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微かな物音に眠っていた凪が動く。ゆっくり左手をシーツに滑らせると、その手をギュッと握られてその感覚にぼんやり目を開いた。
「ちゃんと居るよ。」
凪の左手がこうして動くのは、自分を探す仕草だともう知っている。愛しいその手を取ると恭司は指先にキスをして凪に微笑んだ。
「......恭司さん、」
名を呼んだら自分の声が酷くて可笑しかった。起き上がろうとしたら、身体が怠くて思う様に動けないから諦める。「大丈夫…?」と聞く恭司に、まだ動けなさそうですって正直に答えると、凄く苦し気な顔をしてた。
「......凪、酷い事をした。本当にすまなかった。...私を軽蔑しただろう」
「ん?何で?軽蔑なんてするはず無いじゃないですか。」
恭司がなんでそんなことを言うのか、凪には更々分からない。激しいエッチをしただけで、別に酷いことはされてない。
その言葉に恭司は返す言葉も無く、困った顔をした。凪が起きるまで不安だった。泣かれたらどうしよう、嫌われたらどうしたら良いのか、そんな事を思って臆していた自分は凪と比べたらちっぽけな人間に思える。
「恭司さん、ここ来て、」
繋いだままの手を緩く引き、自分の隣のに寝てもらうと、凪は恭司の脇に頭をすっぽり嵌めて抱きついた。
昨晩した知らない香水の匂いじゃ無く、ちゃんといつもの恭司のムスクの匂いだけがする事に安堵を覚える。
昨晩帰って来た恭司からは女性物の香水の匂いがしたし、奪われる様にされたキスからは、口紅の独特な味がした。本当は色々聞きたかった。
恭司らしからぬその振舞いに小さな疑問が幾つも溜まってはいたが、凪は敢えて何も聞かないし、何も言わない。恭司を信じて全てを捧げると決めていたから。
「まだ眠い?」
「んー、眠くは無いけど、ちょっとこのままでいたい。時間平気ですか?」
「まだ平気だよ。凪、食事食べたよ、ありがとう。」
恭司に撫でられている頭が気持ちいいな、とか思っていたが、その一言でピシッと固まる。ありゃ不出来なんてもんじゃない。クソミソの世界の代物だ。
.....食べてくれたんだ。俺なら食べないな。ちょっと感想聞いてみたい気もするけど...、めっちゃ怖っ...
出来が悪すぎて感想を聞けずにちらちら恭司をうかがっていると、
「とても優しい味がした。どれを食べても、凪が一生懸命作ってくれたのが手に取るように分かって、凄く嬉しかった。また、作ってくれる?」
そう聞かれ、渋い顔で思案する。
えー、どーします?あの分野は手を出したらダメな領域だと悟りましたよね?ええ、ちゃんと分かってますよ、でも、恭司さんがまたあのゲテモノたべたいんですって。んー、じゃあまたトライします?そうしましょうか。
一人二役の小芝居で自分自身と相談して心を決めた。アホな子だ。
「じゃあ、頑張ってみます。」
凪はギュッとしがみつき、恭司を見上げて笑った。凪のその笑顔に恭司も笑い返したが、その体勢にふと、昨晩の耀子を思い出す。
......同じ様な体勢でも、凪だとこんなに可愛く見えるのにな。
何か思案気な恭司に凪はゆっくり身体を起こして、啄む様なキスをした。急な事に少し驚いた様子の恭司に、
「朝の分です。」
とにっこり笑う。その後、凪の出勤の支度を恭司は甲斐甲斐しく手伝い、昨日盛大に後悔したので、一人で電車で行きたいとごねたのだが、昨晩のハレンチ行為が祟った鈍い身体の事を指摘されて了承して貰えず、結局恭司と共に車で出勤する羽目になった。
ただ凪も馬鹿ではない。ちゃんと考えて、昨日とは違い助手席でも運転席でも無く、後部座席に座り、会社付近ではゴロッと横になり身を潜めてた。
.......何か、密入国みたいだな。
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