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恋心
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「…結婚するの?」
「ううん、ただの脅しだもの。結婚はしないわ」
でもその人に求婚されてたのは事実なのよね…とシルヴィは苦笑した。
貴族の世界はなかなか大変のようだ。
結婚すら政治の材料にされてしまうんだ。
「…私、もう恋をするのは諦めてるの。だから、きっと結婚はお父様が決めるんだろうなぁって。だからね、それまでは此処で、アイルたちとお喋りしたり料理を作ったりして過ごしたいわ」
「そうなんだ…」
恋。
…記憶をなくす前の俺は、恋をしていたんだろうか。
もしかしてシルヴィのことが好きだった?
それとも……
「?どうした、アイル」
「な、なんでもない」
自然とシェスの方を見ていたようだ。
慌てて顔を背ける。
前の俺が誰を想っていたかは分からないけど、恋をするなら…シェスがいいな。
俺のことを救い出してくれたし、カッコいいし、優しいし…
同性だけど、ドキドキしてしまう。
あ、でも…シェスはきっと女の子が好きだろうなぁ…。
恋人いるのかな。
でも会ったばかりなのに、どうしてこんなに惹かれるんだろう。
一目惚れってやつなのかな。
「…」
「少し疲れただろ。休んだ方がいい。本調子じゃないんだし」
「…うん」
シェスに促されるまま、ぽすんとベッドに腰掛ける。
自然と見上げる形になった。
どの角度でもカッコいいなんて、すごいな…何を食べたらそんなにカッコよくなるのか知りたい。俺は女顔だし線も細いから、しょっちゅう女の子と間違えられる。
力もないし…だから、あんな、連中に…
瞬間、ぞわっと気持ち悪さが甦った。
「…っ、ぁ…」
「…アイル?」
怖い。
嫌だ、違う、あんな、…嫌なのに、無理矢理、
気持ち悪い、触らないで、嫌だいやだいやだ…っ
「…アイル」
「…!!や…っ!触らないでっ!!」
暴れる身体を優しく、でも抵抗できないように強く、抱きしめられる。
息が荒くなって、心臓がキリキリ痛む。
急に、なんで、さっきまで大丈夫だったのに!
「落ち着け」
「や、いや、こわい、やだ、いやだ…っ」
「お前を抱きしめてるのは俺だ。もう此処に、お前を痛めつける奴はいない」
「…っ、…っ!」
耳に吹き込まれる言葉は、優しくて、甘い。
安心する。
そうだ、此処にはもう…あいつらはいないんだ。
「俺がいる。もしあいつらの幻影が見えても、俺が全部斬り捨ててやる。アイルに近付く奴は、全部な」
俺と目を合わせ微笑むシェスは、綺麗だけど、やっぱり狂気の光もたたえている気がする。
でも、そんなこと気にならない。
俺にとっては、何よりも安心できる言葉だったんだから。
…俺は、シェスが、好きだ。
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