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...何で出ない、凪、...何処に居る、
凪に繰り返し電話を掛けるも虚しく、留守電の機械的なメッセージが流れた。
兎に角、田邊の宿泊するホテルを聞こうと里中に掛けるも、先程まで繋がっていたはずの電話は電源が切られていて繋がらない。
恭司はこの八方塞がりな状況に途轍も無く焦っていた。
「 くそっ!! 」
「 何々!?どうした!? 」
恭司の今迄に無い態度に隆雄は驚いた。長い付き合いだがこんな恭司は見たことが無い。これは唯事では無いと隆雄の顔にも緊張が走る。
「恭ちゃん、俺に出来る事は?何だか分かんないけど、一旦いつもの恭ちゃんに戻ろっか。出来る事から始めよ?ね?」
隆雄はピリピリしている恭司に殊更ゆっくり話しかける。何だか分かんないけど焦りは禁物だ。ちゃんと冷静な恭司ならば、打開策を見つける事など簡単だろう。
「.....済まない、力を貸してくれ。頼む、一緒に凪か田邊を捜して...、 田邊だ!隆雄、田邊の宿泊先を探してくれ!!」
隆雄の実家である桐生家は、ホテル経営を手広くしており、数年前代替えを行い今は隆雄が仕切っている。田邊クラスの者が都内のホテルを使うなら、間違いなく隆雄の経営するホテルだ。もし違ったとしても、そのネットワークから見つけ出せる可能性が高いと恭司は考えた。
迂闊だったと冷静さを欠いた事を悔いて、隆雄に掻い摘んで話すと直ぐに動いてくれたが、宿泊先を調べてくれている時間が永遠にも感じる。
「恭ちゃん、分かった!!タクシー拾って行こう!」
タクシーの運転手に急いでくれと乗るなり急かす。不幸中の幸いか、田邊が宿泊しているのは隆雄のホテルだった。隆雄がホテルの従業員に聞き出した情報では、チェックインの時には田邊は
一人だったという。里中の話が間違いであってほしいと願っていた。
「.........凪、」
もし里中の話が本当だとしたら、何故凪は田邊の所へ行ったのだろう。思えば帰りのハイヤーでの凪の様子はいつもと違っていた。
【...もう少し、一緒に居たいです。】
そう言った凪の顔はどんなだったか。凪は私にちゃんとサインを出していた。つまらない嫉妬で凪を遠ざけたのは私だ。
車内に歯軋りの音響く程、恭司は奥歯を噛み締めていた。
「...恭ちゃん、こんな時は、心より先に頭動かして。ピンチの時は頭脳戦。得意でしょ?」
冷静に諭す隆雄にハッとし、ふうと息を吐く。そうだ、頭を使わなくては。冷静さを欠いた結果招いた事態だ、しっかりしなくては。全ては凪の為に。
ホテルに到着して隆雄と共に中へ入る。フロントで予め頼んでおいたスペアのカードキーを受け取り、エレベーターで田邊の泊まる部屋へと向かった。
ジュニアスイート。里中の言っていた事が本当なら、凪はここにいる。
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