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ルード・ブランシェの証言(ルード視点)
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美しい人だと思った。
そして、だからこそ捕らわれているのだと、そう感じた。
俺は、裕福とは言えない、貧困に近い層に生を受けた。毎日生きるために何かしら働いていた気がする。
15才のときに両親を失った。
病気だった。
国が、何も対策をしなかったせいだ。
栄養も衛生も、ここは何もかもが足りない。
涙は枯れた。抗う力も持たない。
だが、10才になる妹は、
何としてでも守り抜こうと誓った。
「最近人拐いがあるらしい…イーディ、気を付けろよ」
「お兄ちゃんったら心配症なんだから。大丈夫だよ、危なくなったら大声出す!だから、助けに来てね?」
「ああ。もちろんだ。…でも、危険な目に遭わないことが一番なんだからな」
「うんっ」
妹のイーディは、栄養不足のせいで華奢だ。手首も細く、持ち上げたときの軽さは驚いてしまうほどだ。最も、なるべく栄養価の高いものを優先的に食べさせているから、この地区の他の子どもより幾分か肉はついていると思う。
国に抗うためには力をつけなくてはいけないと、そう思っていた。だから、いつか目にもの見せてやると、奮起していた。
両親が死んでから、2年。
きな臭い噂が増えた。殊に人拐いの話を多く聞くようになった。子女が狙われてるらしく、俺は気が気じゃなかった。
妙な胸騒ぎがした。
そしてその予感は、現実のものとなった。
「イーディ!どこだ、返事をしろ!」
買い物に、出掛けたんだ。
欲しいものがあると。
どうしても、欲しいと。
……俺に残されたのは、妹が俺に買った、誕生日プレゼントだけとなった。
そしてそれが、妹の、形見と、なった。
「国が憎いか」
「…」
「お前の妹を拐い、しかも亡き者にした国が、憎いか」
「………憎い…」
「ならば俺たちと共に来い。俺たちはお前の力を必要としている」
城の兵士に付けられた傷が痛みを訴える。
この男に出会ってなければ、俺は死んでいただろう。
俺は、死ぬつもりだった。
国に抗って、国民や王公貴族の奴らに見せつけてやりたかった。あいつらの罪を暴いて、それで、その罪をさらけ出す代わりに、死のうと思っていた。
結果はもちろん、最低なものだった。
罪を暴くどころか、何の影響も残さないまま死ぬところだった。
……俺は、ただ……
あなたを、助けたかったんです。
…アイリール様。
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