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海斗side.
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「うわ、どーしたの、それ」
朝。目を丸くして、鎮が言う。
「どれ?」
「それ。唇」
「あぁ・・・ちょっと、噛んだ」
「ちょっと噛んだだけでそんなんなるかっつの!」
菊地に抱かれた時に噛んだ唇をまじまじと見られる。
本当は誰にも見られたくなかったのだけれど、唇だから絆創膏を貼りたくても貼れなくて、結局そのまま学校に来た。
昴だけにはどうしても見られたくなくて、いつも昴が迎えに来るより早く家を出た。
母さんと父さんが帰って来てなくて、よかった。
傷を見つめられ、なんだか居た堪れなくなって指で隠すようにして触れると、体温がしみてズキリと痛む。
「痛っ・・・、」
俺は思わず眉を顰め、小さく声を上げた。
「大丈夫なん?」
心配そうに顔を覗き込む鎮。
あぁ、そういえば。
「大丈夫。・・・・・・・・鎮、あの―――、」
ガラッ
「HR始めるぞー」
俺が話し始めようとした瞬間教室の扉が開き、新担任の坂口先生が言いながら入ってきた。
仕方なく俺は前を向き、予定やらなんやらを話す坂口先生を見ていた。
トントン、と肩を叩かれ、後ろを振り向く。
すると小さく折りたたまれた紙が投げられ、机に小さく音を立てて落ちた。
手にとり後ろの席に座る鎮を見ると、人差し指を紙に向け、「読め」と口を動かした。
バレないように机の下に隠しながら、それを開く。
【顔色悪いけど、なんかあった?
今日、何が何でも話聞く。余す事無く教えろよ。
どんなことでも俺はちゃんと聞くから。】
綺麗な字でそう書かれていた。
涙が出そうだ。
「っ・・・・・・、」
いいかもしれない、と思った。
もう、全部話して。そうしたら、楽になれるかもしれないって。
鎮はきっと、ちゃんと聞いてくれる。
どんなことを話しても、気持ち悪がったりしない。
きっとそうだ。
鎮はそんな奴だ。
「・・・・・・っ、」
シャーペンを手に取り、紙の余白に文字を書いていく。
そしてそれをまた小さく折りたたみ、持ったまま腕を曲げ肩から見えるように上げれば、鎮はそれを取りカサカサと音を立てて開いた。
はは、と小さな笑い声が聞こえる。
一文字一文字、気持ちを込めて書いた。
【ありがとう】の一言。
話そう。
全部、話そう、そうすれば。
そうすればきっと、鎮の本当の”親友”になれると思ったんだ。
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