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優しい
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ため息に、俺の息が止まりそうになる。
やっぱり、心変わりだったのか。
逃げ出そうとする心をなんとか踏みとどまらせて、アキラの次の言葉を待つ。
「あんまり、痩せるなよ。抱き心地悪くなって、オレが淋しい」
予期せぬ言葉に、思わず顔を上げると、ふわりと労るように抱き締められた。
驚きからか、涙が一粒こぼれ落ちて。堰を切ったように、涙が止められなくなった。
問題は何一つ解決はしていない。それでも、アキラの温もりを感じただけで、心が震えてしまう。アキラを求める心を止められない。
「リョウって結構よく泣くよな」
誰のせいだ、と言ってやりたかったが、嗚咽しか出てこない。
アキラの服が涙と鼻水で汚れていくのも構わずに、アキラに抱きつき泣き続けた。
*****
浮気の件は、俺からは何も言わないことにした。
もしかしたら、俺の思い過ごしかもしれないと、自分に言い聞かせた。
今、アキラが俺の傍にいてくれる。アキラは何も言わないし、それならそれで、いいじゃないか。
今までのようにアキラと過ごせるなら、アキラを失わずに済むなら、三、四日苦しんだことは忘れてしまおう。
───そう、考えていた。
*****
アキラが、優しい。
嬉しいことのはずが、僅かな不安も誘う。
“罪滅ぼし”なのだろうか、と疑念を覚える自分が情けなくなる。
あれだけ反対していたバイトへの送り迎えをしてくれたり、普段はしない家事をしてくれたりする。
アキラの作ってくれた夕食を口にしながら、ふと、疑問をぶつけてみたくなった。悩みすぎて自虐的な気分になっていたのかもしれない。
「最近さぁ、なんで色々してくれんの?」
「ん、嫌?」
ニヤニヤ笑いに、少しバカにされてる気分を味わいながらも、尚も問い詰める。
「嫌とかじゃなくて、質問に答えろよ。今までそんなことしてなかったろ?」
「・・・お前、痩せただろ?しかも、かなり。なんかさ、オレが太らせたいなって、思っただけなんだけど。・・・嫌なら、やめる」
言いにくそうに、最後の方は聞き取りにくいほどの小声で答えるアキラを、可愛いと思ってしまう俺は、もう重症だ。
「ありがと」
答える俺も、声が小さくなってしまう。
恥ずかしいけど幸せだ。
こんな日々を取り戻せてよかった。
アキラを好きになってよかった、と心から思った。
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