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一子の恋2~R18腐二次創作弱虫ペダル別話
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幹は自転車屋の娘だ。
だからあのひとの乗ってた自転車の名前が比較的簡単にわかった。
キャノンデール。
アメリカ製だそうだ。
うちの学校には、比較的最近転入してきた。
名前は手嶋純太。
「名前は純太だけど、性格はけっこう不純太です」
そう挨拶したそうだ。
「自転車競技部だよ。熱心だけどあんまり早くない」
にしても一子ちゃん。
最近手嶋さんの話ばっかだね。
ばっかって。
そかな。
だって初めてだったんだもん。
青八木の姓にビビらずに、ふつうに接してくれた人…
でもこれ以上近づいてもしょうがない。
所詮俺、男だし…
なのに手嶋、やたら俺の前に現れる。
図書館で本探してる時。
木陰で本読んでる時。
幹と弁当食べてるとこにも現れて、俺の卵焼き奪った。
これには幹が呆れて、
「一子のお弁当は、一子がつくってるんじゃないよ。まかないのしげさんが作ってるんだよ」
そしたら手嶋、言った。
それは残念って。
あれから俺、何となく、卵焼き練習しちゃって、たまにはしげさんにも褒められるようになった。
競技部の部屋へ行ってみた。
手嶋がひとりでチェーンかなんか手入れしてたから、お弁当箱開いて見せた。
「お、うまそうじゃん。でも俺いま手汚ないから、」
いらない?
閉めようとしたら、口をぱかっと開かれた。
「食わせて?」
震える手で、箸使って、純太のロに一切れ入れた…
ゆっくり噛んで、食べてくれた。
そして笑ってくれた。
「おまえ自分でつくったろ。前のと味違う。こっちのが好きだ」
頭の中がぼ一っとなって、気づいたら俺、純太とキスしてた。
ぼーっとなったままそこを出た。
何かめちゃめちゃ幸せだった。
でも正門に幹がいて、険しい顔で立ってた。
「ひどいよ一子。そんなに手嶋好きなの?」
え?
「あたしずっと秘密守ってきてあげたんだよ? だから一子はあたしのもんじゃん」
幹…
おまえ、何言おうとしてる…?
「ごめん。でも今、うちの自転車屋赤字続きなの。あたしたちずっと友だちどうしだったし、一子男であたし女じゃん。将来結婚すればうちの店も…」
聞きたくない!
幹までがそんな…そんな…
俺はその場を駆け出した。
後ろから幹の声が追って来た。
ごめん一子!
ごめん!
私のこと、嫌いにならないで!
学校を三日休んだ。
二日間、幹は俺を誘いに来たけど、三日目は来なかった。
とうとう一人ぼっちだ…
そう思って窓から表を見ていたら、電柱のところに純太がいた。
目が合った。
純太はほんとにさりげなく、屈託なく、
「やぁ」
と手を上げた。
初めて人を部屋に上げた。
幹もここには来たことない。
みみず事件は幹の店の裏手で、ビニールプール入った時だったし。
たまたましげさんもなつのも出ていてうちが空だったから、思わず入ってもらったけどほんとはめちゃめちゃどきどきしてる。
とりあえず、麦茶出した。
「すげえうちだな。気後れしちゃってさ、あんなとこで、ずっと立ちん坊してたんだ」
無理ないよ。
毎年家庭訪問の度に、毎回、担任、あんたいた辺りで立ち尽くしてたもん。
でも、何で来たの?
目で問うと、純太は恥ずかしそうに頬をポリポリした。
「キス…しちゃったろ? それから続けざまに三日も休むからさ…怒ったかなって…」
赤くなってボソボソ言う純太の気持ちが俺を直撃する。
嬉しかった。
めちゃめちゃ嬉しかった。
でも俺には秘密が…
俺の両目から涙が一気に溢れ出す。
純太は大慌てに慌てて、両手を躰の前で振った。
「ごめん! 泣かすつもりじゃなかったんだ。怒ったなら謝る。やな思いさせたなら謝る。ただ俺、おまえかわいいって…ただそれだけ…」
俺もだ純太。
俺、純太が大好きだ。
だからこそ、あんたは騙したくない。
呆れられてもいい。
嫌われてもいい。
俺はロを開いた。
「純太…俺…男なんだ」
けっこう大きな目がもう一段大きく開かれた。
「嘘…マジ…?」
おれは大きく肯いた。
長い、苦しい沈黙が続く。
ややあって、純太が口を開いた。
「俺にも…三日くれる?」
え?
「ちょっと考えてみたいんだ」
そう言って、純太は帰っていった。
麦茶ごちそうさま。
普通に。
ごく普通に。
純太は去ってゆく。
これで終わりだ。
全部終わりだ…
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