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長谷川と共に離れのこの部屋で暮らす様になってからというもの、二人の間にはちょっとしたルールが出来た。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい」
俺はそう言いながら玄関へと向かい…
-チュ…-
今だに恥ずかしくて仕方が無い、いわゆるおかえりのチューと言うやつを長谷川の唇にすると、そそくさとキッチンへと戻った。
そんな俺を見て、背後から
「フフ…相変わらず照れ屋さんですね」
なんて、長谷川の言葉が聞こえて来て、こんなもん誰だって恥ずかしいだろ!と、心の中で叫ぶ。
ルール、その一つが先ほどの‘おかえりのチュー,で、因みに‘おやすみのチュー,と‘おはようのチュー,との3点セットになっている。
お気付きだろうが、もちろん長谷川が勝手に作ったルールだ。
何故、不本意ながらもそのルールに従っているのかと言うと、『毎日裸エプロンでお出迎えするのと、キスをするのどっちがいいですか?』なんて言われたら、後者を選ぶに決まってる。
「お風呂沸いてますけど、ご飯からにしますか?」
「ええ、そうします」
これも、ルールその2。
-夕飯は出来るだけ一緒に食べる-
俺が大神家に執事として来た事で、それぞれの仕事の負担が軽減された今、交互に仕事を早く上がったり出来る様になった。
坊ちゃん達を寝付かせる仕事も、奥様の手が空いている時には、奥様がベッドで童話の読み聞かせをしながら寝付かせてくれる為、21時頃には屋敷を出て、プライベートな時間を持てる様になった。
今日は俺が先に帰って来て、お風呂を入れて夕飯の準備をした。
こんな時間に夕飯?と、思うだろうが、俺の作った料理を一緒に食べたいと言う長谷川たっての希望なのだ。
まったく…物好きだよな。
今まで通り、屋敷で食べれば腕の良いシェフの美味しいご飯が食べられるのに、俺の作る一般的な家庭料理が食べたいなんて…
因みに今日は、肉じゃがと、冷奴とお味噌汁。
「美味しい…ですか?」
「とても美味しいです」
まぁ、なんだかんだ満面の笑みでそう言われると、嬉しいんだけど。
「へへ…良かった」
執事になる前は、一人暮らしが長かったから、腕にはそれなりに自信はあったけど、まさかこんな理由で一人暮らしやってて良かったと思える日が来るなんて、思っても見なかった。
もう少しレパートリー増やさないとな…なんて考えたりする辺り俺だって、相当な物好きに違いない。
そして、3つ目のルール。
これは唯一、俺が作ったルールで…
「ふぅ…」
お風呂から上がって、寝室に向かうと、俺より先にベッドに入って本を読む長谷川の姿。
そっと掛け布団をめくって、俺を隣へと招き入れる。
「どうぞ」
「おじゃまします…」
布団に潜り込んで、再び本を読み始める長谷川の顔を見上げた。
「長谷川さんって、本当に本好きですよね」
しかも難しそうな文学系とか、英語だらけの本とか…俺だったら、数秒で眠くなっちゃいそうな本ばかりで、いつも感心する。
でも、集中すると、まるで俺の事見えて無いみたいに、無口になるんだよな。真剣な顔もいいけど…
「ええ。フフ…退屈ですか?」
「え?」
「構って欲しそうな顔してます」
長谷川はそう言って、本をパタンと両手で閉じると、眼鏡を外して、俺に向かい合う様にして布団に潜り込んだ。
「そ…そんな事無いです」
「そうでしょうか?」
長谷川は意地悪な笑みを浮かべながらそう言った。
「…もう読書の邪魔はしませんから、心おきなく続きを読んで下さい。俺は先に寝ます!
」
俺は照れ隠しにそう吐き捨てると、長谷川に背を向けた。
「羽山さん。おやすみのキスがまだですよ」
すぐさま長谷川の吐息が耳に掛かり、くすぐったくて身を捩りながら渋々長谷川の方に向き直ると、ちょん…と、頬に小さく触れるだけのキスをした。
「おやすみなさい…」
そう呟いて、直ぐに背を向け様とすると、長谷川に肩を引き寄せられて、唇を塞がれた。
「っ…ん」
手のひらは俺の頭を撫でると、その指先は優しく、髪を梳きながら首筋に辿り着いた。
俺の快感を引き出す様に、くすぐられ、身体が熱を帯びる。
「ん…ぅ…っ」
口内を味わう様な舌の動きに、俺の舌先は絡め取られ、次第に激しくなって行く…
それはもう、おやすみのキスなんて、軽い物では無く、これから始まる営みを連想させる程の深い口付け。
「はぁ…っ…あの…するんですか?」
ようやく唇が離れて、俯きながらそう問いかけると、長谷川が俺の頬を撫でた。
「嫌ですか?」
「だって昨日も…」
した。
昨日は長谷川が何処からとも無く仕入れて来たアワアワの入浴剤を使うのに「別々に入ったら泡が無くなってしまいますので、一緒に入りましょう」とか言って、まんまと長谷川の策略に乗せられて、そのまま…
今日もしたら、今週3回目だ…
「フフ…冗談ですよ。残りの1回は大事に取っておきます」
あと1回…
そう。3つ目のルールというのは、一週間にするセックスの回数の事なのだ。
一緒に暮らし始めてすぐ、長谷川は毎晩の様に俺を抱こうとした。俺はその度にほだされて、結局最後には長谷川の腕の中で、啼かされた。
流石に体力が持たないと、俺は長谷川にこのルールを言い渡した。
-1週間に3回まで-
そう言うと長谷川は、「それはつまり、3回は私にシて欲しいと言う事ですよね?それはそれでなかなか…萌えますね」とか「では、1回1回を大事にしなくてはいけませんね」なんて、怪しげにニヤリと笑いながら、承諾した。
それからは、このルールを守ってくれてはいるけれど…
「お休みなさい…良い夢を」
長谷川の唇が俺のおでこに優しく触れてチュ…と、音を立て離れると、長谷川はゆっくりと瞼を閉じた。
「おやすみ…なさい」
俺は、長谷川につられる様にそう呟いたけど心中は穏やかじゃない。
自分から、あんなキス仕掛けて来た癖に…
先程の激しいキスのせいで、火照った俺の身体の熱は、行き場を無くし、身体の奥深くで、次に解放される時をじっと待ち侘びる。
焦らされるだけ焦らされて、次に抱かれる時、抑えていたその熱が解放され、淫らに自ら長谷川を求めて…
俺は長谷川に抱かれる悦びを嫌と言う程この身体に思い知らされるだろう。
きっとこれも、長谷川の策略だ。
悔しいけど、まんまと、その策略に乗せられる事が、嫌じゃ無い…
俺はきっと、この夏の暑さと、甘い日々に頭がのぼせてしまったんだろう…
「…」
ふと、触れてしまった長谷川の手から、一瞬手を離したけど、再び触れる位置に手を戻した。
ほんのりと伝わる長谷川の体温を感じながら俺は、ゆっくりと瞼を閉じる…
おやすみなさい修司さん。
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