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47.愛おしい人!
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「先輩〜、お風呂入りますかー?」
「お、おー」
「じゃ、お先にどうぞ。」
今日はついに………枷の誕生日…です。
ですが、何というか、結局あれだけ色々したのに、……実際は何も全く考えがまとまっていない……それどころか、何も、なーんにも、用意をしてないこの状況が今何故かあります。
………ヤバイです…………
そうです……………俺はここぞというところで尻込みをしてしまうただのヘタレです……
だって、だって…、…猫耳とか…恥ずかしいじゃないですか、普通に考えて…。ローターとかも、何かやっぱり怖いし、他の物は、もう絶対できないような、あり得ないものばかりだし、…いえ、言い訳を言うつもりではないんです。ただ、もう俺は…後誕生日が過ぎるまでの約4時間程の間に焦っているのです。
今日は、休みで、起きてから今のこの夜8時に至るまで、全く誕生日については触れていません。勿論枷も、全く言わなくて、それが忘れているのか、それともどうでも良いのか、はたまた俺がどう出るのかと陰で待っているのかは分かりませんが……とにかく、何か言わなければ、何かしなければ、このまま誕生日を過ぎてしまっては、何もかも台無しです。
夏川さんにも一応協力してもらったし、何よりこれまで枷に様々な辱めに遭わされながらも必死に黙って驚かせようとしていた俺の我慢も全て、水の泡になってしまいます
ですから、俺はいま頭を働かせています。
お風呂の中で、ようやく、夜の8時に、ようやく、俺は湯船に体を浸けながら、口元までお湯の中に入るようにして、焦って熱くなる頬をお湯のせいなのだと紛らわせるように浸して、ただただ焦っていました。
お湯と、その自分から出る熱で体が熱いからか、頭が少しぼーっとするけれど、そんなことを言っている場合ではありません。
ここまできて、何も用意もしてないなんて、そんなのなさ過ぎるじゃないですか、何かしたいじゃないですか、
でもだけど、すればいいのに、自分から何かすればいいのに、その一歩を踏み出せない自分に情けなさを感じてなりません…
やれよ俺…!何かすればいいじゃん!と思って、それからすぐ、いやでも…の繰り返し。いつまで経っても答えは出ず、いつまで経っても湯船から腰をあげることはできません。
色々とそういうことを考えて、悶々としてシュミレーション的なものをするのではありますが、すぐに熱が浮上して、気を失いそうになります
くらりとして、そのまま湯船に体を滑らしそうになって、慌ててハッと意識を取り戻します。
頬をパチパチ、と手で叩くようにしてから、気を取り直すように一心不乱にエロいことを考え続けます。
プレゼントなのですから、俺から何かしなければならないのですから、だから、何かしないといけないのですから、だから、だから、だから……
ぶくぶくぶくぶく……
…………
…………………。
ーハッ
ザバァ……!
「…っげほっげほっ!ごほっ、っう、げほげほごほげほ!」
………どうしよう…………
…どうすればいいのか、分からない…
後頭部を両手で後ろから折り曲げた膝頭に押さえつけるようにして額を乗せると、俺は口からはぁ…と、熱い息を吐き出してから、静かに目を閉じるしかなかったのだった。
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
…………ぃ
……せん……
…先輩……
…………あれ………何か声が聞こえ…
先輩……、先輩………ッ!
………あ。………………枷。
「………先輩っ!!」
「……あれ。……どうしたんだ?」
目を開ければ、後輩が、枷が、どこか切羽詰まったような表情をして俺を見ている。
ぽかんとしてそれを見れば、後輩は少しだけ怒ったような顔をして、俺を見返した。
「どうしたんだじゃないですよ…、何やってるんですかお風呂でのぼせたりなんかしてっ!」
「……え?」
「先輩出るの遅いから、1時間経っても全然出てこないから、俺嫌な予感して見に行って、そしたら先輩湯船に体つけたまま気失ってるし…ッ!顔まっかだし!揺すっても全然起きないし……!」
「……ぇ………」
そこでようやく自分が風呂に入っていたことを思い出し、それから今いる自分のベッドで寝ていることを知って、それから着せられた服を見て、そうして俺は全てをその時やっと理解した。
まさか意識を飛ばして、それに1時間も入っていたなんて…ー
後輩に祝うどころか、迷惑をかけてしまったことに罪悪感が募った。
こんな日に……こんな時に……
俺は何をやっているのか……
ぼー…っとまだする頭で横になったまま後輩を見つめると、後輩は少しだけはぁ、と息をつくようにして俺から目を逸らした。
「…とにかく俺、風呂入ってきますから……。…先輩は安静にして、喉渇いてるならそこにある水飲んでください。ーじゃ」
「ーーあっ!待っ、」
ばたん
後輩は少し怒った、冷たい様子でその場を去っていってしまった。
……それも当然か…。…良いとしした大人が、風呂でのぼせるだなんて…
はぁ…と、また罪悪感やら自分への嫌悪感やらで頭を埋めて、俺はそれから、横にある小さなテーブルに置いてある用意された冷たい水の入ったコップを暫し見つめ、それから手を伸ばし、ごくりと熱い体に冷たいそれを注ぎ込んだ。
ーーーー
ー
……
その後の、夜。
ハッとして、俺は目が覚めた。
辺りは暗く、慌てて時計を見れば午前の1時過ぎ。
ーその数字を差す針を見た瞬間、俺は目を見開いた。
バタバタバタバタッガチャッ!!
