺と同い年だったらこんなことで悩まなくてもすむのに…先輩と同じ大学へ今行けているのに…」
「湯馬…おい、」
「あー…すごく心配だ…本当にすごく心配だ…。もし何かされそうになったら俺にすぐ連絡を…いや、それは遅すぎるな…」
「………。」
……
「…湯馬。お前のくだらない妄想に付き合ってる暇はないからさっさと帰ってくれないか」
「何言ってるんですかどこがくだらないんです、先輩のために言ってあげているんですよ」
「だとしてももういいから…つかお前は俺をどういう目で見てんだよ…」
「え?どういう目って…」
ーちゅ、
「ーこういう目?」
「………」
「ーもう帰れ」
「え、…ちょっと、先輩…⁉︎」
ーバタン
そうして気付けば、あろうことか、俺はどうやら先輩に家から追い出されてしまったらしい…。
…まだ付き合って一ヶ月ようやく経ったくらいなのに、何やってんだ俺は。
食べられる…て、表現がまずかったのだろうか?
犯されるっていう表現よりはマシかと思ったのだけれど…。
…そういうことではなかったりして。
ーまぁ、いいか…
先輩はきっと明日になれば機嫌を直してくれる。
ノーが言えない人だから、強引に押し込めばすぐ元どおりになる。
……
………て、俺…
結構最低な奴…?
ーそして、先輩の家から帰る途中、俺は小さい石ころを蹴りながら頭に嫌な映像を思い浮かべさせていた。
…もし、先輩がよくも知らない男らに迫られたりしたら…
……
ー「おい、ほら…立てよ。今から俺たちが可愛がってやるからさぁ…」
ー「、…やめろ、俺なんかに盛って何が楽しい」
ー「…んー、可愛いねぇ…その睨んだ顔…。そそられるねぇ」
ー「俺どこの役やっていいのー?」
ー「俺後ろがいいな~」
ー「馬鹿、俺が最初だろ~!」
ー「な、…ん、触んな変態…‼︎どっか行け!」
ー「まあまあ落ち着いて~悪いようにはしないよ…多分」
ー「やめ…んっ!、ふ……ぅ、」
ー「じゃあ俺ココ触っちゃおうかな~」
ー「…っ、ーや!だ、…触ん、……のっ、」
ー「何ー?嫌がってるのって結局口だけじゃーん、ココ、…もう反応してるし」
ー「ひゃあぁ…っ、!だ、駄目…ん、も……離し、て……来ん、な…近寄んな…、」
ー「可愛い………君本当、可愛い。ねぇ、入れていい?」
ー「あぁ…っ、だ、駄目、嫌だ、……絶対、」
ー「よーしじゃあ入れちゃおう☆」
ー「おいおい聞いた意味だろ、あはははは」
ー「ん、…や…本当に、……ヤ……」
ー「…その怖がってる顔…、最高。」
ー「ー、は…あぁあああぁぁ……‼︎」
ー「ほら、こっちも…ちゃんとしろよ」
ー「んっ、!、…ん、んんっ、んん…ぅぐ、」
ー「……あぁ、もうイキそう…」
ー「……、ん、んんんっ、ふんんんんっ!」
……、
………ヤバイ……、
何脳内で先輩襲われるとこ想像して夜でもないのに悶々してんだよ俺は。
完全に反応しちゃってるし…。
……あぁもう、俺本当に変態だ……。
ごめん先輩……。
「ーうん、じゃあまたね。うん、バイバイ」
その時ふと、聞き覚えのあるその声に俺は反射的に顔を上げた。
見ればそこには、ー
柔らかい性質をした茶髪に中世的な、整った顔ー。
彼はいつも、どんなときでも先輩の隣に居た人ー。
「……あ。…誰かと思えば」
「……」
……ぁーあ、不運。
最悪だ。よりにもよって…俺の多分今一番苦手で、大嫌いな奴と…会ってしまったらしい。
「ーよぉ、一人で散歩?湯馬 春斗君」
「……」
「…おいおい無視か。俺は一応お前の先輩だけど」
「……」
「…おーい、野上」
ービク
