アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
さあ、お別れをしよう。(航太視点)*7
-
「じゃあ、俺も一緒に……」
「航太は夏希さんと一緒に待ってて。」
一緒に行く、とそう言いかけた言葉はまたしてもマミの声に遮られる。
「なんでだよ。荷物持ちだって必要だろう。」
「いいから!」
「……はあ、分かったよ。」
珍しくマミが意固地になって言うものだから俺はしょうがなく了承した。
きっとこれ以上言っても一緒に行くことを許してはくれないと思ったのだ。
「それじゃあ、おばちゃんとマミちゃんは買い物に行ってくるわね~!留守番は頼んだわよ、二人とも。」
「はいはい、分かった分かった。」
玄関から声を張るおばさんに夏希がリビングでくつろぎながら適当に返事を返す。
おばさんはそんな夏希を特に気にした様子もなく、マミと二人で買い物に出掛けていった。
「……。」
「……。」
まさか夏希と二人っきりになるなんて。
俺は思わずふぅ、と溜め息をついた。
「マミちゃん、いい子じゃん。」
夏希がぽつりと俺に言う。
「…ああ。礼儀正しくて気も使える俺には勿体ないくらいの奥さんだよ。」
俺はわざとらしく微笑みながら、夏希のほうを見た。
マミといることが幸せで堪らないというかのように笑顔を作る。
実際は、毎日仕事に追われてマミにはほとんど構ってあげられていないし子どもが欲しいというマミに応えてあげられていない。その癖、俺の心の中にはいつも、夏希がいる。
…最低だな、俺は。
夏希と一瞬目が合ったが、パッとそらされた。
「……あっそ。」
俯きながら夏希が小さな声で言う。
夏希の長い睫毛がなんとなく震えているような気がした。
まるで泣くのを我慢しているように、夏希は自分の手首を片方の手でぎゅっと押さえてる。
自分から話を振ってきたくせにそんなふうに傷付いた顔するなんて、バカだなぁ。
夏希がまだ俺のことを想ってくれている事。
それは夏希を見れば分かる。
こんなこと、誰かに言えばきっとどれだけ自分に自信があるんだとか言われそうなものだけど、俺達の幼なじみ歴を舐めないでほしい。
夏希の目が、身体が、全身で俺に好きだって伝えてくる。
それは8年前も今も何も変わらない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 33