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一子の恋1~R18腐二次創作弱虫ペダル別話
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「一子ー。おはよー!」
寒咲幹が駆けてくる。
一つ年下の幼なじみ。
この春総北に入学した。
上級生がちょっと睨んで通る。
いかに上下関係の緩い総北でも、さすがに一年生が二年生を名呼びはまずい。
あーあ、みたいな目をする一子に、幹は屈託のない目を向ける。
「わかってんだけど、ついね」
かわいく舌を出す幹を、一子は本当にかわいいと思っている。
何より幹は一子の秘密を知っている。
知っていてひかなかった唯一の人間だ。
四歳の幹は五歳の裸の一子を見て、目を丸くして言った。
「どおして一子ちゃんは、おまたにみみずついてるの?」
おまたのみみず。
一子の最大の秘密。
そう、いくらセーラー服が似合っても、いくらもてても、一子は立派な、ちゃんとした男の子なのだ。
青八木家はこの町の名家だ。
町の八方にある古木を植え、祭礼を取り仕切り、町長も市長もすべて、青八木の血筋のものがやっている。
そんな青八木の家に、全く跡取りが生まれなかった時期があった。
やっと生まれた赤子に、一族は唯一の子の意味を込めて、「一(はじめ)」と名付けた。
けれど一はやたら病気した。
三歳までに十二の大病を患った一を、高名な占い師が占うと、こんな卦が出た。
『十八才まで女として育てなさい。さすれば天寿を全うできる。男として過ごした場合、この子は成人しない』
一族慌てふためき、今に至っている。
占いの日から今日まで、青八木のうちには妾宅にいたるまで、全く子が生まれていない。
人工受精さえ成功せず、養子縁組さえ整わない。
だから一は既に十三年間も一子でいるのだ。
一はもともとかわいい。
だから一子もかわいい。
かわいければ男の子たちも騒ぐ。
中学に入って以降は、すきをみては押し倒そうとするバカが増えた。
仮にも青八木家の一人娘だ。
手に入れたら、街の名士。
幹がいるときは助けてくれるけど、いないときだってある。
だから一子は、空手を習った。
真面目にやったのですぐ黒帯になった。
身を守るすべも身につけた。
でも相手が複数では、さしもの黒帯も役に立たない。
近くにある男子校、Н学園の何人かの生徒に襲われた時は、幹もいなくて、地面に押し倒されて、両手両足押さえ込まれた時には、一子は全てを諦めかけた。
男だとバレること。
騙してたと周りに思われること。
どちらもつらい。
どちらもいやだ。
このまま死んでしまおうか…
そのときだった。
「何してんの」
くせっ毛を後ろで束ねた男~年は同じくらいみたいだ~が、ふらっと自転車で通りかかった。
「女の子は組み敷いちゃ駄目でしょう」
「ヒーロ一気取りかよ」
「やっちまえ」
襲ってきたH学園連中を、
「危っ、危ない危っ」
自転車を、器用に乗りこなして人を避ける。
避けながら人をかすめて転ばせたり、乗り上げて通ったり。
結局Н学連中は、
「覚えてろ!」
とお定まりのことを言って去って行った。
「カッコ悪ー」
結んだ髪の男はかなり長く見送ってから、
「立てる?」
差し出してくれた手に縋らず身を起こし、パンパンと埃を払う。
「送ろうか? つってもこいつレース仕様だから二ケツできねーけど」
レース用の自転車…
タイヤが細くてかっこいい。
「大丈夫…帰れる」
置き去りにして歩き出す。
でも感じてる。
ずっと見送ってくれていること。
こいつ紳士だ…
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