それに思わず体を反応させると、その人はあはははと笑って俺を見た。
「お前単純、可愛いところあるんだな。そんなに野上が好きか」
言いながらまだ笑い続けるその男を見て、俺は口を少しひくつかせながらにっこりと笑った。
「どうもこんにちは~、高、藤、せん、ぱい。先輩こそ、何してたんですか?さっき女の子と一緒に居たみたいですけど、もしかして彼女ですかー?だとしたら安心だな~これでもう先輩に友達とか言って偽ってる人が側にいなく、なるから~あっはっは」
「ーあ~それはごめんね、あははだとしたら誤解だな~。さっきのはただの友達で恋人でもなんでもないし別に君みたいに無、理、矢、理、…野上襲う真似しないからー俺」
…な、
キッとその人…高藤 実月を睨むと、彼は俺を見てふ、とあざ笑った。
「あなた本当に…何で先輩の友だ」
「ーそれに、俺は自分から好きな相手困らせるようなことは絶対にしない。…例え友達の位置にしか立てなくても、俺はお前や雛原のように、あいつに無理に言い寄ったりしないよ、ー絶対に」
ー。
「……、」
その言葉と、先ほどと打って変わって酷く真面目な顔をして俺を見るその鋭い目は、俺の心臓を強く太い針で射抜くようだった。
それからふ…、と視線を落とし、彼は白いコンクリートの地面を見つめた。
その目には何も映してないと分かっているのに、その彼の今の頭の中には、彼の記憶の中にある先輩がいる気がして、俺は考えたくなくて頭を振った。
「…どうかした?」
「あ、…いや」
言うと、じゃり、と地面を軽く足で擦らせ、高藤 実月は再び軽く笑った。
「ま、どうでもいいけどさ…これ以上あいつのこと傷つけるのだけはやめてくれよ。側で見てるこっちはお前らより数倍辛いんだからな」
その言葉に、ぐっと俺は唇を噛んだ。
彼の去り際、俺は口を開いた。
「じゃあ…」
「ー何?」
……。
「……じゃあ、何であなたは…先輩の側にいるんですか」
その俺の声に、彼は少し目を動かした…気がした。
「…んー、……さぁ、何でだと思う…?」
「え?」
逆に聞き返され、俺は彼を見た。
なんでって…
「知りませんよ、…そんなの」
言うと、彼はあははとごく自然に、屈託無く笑った。
「だよなー。あはは、だろうな、…うん。…だって俺も、よくわかんないし」
「は…?」
言うと、彼はまた笑う。
「なに?その反応。」
「え…いや、…だって」
言うと、彼はんーとまた言った。
「まあ、今はひとまず、アレかな。」
「アレ?」
「ーそ。ただ…心配だから、かな」
ー心配?
「…どういう」
「ーばーか。お前とかだろ」
「ー、はい?」
「ーもし野上がさ、また誰かさんのせーでくら~くなったりしたら、ほら、やっぱりそういうのは寄り添ったげた方がいいでしょ」
……。
「…そういうときのためにさ、やっぱ…いた方がいいかなって。あいつはなんだかんだ、結構抱えるタイプだからさ…だから、なんつーか、……放って置けないんだわ」
「……」
彼はそう言って、微かに、ただ穏やかに…
笑みを浮かべていた。
…彼は大人だ。
俺よりも、…先輩よりも、誰よりもー。
自分の手には入れず、側でただ優しく見守る…。
恋人の立場ではなく、友達の立場としてー
……それはきっと、俺の想像するよりも、辛い心情なのだろうーなんて、…俺が思ったって、あの人にとっては嫌味でしかないのだろう。
彼のその先輩の気持ちを知ったのは、今より大分前のことだったー。
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