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勢い任せに専務室を飛び出したら、開けた扉の向こうに雅臣がいて、まるで終わるのを待っていましたと言わんばかりの顔で壁に背を付け立っている。
「...声、でかすぎ。兄貴の前ではただの可愛こちゃんで居んのかと思ってたけど、以外とゆーのな。全部ぶちまけてスッキリしたか?」
「...まだ、...震えてて。どうなのか分かりません。」
雅臣に震えるその手を見せながら凪は言った。
「ははっ、すっげぇな。腹へらね?飯喰いに行こーぜ。」
「......はい。」
どの過ぎたセクハラにうんざりしているから、いつもなら雅臣の誘いには乗らないけど、今だけは一人になりたく無くて二つ返事で頷いた。
「おっ!? 珍っし。じゃ、ついでにホテル行こうぜ。」
「何のついでだ!!本当、バカ!下半身男!節操無し!!...やっぱ行かない。」
重役である自分に対し、面と向かってズケズケと悪口をいう凪の肩を抱き盛大に笑う。この裏表のない凪が好きだ。ちっとは元気になったかなとその顔を見て思う。
「冗談だよ、冗談。ほら、行くぞ。」
軽快に笑いながら強引に社食に連れて行く雅臣に凪は少し感謝した。
あのまま一人で居たら、きっと頭がどうにかなったと思う。今は恭司の事を考えたく無かった。
「常務、何にします?」
「俺は今日はB定。おまえはエビフライ定食な。良し、頼め。」
「...何で俺のまで常務が決めるんですか。しかも、エビフライ定食って...、悪意しか感じられませんけど。」
もう一回丸ごと咥える所を見せろと言う雅臣を無視して自分の食べたいものを凪は注文した。程無くして、食事を食べ始めると、「悪かったな」と急に言われ、キョトンと何がですか?と聞き返す。
「...昨日、タカ行かせて悪かった。アイツが手ぇ出すなんて思って無かったんだ。本当、悪りぃ。」
「...常務のせいじゃ無いです。...それに、隆雄さんに言われたんです。既成事実無いと、恭司さんの事何時までも待ってるでしょって。良く良く考えたらその通りだなって。あんな事無かったら、きっと恭司さんに言いたい事何一つ言えずに、ずっと一人で来るはずも無いいつかを待ってたかなって。だから、結果的にこれで良かったのかも...って。...思います。」
「そっか。まぁ、凪がそれで良いなら俺は何も言わねぇよ。ただ、気に入らねぇからタカは個人的にぶっ殺すけどな。」
その言葉に凪が苦笑いで返すと、「ただな、」と雅臣が言葉を続けた。
「兄貴はこのまま、あの女の言いなりにはなんねぇよ。そういうヤツじゃねぇ。機会を伺ってんだと思う。全部、キッチリけり着けてから凪を迎えに行こうと思ってんだと俺は思うぜ?」
その言葉に凪は居たたまれない気持ちになって俯いた。
だとしても、もう遅い。
「まっ、分かんねぇけどな。頑張れんならも少し待ってやれ。...まぁ、あれだ、辛くなったら、俺が胸でもチンコでも貸してやっからよっ。」
にっと屈託の無い顔で笑う雅臣にちょっと感動したのに、最後の言葉で一気に軽蔑の眼差しを向ける。良いやつなんだけど、軽いんだよな。
その後も、雅臣の度重なるセクハラ発言に凪はうんざりしたが、それも雅臣なりに自分を元気付けようとしての事だと凪はちゃんと分かっていた。食事を終えて戻る頃にはいつもの自分を取り戻し、恭司と向き合う勇気を雅臣から貰っていた。
その手はもう震えて無かった。
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