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そして…
「こっちは8匹の大家族ですから、賑やかにしたいですね」
「はい。ビー玉と水草はOKです」
俺達の部屋の金魚鉢よりも、だいぶ大きめな水槽に、小石やビー玉を敷き詰めていると…
「これも入れる!」
「え…それはちょっと、入れない方が…って、坊ちゃん⁉︎」
-ポチャンー
と音がして、アキラ坊ちゃんが水槽の中に入れたのは何と、ティラノサウルス…のフィギュア。
昨日、みんなで頑張ってゲットした物だし、金魚と一緒に入れて、夏の思い出にしたいのも分かるけど…
「金魚さんがビックリしちゃいますよ。やっぱり出した方が…」
俺が、水槽の中に、手を入れ様とすると、長谷川が俺の手を制止した。
「いや…なかなか良いかもしれません。ステゴサウルスもぜひ一緒に…」
「ちょっと、長谷川さんまで、悪ノリしないで下さい!」
「わーい入れちゃえ!」
坊ちゃん達は長谷川の言葉に、ステゴザウルスのフィギュアまで取り出し、水槽の中に沈めた。
「えー⁉︎ちょ…あーあー」
穏やかな小川の中をイメージしてたのに、これじゃ白亜紀の森の中だよ…
「では、金魚を入れましょう」
水槽の中に金魚が、泳ぎ出す。
「あ…」
あれ?何か…いいかも。
目の前に広がったのは、何とも幻想的な光景だった。まるで、空の上を金魚が飛んでるみたいだ。
「ホラ、悪く無いでしょう?」
「ええ。坊ちゃん達の発想には驚かされます」
「……」
ステゴサウルスを入れる提案を褒められ無かったのが不満だったのか、長谷川は無言で、遠い目をした。
「はいはい、長谷川さんも目の付け所がいいですねー」
そう言うと、機嫌が直ったのか、長谷川はニコリと微笑んだ。
もう。変な所子供なんだからな、この人は…
でも、そう言う所、ちょっと可愛いとか思ってしまうのが厄介だよ本当。
そんな事を考えて居ると、急に顔が熱くなって来て、照れ隠しに水槽の前にしゃがみ込むと
「あ…羽山、首の後ろ、どうしたの?」
「え…?あ、あのこれは、昨日蚊に刺されてですね…あははは」
思わず、首の後ろに手を回して、ポリポリと掻く仕草をして見せた。
同時に昨夜の事を思い出してしまう。いや、本当にココは蚊に刺されたんだから、別に恥ずかしがる必要は…
「あ、横の方も赤くなってる」
え…?
坊ちゃんにそう言われて、慌てて水槽に首筋を映して確認すると、そこには確かにポツリと赤い跡が付いていた。
でもこれは蚊に刺された跡じゃなくて…
「それも、蚊に刺されたんですよね?羽山さん」
俺が返事に困っていると、長谷川が素知らぬ顔でそう言った。
「ええ!それはもう、ものすごく‘大きな,蚊に」
俺は、坊ちゃん達にこれ以上突っ込まれ無い様に首筋を抑えながら立ち上がった。
「っ…気付いてたんなら言って下さいよ、もう。て、言うかどさくさに紛れて、こんな所も吸ってたんですか!」
坊ちゃん達が再び水槽に夢中になったのを確認すると、長谷川を恨めしく睨みながら、小声でそう言った。
「すいません。いっその事、本当にヴァンパイアになって、貴方の血を吸ってしまえたらいいのにと思ってしまったもので…」
「どうしてそんな事…」
「二人共にヴァンパイアになれば、永遠を誓って、ずっと一緒にいられるでしょう?」
長谷川はそう言って微笑むと、俺の首筋を撫でた。
ずっと一緒に…
それは、俺が昨夜星に願った言葉と同じ。
「ヴァンパイアなんかにならなくても、俺は一緒にいますよ、ずっと…」
俺は、長谷川を真っ直ぐに見つめながらそう言った。
「ええ…」
長谷川も、真っ直ぐ俺を見つめた。
「あ、でもちょっと、ヴァンパイア姿の長谷川さん、見てみたかったかも…凄く似合いそうだし、ちょっと残念です」
黒いマントに、白い牙…想像しただけでも似合いすぎる。
「見られますよ」
「へっ?」
「8月が終わり9月が来て、10月になれば…何がありますか?」
10月には…
「あ…ハロウィン…」
「楽しみにしていて下さいね。フフ…私も楽しみです。貴方が、フワフワの耳と、尻尾をつけている姿…」
は?
「長谷川さん。何か、変な事企んでるでしょう?」
絶対俺の事、狼男にするつもりだ。
「変な事を企んでいるなんて、人聞きの悪い。‘楽しい事を計画,しているんですよ」
「そう言うのを、物は言いようっていうんですよ、まったく…」
でも…きっと楽しいだろうな。
坊ちゃん達は、双子のお化けか何かか…小ちゃな魔法使いも可愛いかも。
長谷川は、吸血鬼で、俺は狼男。
敵対する種族同士、惹かれては行けない相手を好きになったりして…
あれ?そう言えば、狼男が吸血鬼に血吸われたらどうなるんだろう?永遠って誓えるのかな?
って…俺、何考えてんだよ⁉︎狼男のカッコで血吸われて、永遠誓う気満々じゃないか!
「羽山さん。顔、真っ赤ですよ」
「べ、別に何でもないです!」
「顔が赤くなるほど、何かイケナイ事でも考えていたんですか?」
ギクッ!
長谷川に耳元でそう言われて、思わずビクリと身を震わせた。
「俺だって!…楽しい事を計画してただけです…」
「フフ…そう言う事にしておきます」
長谷川は、そう言って俺の頬に唇を寄せて…
「長谷川さ…」
ふと、視線を落とすと…
いつの間にか、そんな俺達の姿をアキラ坊ちゃんとユキト坊ちゃんが、キラキラした瞳で見つめていた。
「あれ?キスしないの?」
「しないの?」
う…
「坊ちゃん!」
「おやおや…」
坊ちゃん達の恐ろしくも無邪気な笑顔に、顔を見合わせ笑う。
大神家の穏やかな日常は、きっとずっとこんな感じだ。
夏が終わり、秋が来て、
秋が終わり、冬が来る。
冬が終わり、春が来て、
春が終われば又、夏が来る…
本当の意味での永遠なんて、無いのかも知れないけど、限りなく永遠に近い時を共に…
貴方と。
-end-
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