「枷‥………!」
急いで後輩の部屋に入ると、後輩は部屋を暗くして目を閉じていた。
俺はそれを見て、何も声が出なかった。
俺は最低だ。
何してるんだ、本当に。
誕生日だからって、何かしてあげようと思って、でも当日になってわけわかんなくなって、したら風呂でのぼせて、それで後輩に面倒かけて、ベッドまで運んでもらって、服まで着せてもらって、ご丁寧に水なんか用意してもらって、…それで俺はそのまま寝て、気づいたら今日が過ぎて、明日になってて……誕生日が、……過ぎて……
「…………何で……………」
こんなことになるなら、おめでとうって、それだけでも言えば良かった。
こんなことになるなら、変なこと考えて無理にもてなそうとなんてしないで、普通にいれば良かった。
どうして俺はいつもこうなんだ、
俺はこいつに、何もしてないのに。
だからしようと思ったのに。
…のに、なのに……、また迷惑かけて……
本当最低だ…………俺……………
「………先輩?」
ビクッ
「どうしたんですか…?ん…今…1時過ぎじゃないですか…どうしたんですか、こんな時間に」
「……ぁ……いや……」
「寝ぼけて夜這いにでも来ましたか?」
「っ、ち、ちっげーよ!馬鹿…」
「…じゃあどうしたんですか?わざわざ俺の部屋なんか来て…寂しくて一人じゃ眠れない?」
「、ちげぇってば……!」
「ーじゃあ何なんです」
「、…」
……………。
……どうしよう………何て……
何を…………すれば……
あぁいや………でももう寝てるし……
だったら何を……どうすれば………。
「…………先輩…?」
……、…
ズカズカズカズカ
後輩の目の前まで歩くと、後輩は、横たわったまま、そばに立つ俺を暗闇の中でただ見つめた。
こちらを見つめ、何ですか?と、今の今まで眠っていた目を擦り開く後輩を見て、俺は思い切って、目が暗闇に慣れて、少しだけ開いたその後輩の唇を確認し、そうしてそのまま拳をぎゅっと握り締めると、俺は、勢いに任せて自分の唇をそこに無理矢理押し当てた。
目を瞑って10数秒、割と長めにして、それから顔をゆっくり離すと、後輩は酷く驚いた顔をしてこちらを凝視していた。
「……………なに、やってるんで」
「ーーーごめんッッ!!」
「………………え?」
「…、色々ごめん…!日付過ぎて、こんなつもりなかったのにっ、俺のぼせて、お前に運ばせて…っ、全然こんなつもりなくてっ!俺、こんなことになるとは思ってなくて…っ!本当にごめん!!ごめん!!」
「………え。…………いや、……はい?日付……?」
「俺、色々ちゃんと考えてたんだけどっ!考えてたんだけどっ、いざこう本番になると、踏み出せないってゆうか、緊張して…!どうすればいいのか分からなくてっ、…ね、猫耳とか!ローターとか、…む、鞭は無理だしっ、ろうそくも、人参も…!だから、できるので、できる範囲で…っ、やろうとか、喜ばせようとかっ、本当に…色々っ、思ってたのに……っ、…なのに俺っ!」
「………ちょ……ちょっと待って先輩……、…今、…………何の話してる?」
「…………え?、何の話って…それは………、……」
「………」
ーっ、
「………………た、…………誕生日ッッ………おめでとう……っっ!!…」
……ー
「……………はい?」
「…っ、ご、ごめん!!こんな、遅くなって…!つか、時間もう過ぎて、まじごめん!!」
「……あ、……いや、……え?……先輩…ちょっとストップ、ちょっと待って、」
「…本当にごめん!俺はいっつもこうで、誕生日くらいなんかしようって、そう思ってたのに、やっぱこうなって、色々全部、夏川さんとか、協力とか、色々、やってたのにっ、」
「……え、……夏川先輩?…協力?……てか先輩、誕生日って、……ちょっと待って、……本当に何の話?」
「………ー。……………え?」
「……俺、……今日誕生日じゃないし」
「ー」
………………え。
「……俺の誕生日は、春。…4月6日。……まだまだ先なはずなんですが」
