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58.似ている彼ら!前編
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(56話つづき)
ー
「は…………?」
篠坂は、腕を引かれ、席を立ち、枷の側に立たされる俺を見て、凝視していた。
…いや…つかさ、コイツ今なんて言ったよ。…愛し合っているだと……?それを何故篠坂に言うかな……何故そういうことを言っちゃうんだよコイツは……
…つか何でコイツは急にここに…
「お前、前に電話してから迎え来るって言ってなか…」
「ねーー!!君ってー名前何なの〜?佐山君と知り合いなの!?」
「どういう繋がりッッ?はっ、まさかお兄ちゃんとか…?!」
「彼女いますか〜〜っ?私彼女立候補したいなぁ〜」
「なーにーーっ!?私だって立候補しちゃうしーっっ!」
……て、オイ……何なのコイツら…。
すると、
「ーすみません。ご好意はとてもとても嬉しいのですが、俺にはもう先輩という、とても大切な人がいますので…すみません、遠慮させていただきます」
ニコッと笑みを浮かべ、枷はそう余裕で慣れたように言ってのけてみせた。
「先輩…?」
「せんぱいって何?どーゆーこと?」
「…会社の上司のことかなぁ」
「さあ…わかんない」
ーハッ
や、つーかこのままここにいたら…俺コイツと付き合ってることバレるんじゃね…?!
「枷っっ、帰るぞ……!」
途端に思ってぐいっと枷の腕を引っ張ると、皆がえ〜〜となんとも残念そうな声を上げ俺を見た。
けれどもそんなこと気にしてる場合でない。10何年後に会ってみたら、同級生がホモになってました、なんて…フツーに笑えねえだろう…。
いや、…1人にはもうばれたか……
ちらとそう思って振り向くと、さっきまで隣にいた篠坂がこちらを驚いたような顔でじっと見つめており、俺はそれに合ってしまった目線をぱっとすぐに逸らした。
ーバタンっ
「枷、何で急に連絡もなくここに現れたんだよ」
車に乗ると、枷は運転席に腰をおろしてから俺を見て、はぁとため息をついた。
「心配だったんです」
「…は?」
「ー昔のいじめっ子…そして先輩はそのいじめっ子にいじめられてた人、そして先輩が断っても、何が何でも同窓会に来させようと誘うあやしすぎる電話とか」
「……は?」
「俺は何と無くこうなんだろうなって分かってました」
「、は?」
「ここに今日先輩を行かせたのも、そのいじめっ子とやらに俺が先輩にはいるということを知らしめるためです。だから時間的に大体計算して、約1時間程経ってここに来ました。最初は皆でワイワイするだろうし、でも40分50分程経つと、だんだん皆個別に別れるだろうし、何と無くの会話もお酒も割と落ち着いてきた頃に、あの人は先輩に恐らく告白をしようとするんだと」
「…こくはく?」
「ええ」
「…。…お前……何の話してんの?」
「……………。…先輩、あの状況でまさか気づけなかったんですか?」
「…は?いや、お前何言ってんの…?何の話?俺が聞いてんのはさぁ何で連絡もなく急にここに」
「連絡はしましたよ」
「ー、…えっっ!」
「でも先輩、居酒屋だし、周りの音で聞こえなかったんじゃないですか」
「…あ、ああー……そうか…」
「まったく先輩は…」
「…あぁいや、悪い悪い。ちょっと確認して………ーって」
「て?」
「ーー何で31回も電話かけてきてんだよ!!」
「え?いや、だって先輩出ないから」
