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金曜日12
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―ドクンッ
心臓が一度大きく高鳴った・・・?
「龍一」
-俺の幸せが・・・本当にお前の幸せになるのか?
ガキの頃から龍一の優先順位は俺だった。
俺が、プリンが好きって言ったら、本当はお前も好きだったくせに、それを俺に差し出した。馬鹿な俺は遠慮することも無くお前の分まで食べたけど、それを見てお前は幸せそうに笑っていた。
「雅人、おいしい?」って俺の顔を見て確かに幸せそうに笑っていた。
こんな事は日常茶飯事だった
俺が楽しそうに笑うと龍一も凄く楽しそうに笑っていたっけ・・・
「・・・愛する人の幸せが自分の幸せ・・・か」
俺は龍一のセリフを小さく呟いた。
龍一のその言葉に嘘は無い、俺の幸せが龍一の幸せと言えた・・・今までは。
けど、今回ばかりは違うと思う。
龍一は本当に幸せか?・・耐えられるのか?
俺が別の男と幸せそうな顔して歩いてる姿を見て・・・お前は本当に幸せなのか?
本当に俺から離れられるのか?
あれだけ俺に執着していたのに?
狂うほどに俺を愛していたお前が?
口を開くたびに俺に愛を囁いていた龍一が、俺から離れる・・・?
「・・・・りゅういち」
何故こんなにも胸が締め付けられるのか。
龍一から離れられたばかりなのに何故龍一の事ばかりを考えてしまうのだろう。
龍一から意を決して俺に別れを言ってくれた・・・それで良いじゃないか。
そう思うのに・・・。
念願が叶ったというのに・・・
この空虚感は何?
誰もいない道の途中で立ち止まり、右手に携帯をもった俺は電源を入れた。
緩慢な動きの指でアドレス帳ボタンを押して・・・発信ボタンを押そうとした時だった
~♪♪~♪
「!!?」
聞き慣れたメロディーが突然鳴り出し、俺はあからさまに肩をびくつかせ驚いた。
開いたディスプレイに浮かぶ文字を見て俺は息を呑んだ。
「・・・・淳・・・」
テレビ電話では無く、通常の着信。
俺は携帯を片手に戸惑ったが意を決し通話ボタンを押して無機質なそれを耳にあてがった。
「も・・・もしもし」
『やっと繋がった!テメー電源切りやがって!!ホンマにぶっ殺したるわ!・・・って、その声は、雅かッ!?!」
電話が繋がった途端、淳は電話口に居るのが龍一だと思ったのか怒鳴り散らした
「うん」
『ほんま?ほんまに雅ッ!?』
「うん、本当に俺」
『雅ッ!マサッ!!大丈夫か!?・・あ、急に怒鳴ってゴメン・・・・今、あいつも側に・・おる?』
語尾の声色が明らかに低くなる淳の声を聞いた俺は数秒の沈黙の後答えた。
「龍一は・・・いない」
『ほんま?』
俺の側に龍一はもういない。
玄関の扉を閉めたときから俺の側に龍一は居なくなった。
あの時から・・そしてこれからも・・・龍一は俺の隣にいない。
「いない。本当にいない」
『そうか。なぁ雅・・雅が大丈夫ならでエエんやけど・・・今から会えへん?』
「・・・あつし」
『ごッ、ごめん!そうやな!普通に考えて今は誰にも会いたく無いよな、軽率やったわ!ほんまにゴメ「会おう!・・俺も会うつもりでいた。淳に今すぐ会いたい」
俺は淳の言葉をさえぎった。
『雅ぁ・・』
「俺、淳に会って話したい事が有る。・・・全部、話すよ。俺の事も龍一との事も・・」
『・・・・・』
龍一との事・・・つまり、さっきの件に触れるという事に淳も気付いている
「今から淳の住んでる町に行くから・・・駅で会おうよ」
『わかった。気ぃ付けて来てな』
「ありがとう。到着したらまた電話する」
『待ってるわ』
「・・・うん、じゃあまた後で」
電話をきって携帯をポケットにしまいこんだ。
そして俺は震える自分の手を見て、拳を作り握り締めた。
この震えは夜風の冷たさのせいではない。
今から淳に会って全てを言う怖さも有るが、それ以上に自分がとてつもなく愚かな行為をしようとしていた事に対して怒りと情けなさで震えた。
淳からの着信が来る直前・・・俺は誰に電話をかけようとしていた?
誰の声を聞こうとしていた?
もし、淳からの電話が無かったら・・・俺は、とてつもなく最低で愚かな事をしでかす所だった。
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