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ルーシェス・ユールの追想(シェス視点)①
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その泣き顔を見たとき、確かに心を揺さぶられた。
騎士の日常はさして面白いものではない。
戦争が起こった時に前線に駆り出され、命を懸けて国のために働く。それが一般的な騎士の仕事だろうが、この国は戦争に対して消極的だ。
他国もこちらに介入してくることはない。まぁ、攻め入られるほど有用なものがこの国にないから、というのもあるが。
基本的にこの国での騎士の仕事は王宮の警備。要人の護衛。もしくはお偉いさん方のステータスの一種だ。幅を利かせている連中の多くは、手持ちの騎士をたくさん抱えている。
数を揃えればいいというわけではないと思うんだけどな。やっぱり荒れた国のトップは阿呆ぞろいだ。
俺はそんな阿呆な奴らに取り入って、上へ上へと地位を上げていった。とりあえずそいつらに気に入られておけばなんとかなるかと思った。俺は見目も悪くないし、武芸も人並み以上。男女共に言い寄ってくる奴が多くて、捌く方が大変だった。適当に遊んでやって、適当に捨てる。そんなことを繰り返してきた。
だって、それが楽だから。
相手も遊びと割り切ってくるし、そういう奴しか相手にしなかった。
稀に俺に本気で惚れる奴もいた。そういうのには面倒だけど他を宛がったり、少し手荒なことをした。そうすると、みんな離れていった。そんなもんだ。
で、俺は騎士としての名誉である宮殿奥への配置となった。
此処には訳ありの巫女様たちが捕らわれているという。
さすがに手を出すとクビどころじゃすまないような気がしたけど、どんな奴らなのか興味があった。こんな息苦しく閉鎖された空間で、何を思って生きているんだろうかと。
生きてて楽しいのか、と。
俺にとって『巫女様』は奇異の対象だ。
ああ、そうだ、興味本位。
面白がってるだけ。
我ながら最低だとは思うが、これが俺なのだから仕方がない。
アイルのことは……そうだな、「華奢な奴」というのが最初の印象。奥の殿で他の巫女様も見てきたが、特に痩せ細っていた。
あとから聞いた話によると、どうやらただの栄養失調のようだ。奥の殿に来るまでは、飢えと戦う毎日だったんだとか。
じゃあせっかく奥の殿に来たのだから栄養価のあるものを食べたらいい、と思うのだが、どうやら巫女様方が食べるお食事は口に合わないらしい。
俺としてはもう少し肉付きが良い方が……
きっとそれを伝えたら、アイルは無理にでも料理を食べようとするだろうな。
「…っ、あ、シェス?!」
たまたま、通りかかっただけだった。
もう寝てるだろうと。
夜這いっていうか、寝顔見てみたいな、と何の気なしに思って、そっと扉を開けただけだった。
アイルは、ベッドにいた。ただ、上半身裸の状態だった。タオルで体を擦っていたから、おそらく汚れを落としていたのだろう。
俺が一歩踏み出し、部屋に入り込むと、アイルは目に見えて慌てた。必死の形相だった。
「こっ、来ないで!」
「…」
その様子が面白くて、さらに歩を進める。
体を腕で覆い、俺に背を向ける。
慌てて服を手に取ろうとしていたので、それを遮ってベッドに押し倒した。
気になったんだ。
何をそんなに怯えているのかと。
秘密があるというのなら、知りたい。
あの日、アイルが他の巫女にいじめられて泣いていたのを見た日から、色々な顔を見たいと思ってた。
「……?」
胸が小さい。
いや、無い。
はて、と思い、一応下半身をまさぐってみる。アイルはものすごく抵抗してきたが微々たるもので、俺はすぐに目当てのものに触れることができた。
「…男…?」
「…っ、」
そのときのアイルの絶望した顔といったら。
俺は生涯忘れないだろう。
「ふーん…これを隠してたわけか」
もしかして奥の殿の巫女って全員男なんだろうか、と考えてしまった。これが奥の殿の秘密なのか?と首を傾げた。とすると、あのお偉いさんたちは男を囲っているのか、そうか…と妙な気持ちになった。
と、そんな呆けたことに思いを馳せていたら、不意にぎゅう、と腕を掴まれた。
ん?と組み敷いたアイルを見ると、目が合った。ああ、やっぱり、綺麗な蒼の瞳だ。
「お、お願い…っ、このことは、誰にも言わないでくれ…!」
両目に涙をいっぱい溜めて、懇願された。
目元を赤くして、綺麗な涙を流して、恥ずかしさからなのか顔も真っ赤にして。
……可愛い、と、思った。
そして心の底から、いじめてやりたいと、思った。
だって、俺がそんな顔をさせているんだ。そう考えると、ぞくぞくとした快感が体を駆け抜けた。
もっと歪ませてやりたい。
泣かせたい。
震えさせたい。
すがらせてみたい。
ねだらせたい。
俺のことで頭をいっぱいにさせてやりたい。
そんな狂った叫びが、心の内に響いた。
「……もちろんです、巫女様」
「シェス…!」
あーあ、そんな安心した顔をしちゃって。
これをまた絶望の淵に落とせるのかと思うだけで、気が狂いそうなほど歓喜した。
「黙っている代わりに、ください、巫女様」
「え?」
「……だからさ、あんたをくれよ、アイル」
「シェ、ス…?」
アイルの顔がどんどんと曇っていく。
俺は微笑みを向け、ちゅ、とアイルに口づけた。
「俺、新しい玩具が欲しかったんだ」
そのときの俺は、最高に悪い顔をしてたんだろうな。
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