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18歳以上ですか?
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甘い
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「どうぞ」
コトリと目の前のカウンターにグラスを置かれ、ようやく顔を上げる。
目の前のグラスには、綺麗な淡いサーモンピンクの液体が、シュワシュワと細かな泡を出していた。
「綺麗ですね、なんていう名前なんですか?」
「ホントに知らないんだなぁ、スプモーニって聞いたことない?」
ケイさんの驚いた表情に自分の無知を恥ずかしく感じながら、本当に知らなかったため、素直に首を横に振る。
「お酒に弱い、女の子に人気のお酒だよ」
横からアキラにそう茶化されると、ますます顔が熱くなった。
「寒いから、ホットカクテルでもいいかなって思ったんだけど、かなりのぼせてるみたいだし、リョウ君のその可愛いほっぺ見てたら、どうしてもソレ作りたくなってね」
二十歳前の男を捕まえて、可愛いはないだろうと思ったが、ニヤニヤ笑う二人を見ていると、言うのがバカらしく黙っていることにした。
アキラは、海外のロゴがお洒落な瓶ビールを飲み干したあと、ウィスキーらしきものをロックで飲んでいた。
「あ、電話だ、ちょっと外、出てくるわ」
そう言うなり、携帯を握りしめアキラが店を出ていった。
別に、ここで話せばいいのに、聞かれたくない相手なのか。その考えが顔に出ていたのか、ケイさんが苦笑いしている。
「ごめんね、この店、電波悪くってね、みんな電話のときは外に出るんだよ」
言われて自分の携帯を見れば、確かにアンテナマークが1本と圏外とを繰り返していた。
「ちょっと、離れるね、一人にしてごめんね」
他のお客に呼ばれたらしく、ケイさんがカウンターを離れていった。
アキラがいれば大丈夫なのだが、初対面の相手と一対一で話すのはやはり疲れる。知らず知らずの内に、ため息をもらしていた。
「ちょっと、ここいい?」
急に話しかけられ、驚いて声の主を見ると、アキラくらいの身長の男が立っていた。優男風というのか、少し垂れた目元の男前だ。
「アキラの連れだよね?」
アキラの名前を知っているのなら、知り合いなのだろうか。思わず、頷く。
「アキラは、今電話で・・・」
「うん、知ってる。僕はキミと話しにきたから」
断る間もなく、にこにこ笑いながら隣に座られてしまう。助けを求めたくて、ケイさんを探すが店内の薄暗さに見つけられず、出入口側はその人の向こう側で、さりげなく動きを封じられているようにも感じた。
とって食われるわけでもないか、と諦めて腹をくくる。近づかれるのは気持ちが悪いが、適当に愛想よくするくらいならなんとか我慢できるだろうし、そのうちこの人も飽きるだろう。
その考えが甘かったことを、後から後悔することになるなんて、思いもせずに。
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