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袋いっぱいの*
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次の日、起きたのは12時半頃だった。
きっともう航太はこの町を出てるだろう。
別れの挨拶も全くナシだ。
なんて薄情な友人なんだろうね。……俺もお前も。
俺はベッドから立ち上がり、居間へ向かった。
料理の匂いがするのできっと母さんが昼飯を作っているのだろう。
そんなことをやけにボーッとする頭で考えた。
まだ実感が沸かない。
もう航太がこの町にいないなんて。
「………おはよ。」
居間に入り、母さんに一声かける。
その声に母さんが振り返り俺の顔をギロッと睨んだ。
般若のような形相で。
「え?!な、なに母さん……?」
俺はそんな風に睨まれる意味が分からず、とりあえず蹴られたりしないようサッと母さんとの間合いをとった。
そんな俺に母さんはハァと溜め息をつくと、冷蔵庫を漁り出す。
更に俺は意味が分からずその場に立ち尽くした。
すると母さんが、中身が詰め詰めになっているナイロン袋を取りだし俺に手渡した。
「………これ、航太くんがアンタにって置いていったわよ。」
航太の名前にビクッとしつつ、俺はそっとナイロン袋を受け取る。
「………これ……。」
中身を見てみると、この前駄菓子屋で一緒に買ったソーダキャンディーがたくさん入っていた。
「アンタ、そのソーダキャンディー昔から大好きだったわよね。航太くん覚えてたのね~」
フフッと笑いながら言う母さん。
でも、そんな母さんの言葉はもう俺には聞こえていなくて。
昨日あれだけ泣いたのに、俺の目には涙が溜まっていた。
(………なんだ、これ。手紙………?)
ふと、袋の中に白い紙が折り畳んで入っていることに気付く。
それを開いて見てみると、そこにはびっしりと航太の字が書き綴ってあった。
そこに書いてある言葉に、俺は更に涙を流した。
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