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2009年2月17日 検査結果
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2009年2月17日(曇)
「今時の大学病院は大きいのね…」
母さんは大学病院の入り口で建物を見上げながら呟いた。
その行動は、まるで初めて東京に来た人が高い建物に驚いてキョロキョロと辺りを見渡す、といった様な反応と同じ物で…隣にいる僕はちょっと恥ずかしかった。
まぁ、ですが、ここだけの話。僕もそれ昨日やったけどね…傍から見ると恥ずかしいのですよ、母さん。
「…母さん、それちょっと恥ずかしいよ?」
けど自分の事は棚に上げて取りあえず母さんに言ってみた。けど返ってきた反応は
「何を言ってるの、あんたもやったでしょ」
冷ややかな母さんの視線と言葉…何で分かったんですか…
?
昨日、綾川先生と別れてから1時間と18分28秒後に (細か過ぎるだろっ(笑))、検査結果が出たとちょっと巨乳な看護士さんに呼ばれたのだが、何故かその時には詳しい事は教えてもらえず「明日親御さんと一緒に来て下さいね」と言われてしまったのだ。
その事を電話で母さんに伝えれば「分かったわ」と一言のみで、すぐに電話を切られてしまった。
…その言葉にちょっと傷ついたのはここだけの話。
仕事休まないといけないから機嫌悪くなるのは分かりますけど、そんなに露骨に言わないで下さい…
そして嫌々だったが今日も学校を休み、母さんと二人で東雲大学病院に来たのだった。
ちなみに昨日のあの後、愛しい結衣ちゃんからメールがきました(よかったぁぁ)
その内容は、僕の体調を心配しているという事と僕の体調が良くなったら今度こそ遊びに行こうというもであった。
勿論すぐさま結衣ちゃんに返信しましたよ!!
ありがとーって!!
?
「用意が出来ましたら呼びますので、少々お待ち下さい」
受付で昨日最後に会ったちょっと巨乳な看護士さんにそう言われて、僕と母さんは待合室の椅子に腰掛ける。
今日はあまり時間がかからないからと言われていたので、僕も母さんも暇つぶし用の本は持ってこなかった。
けど暇だったので僕は母さんに話しかける事に
「そういえば母さん、今日は仕事休んでくれたの?」
「…えぇ」
「でも母さん。俺が電話したの夕方だったけど、大丈夫だったの?通訳って簡単に休めないんでしょ?代わりの人はいたの?」
僕の母さんは通訳の仕事をしている。これは自慢だが母さんの名前は業界ではけっこー有名らしい
どれくらいかと言うと…大統領の通訳や超有名なハリウッドスターの通訳なんかもする事もある位、有名である(勿論母さんご指名でだ)
だから母さんが休暇を取れる事は本当に珍しいのである。突然の休暇なんて特に
「…朝の時点で代わりをお願いしてたから、大丈夫だったわ」
「へ~そうなんだ~…って、あれ、朝の時点で…?」
当たり前かの様にさらりと言った母さんだったが、僕は母さんの言葉に驚いた
「何で…朝の時点に言ったの?まさか…呼び出されるって分かってたとか?」
…なんて、まさかね。
自分で考えてそれを否定する
結局は呼び出されてしまった訳だが、普通に考えてこんな程度で呼び出されるとは思わなかった筈だ。
という事で、なんてねぇ?っと冗談だった風に言おうと母さんを見れば???
「母さん…?」
母さんは僕を見ていた。
いや、凝視していた。
傍から見れば何時もの無表情、けれど息子である僕は分かった。
母さんは…僕が言った言葉に対して固まったのだ。
「母さん…?どうしたの?」
考えてみれば昨日と今日、母さんの様子は変だった。
僕の知ってる母さんは感情を滅多に表情
(かお)に出さない。
いや、正確には出せない人だけど。
つまり母さんが表情(かお)に出す時は…良いも悪いも関係なく、母さんが表情にだせるほどの事が何かあった時なのだ。
そうすると、昨日母さんが僕を無理やり休ませて病院に来させたのも…なにかしら母さんに引っかかる事があったのからかも知れない。
普段の僕なら…そんな事考えないのだけれども、けれどそう考えてしまう程、母さんの行動は変なのだ
「…母さん…?」
「何?」
少しの間を作り再び母さんに問いかけてみれば…母さんはいつもの表情に戻っていた。
先程の表情が嘘だったかの様に…。
「母さん?」
「聞こえてるわ、何?」
確かめようと、もう一度呼んでみるが、やっぱり……いつもの母さんに、戻っている?
「どうしたの?」
「ううん、やっぱ何でもない。」
聞く事ド忘れしたと笑えば、母さんはいつもの無表情で呆れていた。
『大変お待たせいたしました。朝霧旭さん、朝霧旭さん。受付までお越し下さい』
「あっ、呼ばれた。は?い!!」
アナウンスが僕の名前を呼んだので、僕は母さんとの変な空気を壊す為にわざとテンションを上げながら返事をする。
ちゃっちゃと終わらせて、早く帰りたい。そして帰って久し振りに母さんとの夕食を楽しみたい。
そして明日こそ学校に行って、結衣ちゃんとデートをするのだ。
明日の事を考えると、ちょっと嬉しくなって、さっきの変な空気を忘れる事が出来た。
そんな時、病院の雑音に紛れて聞こえたのだ
母さんの小さな、本当に聞こえたのか分から無い程の小さな声。
母さんの言葉に、僕は踏み出そうとした足が止まってしまった。
「???…貴臣(たかおみ)さんの二の前にはさせないわ…」
「朝霧さ?ん」
先程のちょっと巨乳な看護士さんが現れ、僕達に向かって呼びかける。
どうやらわざわざ呼びに来てくれたらしい。
「行くわよ」
母さんは音もなく立ち上がると僕を追い越し、ちょっと巨乳な看護士さんの方に歩いて行った。
母さんの背中が見えた瞬間、僕は我に返り慌てて母さんを追いかける。
ちょっと巨乳な看護士さんに会釈する母さんを倣って、僕も同じ様に会釈した。
その時、ちらりと母さんの顔を盗み見る。
やはり母さんの表情はいつもと変わらない。
けれど、母さんが僕を追い越した時。
その時の母さんの表情は少しだけ、やはり強張っていた…気がした。
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