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何度もこうして抱き締められた筈なのに、心の距離がいつもより近い気がして何故か恥ずかしい。
「...っ、...待っててっ、いいんですか?...っ、...俺で、いいんですか?...っ、」
「他に誰が居るの。凪じゃなきゃ駄目なんだ。」
しゃくりあげながら聞く凪の顔をハンカチで拭いながら、恭司は優しい微笑みで言う。
「...だってっ、俺っ...、....隆雄さんと..、」
凪はその事を曖昧には出来なくて恭司に聞いた。
「...私が甘かったんだ。深く考えず、隆雄を中に入れて凪と二人きりにしたからね。私にも否は有る。シーツ捨てて、これでお終いだって言っただろう?だからもうこの事はいい。」
苦笑しながら言う恭司に何て言っていいのか分からずにいると、頬を両手で包まれて恭司に顔をあげられた。その余りにも真剣な顔の恭司の目の奥に、怒りの色を見た気がした。
「だけど、次は無い。隆雄は勿論、他の誰にも、二度と触らせてはいけないよ。いいね。」
「 はい。」
じゃあお終いと凪の顔から手を離し、立ち上がった恭司に凪はギュッと胸が痛くなる。
「...恭司さん、帰っちゃうの......?」
恭司が耀子のマンションに帰るのかと思った凪はその不安を口にした。
「...そんな顔しないで。私の帰る場所はこの家で、凪の居る所だよ。正確に言えば行っちゃうの、だ。で、行かないよ。何処にも行かない。シーツ張り替えるだけ。張らないと、凪を抱けないだろう?.........足りなかったみたいだから。」
にこにこと会社で言った事を揶揄して言う恭司に凪は焦る。
「...ち、違いますっ!そう言う意味で言ったんじゃ無くて、俺が言ったのは、か、身体の方じゃ無くて、気持ちって言うか、恭司さん自体が足りないって意味で言ったんですっ!!」
そんな事思ったとしても言える訳無いじゃん!
ハレンチな!!大体そっちは十分過ぎるぐらいだったし。
「そうなの。私はそっちの意味で聞いたんだけど。まあ、どっちにしても、私が足りないんだ。付き合ってくれるかい、凪。」
「 ── !? 」
恭司に誘われて、その余りの綺麗さにドキンと胸が高鳴った。この家で一緒に居られなくなってからも、会社では殆んど毎日見てるのに、未だに慣れないのかと凪は苦笑する。
はいと返事をすると、恭司は更に笑みを深めて寝室に消えていった。
独り残されたリビングで、凪はソファーの恭司の座っていた場所を撫でる。恭司が居ない間、良くこうして撫でて、その温度の冷たさに涙した。
でも今日は違う。その場所に恭司の温もりが有り、自然と笑みが溢れた。
明日には無い温もりだが、不思議ともう不安は無かった。
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