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「・・・・・・・・・・」
病室は静かだった。
人がいなくなると、そこはただの白い部屋で。
病院特有の匂いが鼻の奥でツンとする。
少しの寂しさが、僕を襲う。
一体、僕は何を忘れてるんだろう。
どうして思い出せないんだろう。
答えはすぐ近くにありそうなのに。
どうして。
どうして、それでも。
喉元まで来てる何かが、どうしても出てきてくれない。
僕は、何を忘れてる?
何を思い出せない?
僕はどうして、
此処にいるの。
「・・・・・・・・・・・・かいと、」
あぁ、なんだか。
海斗に会いたい。
(海斗side.)
「ん?」
声が聞こえた。
誰かに呼ばれたような気がして、振り向く。そこには誰もいなかった。
(・・・気のせいか)
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
俺が倒れて以来、母さんと父さんは頻繁に帰ってくるようになった。「また倒れたら大変だから」って。そんなことは気にしないで、仕事に集中していいのだけれど。
心配性な母さんの笑顔に、俺は笑って返事をした。
「海斗、今度の休み、映画でも見に行こうか」
「え?」
「映画、好きだっただろ?」
「うん・・・好き、だけど、」
「用事でもあるのか?」
「・・・・・・・・・・・うん。ごめん」
「そうか。謝らなくていい。海斗が空いてる日に、3人で行こうな」
「うん」
優しい、父さんの声。
俺は映画が好きで、子供の頃、よく連れて行ってもらってた。
それを覚えてくれていることが、すごく嬉しい。
家族3人で出かけるなんて、しばらくなかった。だから行けるものなら行きたいけれど、俺には行かなきゃいけない所がある。
なぁ昴。
明日も、行くから。
その時は、ちゃんと、自分の想いを伝えるから。
惜しむ事無く、全て。
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