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自転車を描く~R18腐二次創作弱虫ペダルT2手青、葦木場
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キャノンデール本社に呼ばれて以来、SHOP AOYAGIは完全に軌道に乗った。
うちの店の自転車は、99%、一のスケッチブックの中にある。
俺はそれを形になるように、図面に描き起こしてるにすぎない。
美しいものを美しく、美しくないものも美しく描く天才だった。
本人も美しかった。
少し険のある眼差し。
重い口は喘ぐとき、美しい形に開いて、俺は何千回躰を重ねても、飽きることがなかった。
向こうはお印程度の情だったと思う。
最後まで、真生のゲイにはなりきらなかった。
通りすがりの美人、人妻、あと、ガテン系の女性が好きで、すれ違いざま、しばらくみとれてることがままあった。
そんなときは、はっと俺を見て、頬染めて俺の指に指を絡めてくる。
構わなかった。
そばにいられる。
たまに抱ける。
そんなもんで充分幸せだったから。
そしてそれを奪われて、今は一人。
いや。
俺の指にこのリングがある限りは、多分…
気が逸れた。
今日中にこの変わり自転車を仕上げないと。
二人乗り。
並列座席。
共漕ぎ。
花飾りをあちこちに…
「恋人たちが乗るんだろうね」
大きな影が差す。
目を上げた視界を覆ってる葦木場に、俺はかける言葉がなかった。
こんなにも大きな身長差になる前。
俺は葦木場を抱いていた。
別れてからも葦木場は、俺を一途に想っててくれてたのに、俺は青八木に恋してしまった。
ひとを憎まない葦木場が、ーのことだけは嫌った。
純ちゃんが僕のところに戻るまで、僕絶対諦めない!
そう言ってたシキバが去って何年経つ。
アメリカに、基盤をおいて、ピアニストとして活躍してると聞いた。
CDも聞いたけど、とてもきれいな音だった…
「迎えに来たんだ」
真面目な顔、真面目な目。
ごめんなシキバ。
ほんとにごめんな。
俺のことばを聞きながら、困ったように笑んでいる。
ずっとその指輪と生きてくの?
指輪とはえっち出来ないよ?
僕とはさあ、やれるし、会話できるし、お互いに仕事あるから共同生活みたくすればそのうち…
一人で話してることに気づいたのだろう。
シキバは突然黙り込み、いきなりわあっと泣き出した。
「どうしてあいつなんだよ! 死んだんだよ! もういないんだよ! いいじゃんもう! ぼくと生きてよ!」
揺さぶられても抱き締められても、俺のなかからはなにも飛び出してこない。
部屋の隅に置かれてある古いコラテックに目をやって、いきなりシキバはそれを取り上げた。
(振り上げた、の仕草が取り上げた、になってしまう。シキバはそれほどに大きいのだ)
「こんなものっ」
「葦木場!」
しゃがれた声で名を呼ぶと、シキバの顔が悲しく歪んだ。
シキバは自転車を下ろした。
「帰る」
とぼとぼと立ち去る背中に、かけることばもない。
しばらくじっと見送ってから、俺は徐に、花飾りの自転車に取り組み始める。
ごめん葦木場。
時は流れてしまった。
俺は今日も自転車のデザインを書き起こす。
青八木は今もここにいる。
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