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2009年2月16日 軽い異変
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「おはよう、旭」
制服に着替えてリビングに行くと、母さんが我が家の朝食の定番である目玉焼きをテーブルに並べていた。
「おはよう、母さん」
「今日は起きるのが早いわね、珍しいこと」
「なんかねぇ、目覚ましが鳴る前に起きちゃったんだ」
「そう…なら今日は雪が降るかも知れないわね。いや降るでしょうね。絶対」
「…昨日の予報では言ってなかったよ」
母さんがコーヒーを淹れながらちょっと意地悪を言う。
というか、絶対って……確定ですか…。
けど僕は何も言えないので、悔しいが母さんから視線を逸らすだけにしておいた。
確かにこの時間にテーブルに着いてる僕は本当に特別だ(奇跡と言ってもいいかも)
いつもはスムーズにセットしてある目覚ましを3・4回鳴らし…嘘です+4・5回かな?鳴らして起きるから、実はこんなにゆっくりと朝を過ごすのは珍しい。
夏は起きれるんだけどね、冬は寒いから無理なんだよね。
母さんはコーヒーを僕の前に置くと、自分もコーヒーを片手に新聞を読み始めた。
コーヒーに新聞、なんてどこの中年おっさんやねんっ、って手振りを付けてツッコミたくなるけど、母さんがすると何故かとても優雅に見えてしまう。
今年43歳になる母さんは、息子の僕が言うのもなんだが綺麗な人だ(他人が見たら30代前半、ちょっと頑張れば20代後半に見えると思う)
43歳には見えないスラリとした体形、でも出る所はしっかり出ていて、ビシッとしたスーツから出る足はつい触りたくなっちゃう☆
(これは僕のセリフではありません。幼馴染ですので誤解しない様にっ!!)
恐らく初めて会った人なら、こんな綺麗な女性に高校生になる息子がいるとは思いもしないだろう。
母さんにお礼を言ってカップを手に取り、淹れてくれたコーヒーの香りを味わった。
母さんのコーヒー好きの影響か、僕はこの年齢では珍しくブラック派である (ちなみに僕はピチピチの高校二年生です!!)
時たまカフェオレとかも飲みたくなる事もあるけど、やっぱりブラックの方が後味が良くて、気分がすっきりする様な気がするので好きのなのだ。
特に母さんが淹れてくれたコーヒーは豆を挽くやつなので、めちゃめちゃ美味しい
一回飲んじゃうと、簡単には缶コーヒーに手が出せなくなります
まぁ、缶コーヒーは缶コーヒで美味しいから、たま~に飲みたくもなるんだけどねぇ
ある程度香りを味わった僕は、そっとコーヒーを口に含む。うん、おいしっ…
「つっ…」
けど、コーヒーを一口飲んだ瞬間、首に痛みが走った (またかっ!?)
「どうしたの?」
思わず顔を顰め、首を擦る僕に気が付いた母さんが、首を傾げながら聞いてくる。
目に浮かんだ涙のせいで若干掠れて見える母さんに、とりあえず大丈夫と返す
「いつものやつだよ。また寝違えたみたい…」
慣れれば大丈夫かな?なんて思ってまたコーヒーを飲むが、コーヒーが喉を通る度に首が痛む。
そのせいか美味しい筈のコーヒーの味が分からないなんて…本当に重症だな、おい。
まるで罰ゲームとでもいうかの様な表情でコーヒーを飲む僕に、母さんは心配そうに手を伸ばしてきた。
「いつもの寝違えたにしては随分痛そうじゃない?」
「う~ん…そうかも?」
僕の言葉に、母さんは眉を顰めた。
喜怒哀楽が始終顔に出る僕とは反対に、母さんは常にポーカーフェイス(ほぼ無表情だ)
といっても感情が無いとかではないから、ちゃんと笑ったり、怒ったりと表情には出る事はあるわけで、ただそれは少ないというだけの話なんだけどね。
けど首にそっと触れる母さんは珍しい事に心配そうな表情で僕を見つめてる。
そんな母さんの表情を見たくなくて、再度大丈夫だよって言おうとした瞬間、
「何これ…こぶ…?」
「痛ッ」
母さんが強く押した瞬間、首に痛みが走る
というか、激痛ですよっ!!
