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藤間side.
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放課後。
俺は教室まで迎えに来た早坂に連れられて、第一生徒会室とやらに来ている。
着くまでの間、第一生徒会室とか第二生徒会室とかなんたら会とかの説明をされたけど、ややこしいわ細かいわで適当に聞き流した。ご生憎様俺の頭には何も残っていない。
第一生徒会室はカーテンも閉め切っているのか薄暗くて、廊下よりも空気がひやりとしていた。生徒会がほぼ毎日使ってるはずのそこは、まるで廃墟のようだった。
早坂が手探りで見つけたスイッチを押す音が聞こえると、その瞬間パッと部屋が明るくなった。
(うっわ・・・なんだこれ)
明るくなったそこにあったのは、ダンボールや金庫やら。
そういえばさっき、早坂が第一生徒会室は金庫がーとか言ってた気がする。それくらいしか思い出せねぇけど。
金庫は学校側の予算事情か少なくて、ダンボールの山がそこかしこにあった。金庫なんか使うくらいだからそれはそれは大事なものを管理してるんだろうけど、ダンボールが多すぎてそういう場所特有の緊張感はない。
早坂は無言で中央にあるパイプ椅子に座る。ギシ、という音が響いた。
「藤間」
俺を呼ぶ早坂の低い声。目を向けると「座って」と促された。
隣に座るのも変だから、くっつけられた机を挟んで早坂の正面の席に座る。
「他のメンバーがまだ来ないから、来るまで何か面白い話してよ」
「はぁ?」
この俺を暇つぶしに使おうとするとは。しかも面白い話してとか・・・。
「面白い話なんかねぇよ」
そう言うと、早坂はやっぱり表情は変えないが「つまんない」と不貞腐れた。
・・・そういえばこいつ、俺の事怖がんねぇな。大抵の奴はビビるか、面倒ごとに巻き込まれないように俺を避けてるか、なのに。
『君が藤間くん?』
こいつは自分から俺に話しかけてきた。
「・・・お前さ」
「うん?」
「怖くねぇの」
「何が」
「俺が」
「全然」
すまし顔で答える早坂。
本当に怖くないんだろうか。俺は、
「不良、なのに?」
そうだ、俺は。
周りからすれば”不良”で。
怖がられる存在で。
「不良がこの世界にどれくらいいると思ってるの?」
「・・・・は?」
「いちいち怖がってちゃ生きていけないよ」
グラグラと、揺れる。
「自分がしたいことを堂々とやってるだけなのに、どうして世界は冷たい目で見るんだろうね」
それは当たり前だ。”不良”がやることは”悪いこと”で、だから遠巻きに見られて・・・。
「不良も人間なのに」
・・・・・・・あれ?
「”不良”でも、傷付くのに」
―あぁ、そうだ。
きっと俺は傷付いてた。遠巻きに見られること。冷たい目で見られること。
全部、全部。
嫌だった。
俺はやりたいことをやっているだけで、
でもそれは世間的には許されないことで、
”許されないこと”をした人間は、冷たい目で見られて。
それで傷付く”不良”もいるわけで。
この、世界に。
この世界で生きて、どれだけの人が。
どれだけの人が、不良と言われない類の人間なんだろう。
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