アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
早退3
-
「雅ぁ?」
「俺に綺麗な所なんて一つも無い、俺には何一つ残ってないんだ!汚い、汚れきっているよ」
淳の顔が離れて俺を不安そうな顔で見つめている
「俺は汚い」
「何言うてんねん?雅は綺麗や「汚いんだよ!!」
俺が淳の言葉途中に怒鳴ると淳はえらく驚いた顔をした。
そしてそれよりも俺の目から止めどなく流れるモノを見てさらに驚いた様だった。
困惑させてゴメン
泣くつもりなんて無いのに涙が止まらないんだ
「ゴメン淳・・・」
「雅ッ!!」
「!!?」
俺は淳に力強く抱きしめられていた
「雅、何がそんなに辛いねん?何が雅をそんなに苦しめてんねん?」
淳に抱きしめられた体が痛い、痛い程に強く抱きしめられているんだ。
それが凄く・・・心地良い。
淳の腕
淳の胸
淳の声
淳の温もり
淳の優しさ・・・
淳の全てが俺に浸透していくような・・・気持ちよさ。
あぁ、そうか、これは・・・
俺は気づいてしまった・・・気付かなければ良かった。
俺は淳を・・・俺は淳の事が・・・
“ 好き ”
気付かないふりをしていただけで、実はずっと前から俺の心の中にあった淳への気持ち。
だからこそ知られたくない、他の誰に知られても淳にだけは俺と龍一の関係を、汚い俺を知られたくない、見られたく無いんだ。
そして俺の気持ちも知られちゃいけない。
誰にも・・。
「ゴメン淳、大丈夫だから」
汚い俺が淳を好きになっちゃ駄目だ。
だから知られてはいけない。
淳の迷惑になる。
「何が大丈夫やねん!こんなに体震わせて」
淳が俺の顔を見る、まっすぐに綺麗な琥珀色の瞳で・・・
「こんなに辛そうな顔して・・・大丈夫な訳ないやろ?」
俺を見る淳のほうが辛そうな顔をしている。
「なぁ、俺じゃ相談にものれへん?俺じゃ力不足?・・俺にだけは話してくれへん?」
ゴメン淳・・・お前だから、お前にだけは話したく無いんだよ。
だから
「ゴメン・・・」
それしか言えない。
だけど今だけは、こうしていさせて欲しい。
淳の温もりを感じていたい。
俺は淳の背中に腕をまわして強く抱きしめた。
すると淳も無言で俺をまた強く抱き返してくれた。
「ゴメンな雅、無理に聞き出そうとして・・・ただ、俺は雅の支えになりたいんや」
淳はとっくに俺の支えになっているよ
お前のおかげで凄く暖かい気持ちになれる
「ありがとう」
俺が笑顔で淳に言うと、淳は顔を真っ赤にして
「お、おう」
と一言。
少し間をおいて淳も俺に、はにかむ。
俺も負けじとニッ!と歯を見せて淳に笑ってやると両頬をかるく摘まれた。
「なにふんらよ(何すんだよ)?」
「雅が可愛すぎるから、こうやって顔面を崩してやらんと俺の精神がもたん」
「?」
よく分らないけど俺も淳の頬を同じ様に摘んでやった
「プッ!ハハハハッ!」
淳の頬を下に引っ張るとスゲー不細工になった。
面白くて俺が笑うと淳も俺の頬を左右に引っ張ると人の顔を見て爆笑しやがった。
俺達は小学生か?ってくらい下らない事で笑いあう。
何だかむず痒いけど幸せな空気があたりを包み込む。
えも言われぬ穏やかな時間が俺達に流れていたその時に、よく聞き慣れた着信音が部屋に鳴り響き、俺はいっきに鉛を呑まされた気分になった。
ディスプレイを覗けば案の定
【 龍一 】の二文字。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
28 / 58