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たった一言(シェス視点)
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「シェスのこと…拐われる前のこと、思い出したんだ」
「…?」
「シェスって酷い奴だよね。人のこと弄んで、飽きたら捨てちゃうんだ。人を、人の『好き』を玩具にするんだ。最初は紳士的で王子様みたいって思ったのに、それ全部仮面だったんだよ?性格悪いし、意地悪だし、傷つけるようなこと、たくさん言われた。しかも悪いなんて欠片も思ってないし」
ああ、記憶が戻ったのか。
そろそろ会いにいってやろうかと思った。
きっと寂しくて泣いてる。俺が恋しいと涙をこぼしてる。俺がいなくちゃ嫌だと…きっとアイルはそう思ってる。だから、会いに行こうと思った。
だって、アイルには俺が必要だから。アイルの心を占めてるのは俺だから。
…違う。
そうあって欲しい。
アイルにそう強く願ってほしいと、俺が思っているんだ。
どうして?
そんなもやもやした違和感は、アイルに会えば解消されるはずだ。
だから部屋を訪ねたのに、そこはもぬけの殻だった。机には、あの壊れたオルゴールのみが鎮座していた。
争った形跡はない。
自分から出ていった?
なんのために?
俺が会いにきたのに。
俺がいないと駄目なくせに。
…俺は、自然と走り出していた。
「分かってる。たぶん、ルードの手を取るのが正解、なんだよね」
「でしたら…!」
「でも、ダメなんだ……」
「え?」
「だって…」
そうして見つけたアイルは、ルードと対峙していた。あの男、どうやってここに。
アイルをまた連れ去るつもりか?
「だって、好きなんだ…シェスのことが、すごく…すごく、好き。大好きで、どうにもならない」
「…っ、」
「最低な奴だって分かってる。人のこと弄ぶことだって簡単に出来てしまう奴だって…知ってる。だけど、それでも、好きなんだ。シェス以外じゃ、嫌だよ…」
「…」
俺のことが、そんなに好きなのか。
そういえば、アイルの口から「好き」だと言われるのは初めてだ。
ああ、この前のあれは無理矢理言わせたようなものだし、記憶もなかったから、あまり満足できなかったんだ。少し気分が良くなったのは事実だけど。
…どうして、アイルは俺みたいな奴が好きなんだろう。自分で言うのはあれだが、一般人と比べると、俺はなかなかに人格が破綻している。
この容姿は好みらしいけど…それでも、なぜこんな風に想うことが出来るんだろう。
どうして、なんだ。
おかしい。酷く胸が締め付けられる。
俺こそ、どうしたんだ。
たったひとことで、なんでこんなに…
「…俺のアイルを泣かせてるのは誰だ?」
…。
まずは、俺のものに手を出そうとしてる奴を駆除しないといけないよな?
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