「だからっってお前な!?…は!?同じ分数の間で5回も6回もかけてんじゃねえよ馬鹿!」
「良いじゃないですか数字的に見れば友達がたくさんいるように見えます」
「〜〜っうーー……くっっそ!!言いたいことあり過ぎて何て返せば良いのか分からねえ!!」
「それに、もし手でも出されているのかと思うと、たまらなくなってしまって」
「は…?、」
「先輩、滅多に友達とかと遊ばないし、だからすごく不安なんですよ。まあ遊んでくれない方が良いんだけど、でもその分、至極簡単に人に餌付けされそうでそれがたまらなく不安で不安で」
「餌付けを何で33の男にすると思うよ…」
「ーそういうことじゃなくって」
「…じゃあ何?」
「………」
「……ん?」
「…。…まあ、良いです」
「ーは。」
「先輩、気づいてないみたいだし、さっきの」
「さっきのって…」
「鈍いと、俺にとっても相手にとっても嬉しかったり悲しかったりですよねまったく」
「はあ…?お前は何言ってんの?…あっ、つーか今思い出したけど、何でお前篠坂にあんなこと言うんだよ!!」
「…はい?…篠坂?……あぁ、隣にいた…あの人ね。篠坂って言うんですか」
「それが何だよッッ!」
「愛し合ってるって何で言ったか分からない?」
「分からねえよ!」
「何で分からないんですかねぇ…。俺さっき言いましたよね、知らしめる為だって」
「……は…?」
「ーあぁ、まあ基本的なことから何も、まっっったく分かっていない先輩には、言っても分かんないか、当然か。…あーあ、今更ですが、いや前から分かっていたことではありますが、相変わらず面倒くさい人ですよねぇ…あなたって…」
「…っな、…ーーはあああ!?っってめぇ!!なんっだよそれッッ!何だよそれ急に!喧嘩売ってんのかよお前ええええ…!!」
「ーはい?それはこっちの台詞ですね。どうやったらそんな鈍い何も察知できない頭になるんですか俺に喧嘩売ってますか俺に心配させたいんですかさては」
「っっ、…るっせぇな!どーーせ俺は馬鹿だよ…!!お前よか全然頭良くないよ!!馬鹿だよ!馬鹿で悪かったなッ!」
「頭が良いとか悪いとか、そういう問題じゃありません。あぁもうまったくこの人は……。…まあ、確かに先輩は馬鹿だろうけど」
「ー…ッッよし!分かった…!お前の今のその言葉を会社の社長にでも言いつけて首にさせてやるよ!」
「面白いこと言いますねあなたは。何ですかそれ?ーだったら俺は先輩のパワハラを言いつけるに賭けます。先輩の過去の愚痴記録データはこちらの録音機にいつまでも保管されているのでこちらを渡せば俺の方が勝ります。先輩の証拠もないその証言はただの悪足掻きとしかとられな」
「ーーっっこのどこまでも俺に反発してくる奴め……ッッ!!」
「あなたがあまりに鈍感で少し苛立ってしまいました」
「真顔で苛立つなよ…!」
「何もされてませんね、触られてませんね」
「、…な、はあ…?触られてって…」
「………。」
「……な、何だよ?」
「…まあ、…腕くらい触られましたか」
「………」
「大丈夫です。誰もそんな、腕や肩を触られたくらいで怒ったりなんてしませんよ、そんなちょっとやそっと触られたくらいで俺が怒ったりなんてまさかあはははははまさかあははは」
「…、そ、そうか…?…ま、まぁ、そうだよな、…まぁ、あははははッまぁそうだよな…!普通に腕くらいなら、うんっ、全然余裕で触られまくって」
「ーーーあぁ、やっぱりすっごくムカつくから今日帰って先輩の孔に特売で買ったあの大根でも捻じ込んでぶっ挿し」
「ーー嘘つきィイ……ッッ!!!」
ーー
プルルル
「…ん?……」
……電話…?
