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俺は至って普通の高校生だと断言できる。
容姿に始まり成績や性格、はたまた趣味や特技その他もろもろがその辺にいる男の子なのである。
母からもらった真っ黒な髪は長すぎず短すぎずを保っているし、父からもらった少し茶色っぽい瞳は大きすぎない細すぎない奥二重だし。身長だって平均値そのもの170センチジャストだ。
部活も入らずグダグダ帰宅部、そして家に帰って宿題やって、飯食べて、風呂入って、寝る。至って普通の、生き方しているって自分でも思う。
そんな俺は檜山暦(ひやま こよみ)という。名前は彩り豊かな四季を愛し楽しみ、また四季のようにさまざまな姿を見せてくれる子に育ってほしいという思いが込められている。名前だけ少し特別感がある、もう両親に感謝してもしきれないくらいにね。
それくらいかな、特別ってこと。ほかには何もないよ、本当に。
…嘘、ちょっと特別かもしれない。もしかしたらだけど。
そう、俺は好きな名前によって少し面倒な奴らに好かれている。そいつらと知り合ったのは中学生の時。たまたま同じクラスだったんだけど、担任が「このクラスには春夏秋冬と暦がそろっているんだな」と言ったのが始まり。
「ねぇー暦ぃー、次の英語サボって昼寝しなーい?」
三時間目の数学が終わるや否や、俺の背中にのしかかってきた重み。暖かくて無駄に重すぎるソレから発せられた気だるげな、やる気の一つも感じられない声。
背中を圧迫する重さに対して素直に「おもてぇ」と文句を言いながら首だけ後ろに回してみれば、本当はパッチリ二重の青い瞳を眠たさのせいで半分に閉じている山鹿花春太(やまがはな はるた)が笑っていた。にっこりとかじゃないぞ、ンフフって感じだ。
春と言えば「春眠、暁を~」ってやつで、春太と言えばサボって昼寝とクラスメイト全員が答えるほどいつも眠っている奴。しかも春だけではなくいつでも寝ている、夏だろうと秋だろうと冬だろうとな。おかげで勉強はボロボロで悲惨。
しかし見た目はその真逆、なんでもお祖父さんが外人らしくサラサラの金の髪にキラキラの青い瞳が目を引く、身長も高校生にして183センチと俺を馬鹿にしているのかとキレたくなるほど。寝る子は育つとはこのことか?
ワイシャツは第三ボタンまで開けられちゃって女子が「きゃ、山鹿花くんったら」と頬を染め喜ぶ(なぜ)。だらしなく一応結んでいるらしいネクタイは本来の役割を1割たりとも果たせていない。
そしてその制服の着方通りというべきか…お友達がたくさんいるのだ、よろしくない、そう性友達がね。
「こぉーよぉーみぃー、俺の話聞いてるぅ?」
女の子よ、こんなやんわりした話し方だからって油断すんなよ。心を許したが最後、おいしく頂かれちゃうよ、しかも甘え上手だから財布狙われるよ。
しかしそんな春太は俺には懐いている、こうしてサボろうと誘ってくるくらいには。一度も奢れなんて言われたことないし、嫌がることはしてこない。
昔聞いてみたことがあったがその時は「だって俺は暦の一部だしぃとうぜーんでしょ?(はぁと)」なんてふざけた返事しかもらえず、しかもキモいと思った。
懐かれるのは構わないけれど、こうしてサボりに誘われるのは困る。学生の本分は勉強だ、その次に青春だというもの。
「…春、うざい。」
その俺の理論を理解し協力してくれる、そんな俺の前の席に座る友人がのそりとこちらへ振り返った。
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