「…え………し、が…つ……?」
「はい、4月」
「…。……で、でも……周りの、女子のコたちが、…もうすぐだーって、今日なんだよって、騒いでて…」
「……女子?」
「…」
「ーあ」
「……あ?」
「…あ〜ぁ。いつだったか、誕生日教えてって言われて、何か教えたくなかったから、嘘の誕生日教えた時があったかも。そういえば」
「ーーな……。……あっ?」
「あぁ〜、そっかそっか。なるほど。嘘の誕生日だと今日が俺誕生日ってことになってるんだ、へえ」
「……………な……………ぉ、おま………ぇ……」
「で、先輩はそれ信じちゃって、俺のために何かしようと色々考えてくれてたと。それで、夏川先輩の連絡先を知りたいなどと聞いてきた、と。ということは、もしかして最近の怪し過ぎる行動や隠し事は、全て今日という俺の誕生日の為……?」
「…、……っ…」
「…………………先輩…」
「ギャーーーーー!!!」
「、ちょっとせん」
「黙れ黙れ黙れ黙れ馬鹿にすんなよやめろよ俺に何も言うなァーーー!!いやーーーーー!!」
「…は?…急に何ですうるさいですね、別にそんなこと言おうとなんてしてなくて、俺はですね」
「もういいよッ!もういいっつーのこの馬鹿ッッ!!なんっだよ俺超恥ずかしいじゃんか…っ!!なんっっっだよ馬鹿!!人に嘘をつくなよ!!ちゃんと本当の誕生日教えろよ…!馬鹿馬鹿馬鹿ッッ馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿…!あーーーもうやだ恥ずかしい恥ずかしすぎるッッ猛烈に死にたい……!!」
「……は?教えませんよ、てゆうか、そういうのは好きな人にしか教えません。つまり先輩にしか本当のことは…」
「ーはあぁああああ…っ!?何言ってんだこの嘘つき!お前俺にだって日常茶飯事的にいっつもいっつも嘘ついてくるくせに…!馬鹿にしてくるくせに!!」
「それは、愛情表現だって、いつも言ってるじゃないですか。好きな人は、からかいたくなるんです」
「なんっっっなんだよてめぇ…!!好きな人には虐めたくなるとか泣かせたくなるとか騙したくなるとか意味わかんねぇよサッパリだよ何なんだよもうややこしいなもう面倒くせぇッッ……!!」
「はい…?何をそんなに苛立ってるんですか、しょうがないじゃないですか。それが俺なんですから、そしてそんな俺があなたは好きなんですから」
「やーーめーろーよ!その言い方…ッッ!ちっくしょーーー!!てめぇのせいで俺は誕生日でもないのにお前のこと危うくもてなそうとなんて考えてたじゃねぇか馬鹿…!」
「鞭やろうそく、人参は無理っぽいから、まだイケそうな、ローターや猫耳で俺をもてなそうと考えてくれてたんですね」
「ーっ、一々復唱してそれを言うなよ馬鹿……!忘れろ馬鹿ッッ!!」
「忘れませんよ、そんな先輩が俺に一生懸命何かしようと考えてた事なんだから」
「…っ、とか言って今日じゃねんじゃねぇか!!なんっだよ…!何だったんだよ今までの頑張りは……!!もういいよっ!俺はもう部屋帰るから!さようならッッ!のぼせてごめんなさい!ありがとうございましたッッ!!服とか色々、それについてはまじありがとうございましたッッ」
「ーあっ!」
グイッ
「ギャっっ!!」
「待ってよ、先輩、」
「はーーーなーーーせーーーー!!」
「ちょっと大人しくしてよ、暴れないで、動かないで、」
「なーーんでーだーよー!!」
「俺に少しくらい喜ばせて下さいよ、」
「はあ…!?」
「俺、あなたにそんなこと思われてたなんて知らないし、今知ってすっごく嬉しいんですよ。だから、あなたのこと少しだけ、俺に少しだけ、抱き締めさせて」
「ー、…………え…、?」
「……」
「…………ぅ、うう嬉しいって…」
ぎゅうぅ