「…ん、……もしもし?」
「あ、佐山?」
「ん…?…篠坂?」
「お前、今日のさ、あの人何なの?」
「……ん?…あの人?」
「…だから、さっき来てた、やたらイケメンの」
「ん〜〜…?……」
「……お前、…もしかして寝てた?」
「…んー……寝てたー」
「お前さ、まだ夜の9時だぞ?」
「んー…」
「何でこんな早い時間からもう寝て…」
「っん…、」
「………え?」
「…んっ、…ちょ…っ」
「……、…………おい………佐山……?…」
「…あっ!や、め…、…ぅんんんんっ!」
「ー」
「……はぁ……ぁは…」
「ーー駄目ですよ、先輩…。寝ぼけながら電話に出ないの……」
「ん、ふぅ……」
「………………な…」
「ーーーさ、よ、う、な、ら」
ーピッ
ーーーー
「先輩、結局バイブとかするって言ってたのに先輩が同窓会に行ったりなんかしたからまだやれてません」
「…お前は人が洗い物してる時に呑気によくもそんなことを言うな」
「だってまだできてませんしやりたいですし」
「来週にまわす」
「来週は絶対やりますよ」
「…分かったよ…っ」
「それから、俺これからちょっと出掛けてきますから、先輩、何があっても絶対家の玄関の扉、開けないで下さいよ」
「は…?どっか行くの?」
「行きたくはないんですけど、少し親の方から呼び出しをくらって」
「親…?」
「なるべく早く帰ります。こんな時に……俺もできれば家を空けたくはないんですが…」
「何で呼び出しくらってんの…?」
「さあ。…あの人たちは気まぐれですから、何考えてるのか分かりません」
ーー俺のとこ、親放任主義だったから
「…。…ふーん……」
「先輩」
「なに?」
ちゅっ
「ーーばっ……、何してんだよお前は…っっ」
「……ちゃんと家でおとなしくしてて下さいよ?」
「…、…は?」
「絶対開けないで。もし誰かが来ても、絶対家の扉開けないで」
………ー、
「…何をお前はそんなに真剣に……」
「分かりましたね」
「ぇ、…いや……」
「ー分かりましたね」
「……。……分かったよ」
「じゃあ、俺は行って来ますから。」
「…ぃ、行ってらっしゃい…」
「行ってきます」
ばたん
………親…………ねぇ。
ーー
ピンポーン
ーはっ!
〝絶対開けないで〟
……あ、開けないぞ俺は……。枷に言われたんだから……絶対開けないでやるんだからな俺は……。
ピンポーン、ピンポーン
「……………」
…扉穴から誰か見るだけ見ようかな。
そ〜…
「あっ」
そこにいたのは篠坂だった。
インターホンを鳴らし無言で留まり突っ立ち、再び鳴らしてくるヤツを見て、俺は目を見開いた。
…何でここにヤツが……?
家教えたっけ…
いや、つかなんの用事でここまで…
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
え……
ピンポンピンポンピンポンピンポンピポンピポンピポンピポンピポンピポピポピポピポピポピポピポ
だあーーーーー!!!もううるせえ!!!
ガチャッ!
「ーーてめぇうっせぇやめろ…!!何回うちのインターホン押す気だ壊す気かてめえぇえっ!」
「なんだ、やっぱいんじゃねえかお前」
「……ーは?、」
「家上がるぞ。お邪魔します」
「…ってオイオイオイオイ!俺はまだお前を家に入れるとは言ってねえぞ…っ!!」
「佐山、お茶出してよ」
「、はああ…っ!?」
「早く。喉渇いてんだ」
「……っっ〜」
ー
「佐山、ところで早速お前に一つ聞きたいんだが、俺に喧嘩売ってるよなお前」
「ー…は?何勝手に家に入って人の椅子勝手に座ってお茶飲んで5分も経ってないうちにふざけたこと堂々とぶっかましてんだよてめえは。しねよ」
「人のこと着拒しといて…よく言えるなそんなこと」
「…は?…ちゃっきょ?」
「ーー着拒。イコール着信拒否」
「知ってるわそんくらい!!」
「じゃあ何でそんなことすんの。俺お前に何かした?」
「…いや、……は?…あのさ、俺別にお前のこと着拒なんて…」
「昨日も電話したらお前、変な声出しながら出てくるし」
「……は?」
「つーかさ…、マジ昨日のあのスカした奴何なの?すっげーウザいんだけど。邪魔なんだけど」
「…スカした奴…?……あ。……枷のこと?」
「枷って奴さ、お前と付き合ってんの?」
「え……?」
「完全に俺のこと敵視してたし…」
「、…き、気のせいじゃ…ねぇのか?、な…」
「お前さ、」
「な、何だよ…。つか…、あんま長居すんなよ、俺、今日本当は誰も家に入れちゃいけないって言われてて」
「ー枷ってやつにか」
「…、……いや…」
「…お前さ、あいつのこと好きなの?」
「えっ…?」
「付き合ってるよな?昨日もあれから帰ってセックスしてたんだろ」
「ー。………ぃ、いいや………そ、そんなことは……」
「すっげえムカつくんだけど」
「…は?……、」
ガタッ
「ーー…って、おい?!」
グイグイグイ
どん……っ!
