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囚人アオヤギ〔一話完結〕~R18腐二次創作弱虫ペダル手嶋目線
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初めて見た時、どきっとした。
なんて美しい子だろう。
こんな子が、どんな罪を犯したというんだ。
けど…私情は禁物。
この就職難の時代、仮にも公務員になれたんだ。
失職する訳にはいかない。
三日持たなかった。
あの子はデカいやつの専属にされてしまった。
まあ72は気は優しい方だから、しばらく様子を見よう。
下克上があった。
5が72を出し抜いた。
寵愛のあの子も引き継いだ。
5は4に心酔してる。
上納されたらことだ。
介入した方がいいのか?
同僚の古賀はほっとけという。
ああいうのがいると、房内のトゲトゲした雰囲気が少し和らぐからって…
でも…
やはりあの子は上納されてしまった。
5から4に渡り、4が1に貸している。
1はナニが激デカい。
きっとつらいに違いない。
何かしてやれることはないのだろうか。
夜半、見回っていたら、なんと古賀があの子を抱いていた!
踏み込む度胸なくて、あとで古賀に詰め寄った。
「かわいくてな…つい…」
全然悪びれてなかった。
悲しくなったが、見回りは続けなきゃならない。
ふた周り目に、あの子の房の前を通ると、格子の前にあの子がいた。
「就寝時間だ。ベッドに入れ」
心を鬼にして強く言ったが、ただ黙ってこちらを見ている。
そして一言だけ言った。
「僕…無実です」
無実です。
耳について離れない。
だよねっ。
態度もまじめだし、どっちかっていうと気まじめすぎるくらいだ。
あんな子が冤罪うけるなんて、ひどい世の中だ。
僕に強力なコネとかあったら、すぐに助けてあげるのに。
でも僕は一介の公務員で、話を開くのがせいいっぱいで…
ぼくには心を開いてくれたのか、あの子はぽつぽつ身の上を語ってくれた。
生まれてすぐ、親に捨てられたこと。
拾い親が良い人だったので、あたたかい家庭で育ったこと。
自転車が好きなこと。
「僕も好きだ。前キャノンデールとか持ってた」
「すごいですね。僕はコラテック、好きです。本でしか、見てないけど」
少し、遠い目になった。
「乗りたいな」
給料日。
少し高かったけど写真集を買った。
自転車のカタログみたいな写真集。
このピエール何とかって写真家は、自転車の写真ばっか撮ってる人なんだ。
喜ぶかな、なんてひとりで浮かれながら職場へ行くと大騒ぎだった。
脱獄があったのだ。
逃げたのは、1と4と5と…あの子だった。
フェンスのところであの子とかち合った。
下に掘られた穴から、表に出ようとしていた。
かれは僕をじっと見て言った。
「養い親、末期ガンなんです。ひと目だけ、会いたい」
そして僕に、触れるキスした。
かれが逃げおおせてしまうまで、ぼくはその場から動けなかった。
看守から囚人へ。
立場はまるっと変わった。
僕もそこそこイケてるから、やつらの恰好の餌食だ。
72~5の脱獄で、もとの地位にかえり咲いていた~の庇護下に置かれ、元看守のわりには良い待遇をうけている。
今はすべて知っている。
あの子の言った話のほとんどが嘘だったことも、ぜんぜん無実じゃなかったことも。
ときどき思う。
あのまなざしにたぶらかされなければ良かったのだろうかと。
でも…
いいんだ。
これが運命だったんだ。
多分…
十六か月後、再逮捕されたあの子が戻った。
同じ服になった僕を見て、彼は黙ってにこっと笑った。
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