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凪に隆雄の家に行くように言うと、恭司は耀子との約束の料亭へ向かうべく車に乗り込んだ。
駐車場を出た所で取材陣に囲まれうんざりするも、警備員が押し退け何とか会社を後にする。
指定された料亭に着くと既に耀子が到着しており、目が合った途端にこりと笑ってきたが、そんな耀子に侮蔑の眼差しを向けた。
「一体何のつもりですか?」
冷たく言い放つも耀子はクスクスと笑う。
「怒ったお顔も素敵ですね。申し上げたはずです。貴方に好意が有ると。...私、今迄一度も断られた事が無いんですよ。高嶺専務、...いえ、結婚相手なら恭司さん、とお呼びした方が良いのかしら。何を引き合いに出しても揺れない貴方がどうしても欲しいんです。」
返ってきた返答から察するに、やはりリークしたのは耀子で間違いないだろうと考えていたが、耀子の言葉の一部に恭司の怒りのボルテージが上がる。
「ファーストネームで呼ばないで戴けますか、不愉快です。それから、周りを固める為に、貴方の会社だけで無く、中津川グループ毎傘下に下るという打診をした様ですが、会長や社長が何と言おうと、私は貴女と結婚するつもりは毛頭ないのでそのおつもりで。これ以上は御自身の首を絞めるだけです。惨めな姿を晒す前に、諦めた方が賢明ですよ。手に入らないものもあると、そろそろ知った方がいい。」
恭司の言葉を受けた耀子が俯き表情が見えなくなった事から、言い過ぎたかと少し気にしながら見ていると、顔を上げた耀子は不敵な笑み。
「相原 凪さん.....、でしたっけ?恭司さんが仰っていた様に、確かに可愛らしい方ですね。......男の方とは思えない程。」
そう殊更愉しそうに言われ、凪の名が出た事で恭司の怒りは頂点に達する。この二日で随分と自分の周りを嗅ぎ回ってくれた様だ。
「...随分悪趣味ですね。私の身辺を探ってどうするつもりか知らないが、彼に手を出したら私も貴女が女性であろうと、手加減せず叩き潰しますよ。」
「あの方がどうなるかは貴方次第ですわ。私も、大人気ない事をしましたから譲歩致します。結婚云々は追々考えるとして、お付き合いはして戴きたいわ。仕事を理由に会って戴けないのは嫌なので、私のマンションで御一緒に生活はして下さい。相原さんもそのまま御側に置かれて結構ですから、たまには彼の所へ行ってさしあげて。私も、たまに別の方の所へ参りますから。」
此方がその案を飲むと決めつけた物言いをする耀子に嫌な予感がする。この女は思っていたよりも強かで強欲だ。断られた事でむきになっているのだろうが、手を汚す事になんの躊躇いもない様。一体何を考えているのか。
「...何故、私が貴女の提案を飲むと思って居られるのかが分からないのですが。私が断ったら今度はどんな手を使うつもりなんですか。」
「ふふ、貴方程、著名な方がお付き合いしている方が同性だと解ったら、マスメディアは大騒ぎするでしょう?恭司さんはどうか分かりませんが、...相原さんは耐えられるのかしら?晒し者になっても、御側にいて下さるといいですね。」
耀子の言葉に恭司はスッと目を閉じ、眉を顰めた。
提案を断っても断らなくても、凪を傷つける選択しかない事に絶望しか感じない。たった二日でこれだけ事を大きくしたのを思えば、断られた時の準備はもう済ませてあるのだろう。
「......貴方の事が、心底嫌いになりそうですよ。」
「そうですか。それでも、貴方を手に入れられるなら、私は構いませんわ。」
二択の選択肢に未知数の困難を想像し、途方に暮れた。
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