「……ッた!、何てこと……っ!!人をソファに投げるなよ!」
「お前……ホモなの?」
「、」
ビク
「…お前、昔は全然、普通に女の子好きじゃなかった?」
「、……べ、つに……それは…」
「何で?どうして急に男に走ってんの?」
「男に走ってって…、…別にそんなんじゃねえよっ、」
「ーじゃあ何なんだよ、実際男と付き合ってるくせに」
「あ、あいつは…ッ!」
「………」
「……あいつは……」
「………」
「…………と、くべつ………って、……ゆうか……」
ーーグイ……!
プルルルルル
「、ーちょっ……っっーー何!!?やーめーーろーーよッッ!!」
「…ムカつく」
「はああああ!?」
「俺、お前のこと好きなんだよね」
「、……はあっ?、お前…何言ってんの……っ?」
「好きだった、高校の時、2年の時から、同じクラスになってから、ずっと。お前のこと、ずっと」
「は……っ!?」
「でも男同士だからとか、あの頃は色々、踏み出せなかったんだよ。でも今はいける、今はお前のこと、そんな躊躇なく抱ける、お前のこと奪いたい、アイツから」
「…っ…おま、え……マジ何言ってんの……?…だ、抱けるって……お前…、なにっ…、…何言って……っ、……ー腕触んなよ!!」
「…っ、反抗すんなよ…ッ!黙って大人しくしてろよ!!」
「ーーっっ、誰がするかよこの野郎……!」
ードカッ!
「……!!…ッ、…げほっごほっごほっ」
「はぁ……はぁ…っ、…はぁ」
「……てっめぇ…」
プルルルルル……
ピッ!
「もしもし!」
「あ、佐山さん?」
「……ーあ、…夏川さん?」
「…?どうしたんですか?そんな張り切って電話に出ちゃって」
「、あ…いや…」
「あ。枷かと思って勢い良く取っちゃった?」
「……ッ、」
「クス…。も〜佐山さん可愛いんだから〜」
「な、夏川さん、あの、…あのっ!」
「…ん?どうしました?」
「あの…あの…あの…あの…っ俺…」
「……。…え?」
「………ぁ…の…………た」
「え?佐山さん?なに?聞こえない」
「…いや、…ぇと…あの…だから、あの…」
「……。」
「………」
「ーおいっ、佐山!!」
「ーー!っ、…あっ!?」
ーピッ!
……
「ーーッッ……、…何てことすんだよお前…!!」
「電話なんか出るな。俺がいるのに、他の奴と話すな」
「、……はぁっ!?」
「お前は元々、俺のものだったんだよ……それなのに何だ…俺の前で俺以外の奴と話すなんて…」
「な…」
「ー最初に飼ってたのは俺だ、……他の奴に、良いように餌付けされてんじゃねえ………」
……え………づけ……………?
ードサァ……!!
