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分かってるから言うな*
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「……俺だって…………っ。」
そう呟いて押し黙る航太。
俺のことを抱き締める航太の身体は震えていて。
俺は安心させるように航太の背中にギュッと腕を回した。
「…………なつき……俺、だって……………。」
航太が今にも泣き出しそうな掠れた声で言う。
「………うん。分かってる。分かってるから、言うな。」
言わなくていい。
大丈夫、伝わってる。
それ以上言われたら、俺もお前もきっと前に進めなくなるから。
だから言わなくてもいい。
そのあと、俺と航太は航太の乗る飛行機の便のアナウンスがかかるまでずっと抱き合っていた。
小さな田舎町の空港だし人通りも少なかったからあまり目立つこともなくて助かった。
「………それじゃあ、俺行くから。」
そう言って航太は俺を抱き締めていた腕を離す。
そのときやっと俺と航太は顔を合わすことができ、俺は先程の航太の様子から泣いているのではないかと心配していたがそんなこともなくて安心した。
「………おう、元気でな……っ。」
逆に俺の目からはまた涙が出てきて、航太に苦笑されてしまう。
「泣くなよ~。まったく、本当に俺がいなくなってもちゃんと生活できんのかね夏希ちゃんは。」
笑いながら俺の涙を親指で拭う航太。
その姿はいつもの航太だ。
俺は内心、大丈夫じゃねえよ!って言ってやりたかったが心配をかけてしまうと思い口を噤んだ。
「あんまり来れないかもしれねえけど、絶対会いに来るから。永遠の別れって訳じゃねえし、泣くな。」
「………泣いてねぇし。」
「はは、泣いてんじゃん。嘘はいかんよ夏希くん。ほーら、笑えって。」
突然ムニッと両頬を摘ままれ無理矢理口角を上げられる。
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