アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2009年2月17日 検査結果
-
???
綾川先生に病名を告げられたあの時の僕は、特に何も思わず、取り乱す、呆然とするといった風にはならなかった。
だって日常は変わらない、変わるはずなど無いと思っていたから。
だからガンだって言われても、まぁ治るだろうと思った。
それこそ楽観的に。
あの時の僕は何の根拠も無く、そう思っていた。
だけど、そう思っていたのに、
綾川先生の言葉は僕の頭の中で何度も何度も鳴り響いていた。
???
「病名は上咽頭(じょういんとう)ガンと言います」
上咽頭ガン。聞いた事が無いその病気に僕は首を傾げる (可愛くないけど)
「上咽頭ガンとは、鼻の奥の、気道の上の方に出来る悪性腫瘍の事を言います」
綾川先生はいくつかの書類の中からレントゲン写真を取り出すと、光のボードに貼り、指で指し示した。
確かに綾川先生が腫瘍だと指し示す場所には、白い影が見えた。
「MRIで調べた結果、腫瘍の大きさは縦59ミリ、横43ミリ、という大きさでした」
けど具体的に大きさを教えてもらったはいいのだが、実際どれ位からが大きいのかよく分からないのです。
「綾川先生?それって小さいんですか?それとも大きいんですか?」
大きさとしてみれば、一センチにも満たない程の小さな腫瘍。
けど腫瘍(あれ)が首の辺りにあるとすると…ちょっと怖いかも知れないなぁ。
「残念な事に小さいとは言えません。そうですね…大きい部類の3・4歩手前っていう感じの大きさですね」
「ーーーそうですか…」
けど帰ってきた返答は…分かり易い様で、ちょっと分かりにくい説明であった…
「このガンにはいくつかの特徴があります。1つは早期発見が難しいという事です。この上咽頭ガンはリンパ節に転移してから首のしこりが出来るので、旭君の様に首のしこりに気が付いてから病院に来るっていうケースが多いのが現状です」
「つまり…しこりを発見した頃には既に腫瘍は大きくなっていて、さらには悪性になってるって事ですか?」
「そうなっている確率は高いです」
綾川先生は僕の質問に軽く頷くと、話を続ける。
「また、上咽頭ガンは脳に近い部分に腫瘍が出来るので、残念な事に手術をする事が出来ません。ですので、旭君の治療は放射線と抗がん剤を使用した化学放射線療法という治療で行いたいと思います。」
化学、放射線療法…?
なんか…嫌なフラグが立ってる気がする。
「…綾川先生、その話から察するに、もしかして僕って…入院しないといけない…?」
「そうですね、即入院しないといけませんね」
恐る恐る綾川先生に聞けば…綾川先生はにっこりと笑って即答して下さいました。
「その入院って、2・3日ですむのかなぁ…なんて……」
えへっ、とちょっと可愛らしく首を傾げてみれば、綾川先生も僕の真似してちょこんと首を傾げ笑った。
「無理かなぁ」
そうですよねぇ、ドラマでも2・3日で治りましたーっていう話なんて無いですしね…
ですがこれで決定しました。
結衣ちゃんとのデートは当分無理 (泣)
ととと、こんな大事な場面そんな事を考えていたら、また母さんに殴られるっ!
と思ってちょっと焦って母さんを見れば…あれっ?…僕の事なんて全く見ていなかった。
「…綾川先生、聞きたい事があるのですが宜しいでしょうか?」
すると今まで黙っていた母さんが、口を開く
「はい、何でしょうか」
「息子が上咽頭ガンになった原因は何なのでしょうか」
「…原因ですか?」
「前に知人から、ガンは遺伝で発病する病気だと聞きました。もしかして息子は…遺伝が原因で発病したのではないかと…思いまして」
確かに僕も前にテレビで言っていたのを聞いた事がある気がする。
だが、遺伝というからには僕の身内にガンになった人がいるという事だ。
けど母さんの言葉から考えるに、身内、又は僕の親戚にガンになった人がいるのだという事である。
…誰かいたっけ?
残念な事に僕には思い浮かべる事が出来なかった。
しかし綾川先生は母さんの問いに首を振った。
「確かにガンの殆どは遺伝によって発病すると言われています。ですが上咽頭ガンの場合は遺伝よりも他に原因があると言われています。例えば煙草。その為、このガンは喫煙者に多く発病する事があります。」
喫煙?それも原因の1つとは意外だ。
「喫煙…ですか…?でも…多分息子は吸ってないですし、私や息子の周りにも喫煙者はいないと思うのですが…?」
確かに母さんの言う通り、僕の周りには煙草を吸う人間はいない。勿論、僕も吸わな………んっ?ちょっと待って母さん…今、多分って言いました!?
多分って、吸う訳ないじゃんっ、あんな不まずそうで、消費税が無駄に高くてお金がかかる代物、俺は絶対やらないって!!
まぁイケメンな奴が吸ってると、かっこいいなぁ、なんて思う事もあるけど (正直に言えば憧れたりしてるけど)、イケメンで無い僕には似合わない。
つまり僕が煙草を吸う理由が無いのです!!!
はっ!!!
そこである事に気が付く
…もしかして……僕って母さんに信用されてないっ!?
ちょっと悔しくって、不機嫌な表情で母さんを見てみるが、先程と同じく、母さんは綾川先生を見ていて僕を完全に無視していた。
…ひどッ
「煙草の他にもEBウイルスというウイルス感染も原因の1つにあります。ですので、喫煙をしない旭君の様な十代?二十代の若者にも発症する事はあるのです。ガンの原因は検査で知る事は出来ませんので100%とは言えませんが、旭君の周りで喫煙者がいないのなら、ウイルス感染が原因で発病した可能性が高いかも知れません」
「??…そうですか…」
綾川先生の説明に、母さんは普段の表情に戻った…気がした。
「ですがこの上咽頭がん、悪い事ばかりではないのです」
首を傾げる俺に、綾川先生は微笑んだ
「先程、上咽頭ガンは脳の近い所に腫瘍が出来るので手術は出来ないと言いましたが、上咽頭ガンは他のガンとは違って化学放射線療法が効きやすいガンでもあるのです。」
「効きやすいガン?」
「がんの治療方法の一つでもある化学放射線療法はがんによっては効きにくかったり、又は抗がん剤を投与する時間と放射線治療をする時間、つまりタイミングによっても効いたり効かなかったりと方法が難しい治療方法なのです。勿論、化学放射線療法は人によって副作用が出てしまいますし、その治療をするに為にちょっと痛い手術をしないといけませんが、他のがんよりかは治りやすいがんなのです」
…ちょっと痛い手術って言う所が気になったが、綾川先生の言葉に少しだけ安心している自分がいた。
ガンと言えばシリアスストーリーでは上位に名が出る病名である。
そんな僕が持つガンのイメージは、まず治療費が馬鹿高い、次に治療が大変、さらに放射能治療とかの副作用で髪の毛が無くなる、さらにさらに油断するとガンの転移とかでバットエンドに逝く事が多いという物だ
しかし綾川先生の話から今の億の状況を分析すると、病気としてはちょっと大変だけど、頑張れば治りますよ!!って事だと思う。
ですよねっ!?
っていう期待を込めて綾川先生を見れば、タイミングよく綾川先生が微笑んだ。
よしっ、大丈夫だ。
…単純過ぎって?
時々自分でもそう思います(笑)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 11