「!」
「…思い出させてやる。お前が誰のものか、俺が今から、…しっかりお前に思い出させてやる……」
………嫌……、…いや………、…
「ーーーーやめ!!!」
ーーー
プルルルル、プルルルル
「ーあら?あなたの電話、鳴ってないかしら?」
「……あぁ、すみません。でも、この人の電話は、別に出なくてもいいので」
「そんなこと言わないで?私たちは別に、お食事中に電話に出たとしても、それに対して何も咎めたりなんてしないわ」
「……じゃあ、少しよろしいでしょうか?」
「ええ。勿論よ。ねえ、あなた」
「…まあ、……好きにすればいい」
「……。…では、少し席を立たせていただきます。失礼します」
……
ー
プルルルルーーピッ
「ーーあっっ!もしもし枷…!?」
「……夏川先輩……あなたね、何の用があって今日に限って電話なんか…」
「ー用とか言ってる場合かよ…!」
「………は?」
「今、佐山さんに電話したんだけど…、何か途中で切れて…ッ!様子おかしくて!」
「…え?」
ーードクン
「佐山さんのこと呼んでる、男の声がした…!聞こえたんだ!電話口から…!」
「……」
「俺、何か嫌な予感してさ……、…だからとりあえずお前の家方向に向かって走ってんだけど…っ、…つーかお前、佐山さんと一緒じゃないのかよ……!何やってんの?!」
「…先輩は、…今は……家に」
「家っ!?」
「………やっぱり……やっぱり……あの男はーー」
「ーはっ…!!?」
「……いえ。……俺も、すぐに向かいます」
「分かった、じゃあまた後で…!」
プツッ
…………………。
ツー、ツー、ツー
「…………ー」
ーーーーーー
ガタタタ…ッ
「っ、はーーなーーーせーーーよーーーー!!…この変態ッッ!」
「離さねぇよ、お前のこと抱いてやるから」
「…ッ、……やだよ!!嫌だよ…!俺はお前になんか、抱かれたくなんかない……!」
「…こんなことになるなら、はじめから取っておけば良かった。変な虫つくくらいなら、他のやつに掘られるくらいなら、何が何でも、最初から自分のモノにしておけば良かった」
「はあ…っ?、…誰がお前のモノになんか……っっ!」
「佐山、」
「ー!嫌ァーーーー!!やめろ!!はーーーなーーーれーーーろーーーーー!!!」
「動くな、暴れんなよ!」
「お前が顔近づけてくるからだろう!?」
「俺より背も力もないくせに、退けさせようとしてんじゃねぇ」
「うっせぇこの野郎……!俺に触んな!!嫌だ…!痛い……!手…っ、…痛い……!!」
「だったら暴れんな。大人しくして、俺の言うこと聞いてろ」
「お前の指図なんか聞かない!!」
「枷ってやつの指図は聞くのかよ」
「あいつは俺の、大切な奴なんだよ…!」
「…へぇ、そうかよ。とか言ってどうせ、あいつにも飼われてるだけだろ?…あんなのとお前じゃ、全然釣り合ってないんだよ、あんな綺麗なのがお前のこと、本気で好きなワケねえじゃん
」
ードクン、
「…そ、んなワケ……な」
「まだ俺とお前のが合ってるよ。あんなお前とは全く種類違うみたいな人間と付き合ってさ、お前可哀想だよ。騙されてるだけだ、良いように誘惑されてるだけだよ、お前」
「……え……」
「お前には不釣り合いだ、似合ってない。残念だろうけど」
「…………………ぇ………?…」
「…なぁ、佐山……あいつよりも、俺の方がお前に見合うよ。…俺の方がお前のこと好きだよ。大好きだよ」
「………」
「あんな奴やめて、俺の方に帰って来なよ………佐山」
「……ー」
ーーあなたのことが何よりも……
……枷は……そう言ってくれたんだ…俺に……確かに俺に……
俺が何よりも大切で、一番なんだと……どうしようもなく好きなんだと………
〝絶対開けないで〟
ーーーッ
何やってんだ……。…俺は………っ
ー
「離せ……!変態ッッ!」
バシッ……ッ!
