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海斗side.
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「なぁ海斗、お前どうする?」
「んー・・・どーしよっかなぁー」
ガヤガヤと、騒がしい教室の中。
俺と鎮は二人して机に伏せて、5分に一回はこの会話をしていた。
今は放課後。
教室はすぐになんて帰るわけがない俺達生徒のせいでうるさいくらい騒がしい。
俺としては今すぐ帰って昴に会いに行きたいのだけれど、そうも行かない。
それも、俺には今片付けなくちゃいけないものがあるからだ。
「ってか、まだ2年じゃん・・・進路とかまだ考えなくてもいいよなぁー」
進路希望調査票。
高校2年の後半。それは突然配られた。
まだ2年だから、と、考えたことの無い自分の将来。
自分は高校を卒業して、何になりたいか。
どこに行くか。
どこに行って、何を目指すのか。
何をしたいか。
考えなくちゃいけない、未来のこと。
大学に行った方がいいのだろうが、将来の夢も特に無い。
将来、自分がやりたいこと。
それがわからない今、大学に行くにしてもどこに行けばいいのか決めることができない。
それなら就職しか無いけれど、高校を卒業してすぐ社会に出る、なんて。
いくらイメージしても、どうしても実感が沸かない。
(やりたいこと・・・・・・・・は、あるんだけどなぁ)
やりたいことは、あるんだ。
でもそれは、大学に行っても、就職してもできること。
許可を得ることができれば、すぐにできる。
ということは、ちゃんとどちらか決めなくちゃいけないわけで。
「鎮はどうすんの?」
考えても考えても決まらないから、とりあえず鎮に聞くことにした。
すると、鎮は困ったように眉間に皺を寄せて。
「一応、やりたいことはある」
「え、なに」
「秘密ぅー」
女みたいな声を出してそう答える鎮。
残念だが鎮。お前のその自称女声は、オネエ声にドスのかかったような気色悪い声だ。
「きもい」
「いったい!」
あまりにもきもいから、鎮の顔を思いっきり叩いてやった。そりゃ痛い。
でも、お前の気持ち悪い自称女声を聞いた俺の耳と心のほうが痛い。
「で?やりたいことってなんだよ」
「ゲホッ・・・いや、悪いけどまじでこれは言えない」
「なんで」
「引かれちゃうから」
「お前を引くのとか日常茶飯事だから」
「それでも言えない」
「ケーチ」
「言ってろ」
鎮のやりたいこと。
そんな話、一回もしたことがなかった。だから、想像もできない。
鎮の両親は二人とも家事が全くできず、「まぁなんとかなるだろう」が口癖の人達だ。
だから、鎮はせめてご飯くらいはちゃんとしたものと食べようと、小さい頃からよく作ってたらしい。それは今でも続いてるから、鎮は料理が得意だ。作ったことがないものでも、本を見れば作れると前に言っていた。
最近は両親が洗濯や掃除を覚えてくれたから、多少は楽になったんだとか。
なんにせよ、鎮はやれることが多い。
小さい頃からそういう環境で育ったおかげか責任感は強いし、なにより頼れる。勉強もそれほどできないわけでもないから、就職も困らないだろう。
そんな鎮に比べて、俺には何もない。
成績は下から数えたほうが早いし、料理なんてできない。母さんと父さんが仕事でいなかった間は、二人が置いてってくれたお金で出前を取ることが多かった。もしくは少ない時間の間で作ってくれた料理や、鎮が差し入れてくれたもの。
料理以外なら普通にできるけれど、そんなものなんなの役にも立たない。
(もっと勉強頑張っとけば良かった・・・・)
本当に、今になって後悔する。
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