「イタタタタタタッ、痛いよ母さんっっ」
痛いと叫んでいる僕を無視し、感触を確かめる様にこぶを何度も押す母さんを若干涙目で睨んでしまったのは仕方が無いと思う。
取り合えず本当に痛いので、僕は母さんの手を軽く払いのける。
「とりあえず、息子が痛いって言ってるんだから止めてよ、母さんっ」
「まぁ、そうね」
「てか、本当にこぶなんてある?朝触った時はこぶなんて無かったよ?」
「擦ってるから分からないのよ。ちゃんと触ってみなさい」
痛みが引く訳では無いが思わず首を擦る僕に、母さんはこの辺よと自分の首を指差した。
とりあえず母さんの言う通りに確認してみようと思い、母さんが指し示す辺りに手を当ててみる。
けど痛いのは嫌なので慎重にそぉっと触れてみる。
「……あれ……?」
確かに、ちょっとした様なこぶ?、しこりみたいな物があった。
全然気が付かなかった…
今度はもうちょっと強く触ってみれば、ぴりっと軽い痛みが走る。
どうやらこれが痛みの原因の様だ。
なんだろ、これ?
ふと視線を感じ顔を上げると、何故か母さんが僕を睨んでいた。
「ど、どうしたの、母さん?」
今日の母さんは表情がよく変わる。
僕の早起きと同じ位珍しい、やっぱり今日は雪が降るかもしれない。
「…旭あんた首が痛いのよね?」
「見れば分かるでしょ」
というか、自分で痛がらせておいて何を言っているのだ、母さん
「旭…あんた今日学校休みなさい」
「へっ!?」
そしていきなり何を言うんですか、母さんっ!
「それで近くの東雲大学病院に行ってきなさい。学校にはあたしが連絡しておくから」
「病院?なんで??」
本当に何を言ってるんですか、母さんっ!?
「接骨院じゃなくて大学病院?」
「だっておかしいでしょ。寝違えたにしては痛みが酷いし、変なこぶもある、それに……」
母さんは何かを考え込む様に眉を寄せ、綺麗な指先を唇に当て呟く(これは母さんが何かを考えている時にする癖だ)
「それに?」
「とにかく、行ってきなさい。」
母さんは考えるのを止めたのか、カップに指を絡め幾分冷めたコーヒーを口に含む。
どうやら母さんの中では僕は学校を休んで行くことは決定してるみたいだけど…僕は行きたいんだよね、学校。
「…大袈裟だよ、母さん」
「大袈裟でも何でもいいから。行ってきなさい。」
「え~~~でも学校休むのやだぁ」
「どうしたの、あんた。そんな勉強大好きキャラじゃないでしょ」
「そうだけど、そうじゃないんだよ。今日は結衣ちゃんとデートする約束してるから」
可愛くはないけど、口を尖らせて言ってみる
結衣ちゃんとは同じクラスの子で、校内一可愛いと言われている女の子。
見た目は強気系、けどそんなイメージとは違い高飛車とかじゃなくて、優しくておっとりしている、天然ちゃん。
ちなみに今いい感じになってます。
結衣ちゃんとは同じ図書委員で知り合って、ながぁ~い時間をかけて友情を深めて、ようやく昨日デートにお誘いする事が出来たのだ
「やっと誘えたんだよぉ。もうこんなチャンスは無いんだよぉ」
「文句は受けない。行って来る」
「えぇ~~~~~~~」
「……返事は?」
「……はぁ~い…」
母さんがギロリ、と効果音が付きそうな程怖い顔で睨んできたので、僕は若干間を開けてから大人しく返事をした。
母さんは一度決めたら、どんな事があっても意見を変えない人なので、何言っても無駄なんです。
なので今日は諦めて、学校を休みます。
とりあえず、結衣ちゃんにはごめんねメール、もしくは電話をしておこう。
きっと優しい結衣ちゃんなら許してくれる筈
それで申し訳なく思ってる僕に「また、今度行こうね?」と言ってくれる…筈である。
でも…
『自分から誘ってきたくせに、キャンセルするって事は、覚悟してるのよね?』
とかいうセリフとキレの良い蹴りを僕に投げつけてきたらどうしよう
……まぁ、あの結衣ちゃんがする筈など絶対に無いから絶対大丈夫だろう(大事な事なので絶対を2回言ってみました)
そんな事する女の子は僕の幼馴染だけで一人で十分だ。けど…
「行きたかったなぁ」
僕は小さく呟いて、カップに残ったコーヒーを一気に飲み干した。
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