「っ、…いって……」
「…お前に何言われようとッ!誰に、何を言われようと…っ、…俺はあいつの言葉しか信じない……!あいつは俺に、嘘ばっかつくけど、その言葉は絶対、嘘なんかじゃない…!!」
「……」
「ー俺は騙されてなんかねえよ…!俺が自分から選んで、俺が自分からあいつのこと好きになったんだよ!!釣り合ってるとか、釣り合ってないとか、そんなのどうでもいい…!!それでも俺は、…それでも俺はっ、……俺はあいつのことが、それでもどうしても好きなんだよ……!」
「……あぁそ」
「…だから早く上からーー!」
「…お前があいつのこと好きなのは、よーく分かった。俺に歯向かってまでそんなこと言ってくるんだもんなぁ痛い程よく分かったよ」
「……な、んだよ…それ…」
「ーーだけど佐山、…俺はなんと言われようと、例えお前に頬を叩かれようと、俺はお前を俺のモノにしてみせるよ、あいつなんかじゃなくて、俺のことだけで、頭がいっぱいになるように、俺がお前を、あいつ以上の愛で、愛してやるよ」
「…っ……そんなの、…いらない……いらないッ!俺はあいつの以外っ、…枷の好きって言葉以外、…俺は他の誰の好きも、何もいらない…!お前のなんか、…ひとっつもいらねえんだよ……!」
バシ……ッ!
……
……え…………?ーーーー…
「……な、……にを………す」
「ーうるっせえんだよ」
ビク
「……黙って俺の言うこと聞けば良いんだよ………黙ってお前は……俺のモノになっとけばそれで良いんだよ…」
「……、…や、…やめ………しの、さか………、…いや、…やだ、……顔………近づけな」
「俺が一番、お前のことが好きだよ」
「ーーー」
ーー俺が一番……あなたのことを愛してる……
何だ………
なんだ……?…………この………
この…………デジャヴする感覚はーー
……
「……………佐山…………好きなんだ……。……お前のことが…………」
「………ー」
〝…………先輩………好きですよ〟
……
……振り払わないと、この手を……
振り払わないと……今すぐにーー
…だけど、……だけど……だけどどうして……ー?
……この手を何故、俺は思い切り、振り払えることが出来ないんだろうーー?
〝………好きだから、こんなことするんですよ…先輩〟
「…………佐山…………」
……あ。
…そうか…………。…似ているのか、……似ているんだ、この2人は……。
この2人は………ーーー
「………佐山、」
〝………先輩〟
「………顔を上げて」
〝…………顔を上げて?〟
………駄目だ
駄目だ……駄目だ……。流される、錯覚する、俺を見つめるその目が、あいつに似過ぎてる……
捉われる、捕われる、囚われる。
その目を俺に、向けないでくれ……
思い出してしまう……過去の彼を…
あの日俺を襲った、切なそうに、どこか苦しそうに、けれども俺に、好きだと言った彼を……俺をどうやっても手に入れたいと言った、…あの時の彼をーー。
彼を、カレを、かれを…………
振り払えばあいつが、枷が、
泣いてしまうのではないかとーーー
だから俺はあの日、だからあの日、…俺は、……俺はーーー
……傷付けたくないーーー
………泣いてしまう、
そんなことさせられない……傷付けてしまう………そんなこと、させられない……ー
……泣いてしまう、泣いてしまうんだ、…傷付けてしまう、…傷付けてしまう…なんて……、そんなの………そんなの……
傷付けたくない、傷付けたくない……
俺は傷付けたくない…、俺は誰も、何も、全部、傷付けたくない……傷付けたくない……ーーー
〝…………………先輩………〟
………俺はこの手を、
ーーーふ、り、は、ら、え、な、い
ガチャ!!
「やめろ…………!!!」
ー夢想する中で、俺は
切迫詰まったその声にハッとするように目を開いた。
玄関先には、息を切らしこちらを見つめる、ーーーー紛れもないカ、レの姿があった。
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