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2009年2月17日 検査結果
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「初めまして、担当医の綾川です」
カルテを片手に微笑みながら軽く会釈をする綾川先生に、母さんと僕は立ち上がり揃って頭を下げた。
目の前には眼鏡に泣き黒子がセクシーな綾川麗子先生。現在27歳。嬉しい事に独身。
そしてそんなあなたに朗報です!!何と綾川先生、現在、現在彼氏無しなのですっ!!
何でもお医者様は当直とか患者の容態が急変とかで病院につきっきりになってしまう事が多いらしく、彼氏を作る機会も時間も無いのだと綾川先生が言っていました!
でもモテますよね?と聞いたら、彼氏が出来てもゆっくりとデートを楽しむ時間も無いので、彼の方から別れを切り出されてしまい、結局は別れてしまうのがだいたいのパターンらしい。
結婚はしたいんだけどねぇ、苦笑している綾川先生に俺はキュンキュンしていました。
ほんと馬鹿だなぁ、今までの彼氏さん達。こんな可愛いらしい綾川先生を捨てちゃってさ?
まぁ……でもこれで分かった。
俺にもチャンスがあるという事を(…ふふふふふ)
綾川先生と僕は担当医と患者な関係、なんてチャンスのある (美味しい) 関係だ!!
まぁ、ちょっとネックがあるとすれば…年の差だろうけど(僕が十六歳、綾川先生が二十七歳。つまり十一歳差)
だけど十一歳差なんて、大人になっちゃえば気にする事も無いだろうし、ここは俺の腕の見せどこっ…
【ガンッッ】(いや、ゴンッかもしれない)
「つっぅ…????」
…って考えていたら、母さんに思いっきり殴られました。
どうやら顔がにやけていたらしいです…済みませんでしたぁ。
けど、殴らなくてもいいじゃないですかっ!
けど……今の僕は痛くない!
だって今の僕には…綾川先生(女神様)がいるっ!!
殴られた頭をおさえながらチラリと綾川先生を見れば、いきなり母さんに殴られた僕を心配いて…いなかった…。
そこにいるのは心配そうに俺を見る綾川先生…ではなく…クスクスと可愛らしく笑っている綾川先生であった。
おの、その、その表情も勿論可愛いのですが…綾川先生?
自分で言うのもなんだが、僕ってチョー可哀想ではないですか?可哀想だと思いますよね?可哀想なんですよっ!
だから笑わないで下さいっっ!!!!
だが内心願っても、綾川先生は笑い続けている、し…。
…綾川先生には分からなくても、せめて皆様だけは…きっと僕の気持ちを分かってくれると信じてますっ!!(…何か言ってて虚しいかも)
僕は…元の凛々しい表情(かお)に戻し (母さんが聞いたら鼻で笑われそうだ)、綾川先生に向き直った。
?
「今日は良い天気ですね?」
「………えぇ、そうですね」
綾川先生が書類やら何やらをテーブルに広げながら僕達に話しかけてきたので、母さんはその言葉に軽く相槌をうつ。
一見、他愛もない会話であるが……えっ!?ちょっと待って下さい、なんで天気の話ですか?というか綾川先生っ、今日曇りなんですけど!!窓見てくださいっ、窓っ!!雨か雪が降りそうでしょ!!ていうか母さんも、めんどくさらずに訂正してよ!!
「天気が良くてもお医者様だと大変ですね。洗濯物とかも中々干せませんものね…」
「そうですねぇ、洗濯物もそうですけど…今は布団を干したいんです。けど中々干せなくて…」
「まぁ…それは本当に大変ですね…」
はぁ、と悲しげにため息を付く綾川先生に、母さんはまたしても相槌をうった。
……もういいや。ツッコミがめんどくさい…
僕も母さんと同じ様に相槌をうつことはちょっと出来ないが、傍観しておくことに…早く終わらないだろうか…
???
この様な会話がこの後、ちょっと続いた。
僕はこの時気が付かなかったのだが、綾川先生と母さんはわざとこの会話を続けていたらしい。
母さんは僕の病状に薄々気が付いていたので、それを受け止める覚悟を決める為に。
綾川先生は母さんの恐怖に気が付いていてそれを和らげる為に…。
まぁ、話してる内容は全くあっていなかったのだけど…必要なことだったみたい。
???
「綾川せぇんせぇ?」
間違っている天気の話、乾かない布団の話、消費税増税の話、最近人気度で柴犬に負けているチワワの話に、綾川先生が嫌いなゴーヤの話、総理大臣交代の話、チーズケーキがチョー美味しいお店の話。それからそれから……。
…待つ事が苦手な僕が良くここまで待てたと思います。けど、もう無理です。
「もう二十分も時間過ぎちゃったんですけど…お話はしなくて良いんですか?」
「あら…もうこんなに経ってたのね…」
綾川先生は腕時計に目をやると、何故か感心した様に頷いている。
…えっ!?気づいて無かったかんじですか?…もしかして綾川先生って…天然?
見た目お姉様系なのに、もしかしなくても天然さんですか?
「綾川先生」
母さんの呼びかけに、綾川先生は腕時計から顔をあげると母さんに顔を向けた。
「私は大丈夫です。息子も見ての通りちょっと馬鹿ですから…大丈夫です。」
「馬鹿って…母さん、それひどくない?」
「でも事実でしょ?」
俺がぷくっ、と頬を膨らませて言うと、母さんは微かに微笑みながらそっと俺の頭を撫でた。
(…ちょっと待って下さい、俺もう高校生ですよ、母さんっ!!頭撫でるとか恥ずかしいですからっ!!)
いつもの僕なら軽く冗談を言って、母さんの手を払いのけただろう。けど母さんの嬉しそうな表情(かお)を見て、何もできなくなってしまった。
だから僕は心に浮かんだ気持ちを奥底に押し込めて、僕はいつもの笑顔で笑った。
この光景に綾川先生は安心したのか、そっと微笑むと小さく深呼吸し
「では、…説明させて頂きますね」
そう言った綾川先生の表情は医者の表情(かお
であった
僕は綾川先生の言葉に自然と姿勢を正す。
???
僕はこの瞬間を忘れないだろうーーーー
???
「昨日の検査結果が出ました。その結果、旭君はガンだという事が判明致しました」
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