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【謙光】その言葉が聞きたくて
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「好き」
このたった一言が聞きたくて
どんなに願っただろう
簡単に言える言葉ではないということはわかっている
それが恋人同士でも
謙也の恋人、財前光は素直じゃない
頭を撫でられれば振り払われて、
抱きしめても抵抗し、すぐに離れてしまう
それは拒絶なのではなく、財前なりの照れ隠しなのだ
そんな財前から「好き」という言葉を聞くのが難しいのはわかっている
それでも不安なのだ
財前が本当に謙也が好きなのか
付き合って一ヶ月経つのに、
財前から「好き」という言葉は、聞いたことがないのだから
謙也が財前に告白してときでさえ、財前は「好き」とは言ってくれなかった
謙也が「好き」と伝えたときの、財前の言葉は、
「俺もです」
この日は学校も部活も休みだ
そのため財前が謙也の家に遊びにきている
なにを話すこともなく、財前は漫画を読んでいて、謙也は財前の横顔を見つめていた
「なあ、光」
「なんすか」
「俺のこと好きか?」
「は?何言ってますの。嫌いだったら付き合ってませんわ」
いきなりの問いかけのだから、仕方ないのはあるのだが、やはり財前は「好き」とは言ってくれない
わかっていてもすごく悲しいし、不安になってしまう
女々しいと言われたら、それまでなのかもしれない
でも言葉にしなければ、言葉にしなきゃ、わからないこと、不安になることもたくさんある
だから言って欲しかった
「好き」と。その一言を
謙也は真剣な眼差しで、真っ直ぐ財前を見た
「いや、そうやないんや。あのな、光」
いつもと違う雰囲気を感じ取ったのだろうか、財前はムスッとしつつも、謙也に真っ直ぐ視線を合わせた
「なんすか?」
「あのな…光。俺な…」
言いたいことは決まっているのに、なかなか言葉が出てこない
この状況が財前にどれだけ苛立ちを与えるかわかっていても、言葉が出てこないのだ
「だからなんやねん!」
はよ言えや!と苛々を隠せない口調で言ってきた
「俺な、不安やねん。光が俺のこと本当に好きかどうか」
「……」
沈黙が走る
何か言わなければいけない。それでも言葉が出てこなかった
しばらくして、はあ、と沈黙を破るように、財前の溜息が聞こえた
「なんやねんそれ。訳わからんっすわ…」
「付き合ってから、光、俺のこと好きって言ってくれたことなかったやろ?せやから不安やねん…」
「な…やね…ん」
「ひ…かる?」
「なんやねん…そんなん…謙也さんだって…謙也さん…だって…アホ…鈍感…謙也さんなんて嫌いや…!!!!」
「ひか…る?どないしたん?」
いきなり怒鳴りながら、泣き出した財前に戸惑いを隠せない謙也
状況が全く掴めていなかった
「謙也さんだって…謙也さんだって…告白してくれときから、好きって言ってくれなかったやないですか…俺やって不安だったのに…」
戸惑っていた謙也であったが、財前の言葉にハッとした。
そう財前の言う通り、謙也も財前に告白して以来、「好き」と言ってなかったのだ
自分はなんて馬鹿なんだろう
自分が求めてばかりで…
財前も同じ不安を抱えていたことに気付かなかった
謙也はソッと財前を抱きしめた
いつもなら嫌がることも、いまは素直に受け入れたくれた
「堪忍な、光…気付いてやれんどころか、俺ばかり求めてしもうて…堪忍な…」
「はよ…言えや…」
「え…?」
「はよ言えゆーてんねん! んなこともわからんのか!このドアホ! 鈍感!」
怒鳴る財前に驚きながらも、その言葉が理解でないほど、アホではないし、鈍感でもない
「好きやで…光」
耳元でそっと囁けば、自分の腕の中に埋れながら、少し見えてる耳が真っ赤になっていた
「ホンマアホっすわ…謙也さん
でも…
俺も謙也さんが好きっすわ」
「おん!」
やっと聞けた、その言葉はたった一言なのに、
今までにないくらい幸せにしてくれる
抱きしめていた財前をそっと起こしてやれば、恥ずかしそうな財前の顔
その顔が愛おしくて…愛おしくて…
そっと前髪をあげれば、額に優しくキスをした
この一ヶ月間言えなかった言葉を、
どんなに恥ずかしくたって、これからはちゃんと伝えよう
一ヶ月なかなか言えなかった分まで、これからはたくさん伝えよう
「光!好きや好きや好きやめちゃくちゃだいすき!絶対離さへんからな!」
「謙也さんうざいっすわ。そんなに言われんでもわかってますし」
それに…
「俺やって謙也さんから離さへんし、離す気もないですわ
そんくらい謙也さんのこと、だいすきっすわ」
そう言って、財前が謙也の唇にキスをした
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