「………嬉しくないわけないでしょう。…俺の為に、誕生日が嘘だろうが、俺の為に…先輩が考えて動いて、自分から……そう思ってくれてただけで、俺……今、……言っても、伝えても多分、分からないくらい…俺、……すっごく………嬉しい……ー」
「……、…」
「………嬉しい、本当…。先輩……好き……」
「……、ば、ばっかじゃねぇの…っ、そ、そんな…誕生日なんて、…こ、恋人なんだから……何かしたいとか、思」
「…そうだけど、…そう、分かってるけど……でも、嬉しいものは嬉しいんです。…あなたが俺の為に、懸命に俺に隠そうとしてる姿思い出して、泣いてるとこ思い出して、……もう……あなたが可愛くてたまらなくて…」
「…、…ば…馬鹿かお前っっ!」
「ええ、馬鹿ですよ…。あなたが大好きでたまらない、…可愛くてたまらない、どうしようもない…ただの馬鹿ですよ…?」
「、…なん…なんだよ、…お前…」
「……先輩、…今からあなたを抱きたいな」
「…ーなっ、…はっ!?」
「…先輩が嬉しいこと言うから、…たまらなくなってきた」
「…は、はぁっ!?、…そ、そんなの…」
「先輩、今日お風呂でのぼせるから、そのせいで俺先輩とエッチできてないし」
「…っ、…だっ、だって色々考えてたら…っ、頭に血がのぼって…!したらいつの間にかベッドにいてッ!!」
「……もしかして、……それも俺の為に何かしようとして…って、それ…考えてたから…?」
「…わ、…悪いかよ!!」
「……何なんですか…あなた本当に…」
「…ぇっ、?な、何なんだって…」
「……もう…ほんと……可愛くて可愛くて……たまらない……あなたのことが…」
「ー……、…な…、…そ、そればっかり…な、…何なんだよっ…お前ッ!」
「可愛いんだから、仕方ないじゃないですか…」
「、ぉ、俺はな…っ、お、女の子じゃないんだから、そんなこと言われても、嬉しくねんだよ…っ!い、言うなら、かっこいい…とか、そういう…
」
「ないでしょ…それは」
「ーはあ……!?なんっなんだよそれお前っっ!!俺のこと完全になめてんだろ…!?」
「…そんなことないですよ」
「いいやっ!そんなことあるなッ!絶対あるな!!」
「信じて下さいよ」
「やだねッ!」
「先輩、」
「なんだよっ!」
ーチュ
………、……
「……な、……何してんだよ……おま…」
「先輩、ありがとう」
「、…はっ、はっ?、」
「…俺の為に、考えて、悩んでくれて。ーありがとう」
「……、」
「……」
〜〜……っっ
「〜……ぁっ、ぁあ当たり前なんだよ!お礼なんて、俺は言われて当然なんだよ!馬鹿っ!」
「…そうですね」
「っ、…ぉ、俺は別に、ふ、普通のことしたまでなんだよっ、お前のこと、そんなすげぇ喜ばせようとなんか、思ってねぇし、ただっ、た、誕生日くらいはとか、色々、つかそんだけっ!まじ、言っても、そんなに考えてないしっ!て、てかべ、別にさ、四六時中お前の為に、とか、考えてたわけじゃないし、そ、そんなに考えてないっつーか!…だから、そんな嬉しがられても、その、だからっっ、俺の方がすげー困るっていうかさ…!!
ーーーんんんふっっ!?」
……
「…先輩、これ以上可愛いことしないで」
「ー、……」
ー誕生日は嘘だったけれど…、もし本当だとしても、何もすることはできなかったけれど、…ただ枷のことを考えていたそのことだけで、
枷はとても喜んでくれたようなので、なんだかんだと思いながらも佐山は、
まあ、いっか……ーと、
枷にぎゅうぅっと、しばらくの間大人しくその身を抱き締められているのだった。
「先輩…、……大好き。」
「……、…」
ーーーーーー
ー後日。
「あっ先輩、そういえば、猫耳でしたっけ?」
「…ーえっ?」
「せっかく考えてくれたんですから、やりましょうね」
「………、…ーはっ!?」
「ね〜〜」
ちゅううぅ…
枷は上機嫌で、佐山にそう言いました。^^;…
ーとっ!ゆうことで、次回に期待……っ!!
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