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泥沼
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アキラはしばらく傍にいてくれた。
体を捩じ伏せられた恐怖は、体の奥の方に刻み込まれていたが、それでもアキラへの思いは変わることなく、俺を苦しめる。
こんなに、愛しいのに、この人は俺だけのものじゃないんだ。
昨日は帰ってきてくれたけど、きっと、他の日にはあの綺麗な男の人といた。俺を抱くように、あの人を抱いたんだろう。
泣くな、泣くな、泣くな。
必死で涙をこらえた。泣いたら、アキラは気にする。また優しくされたら、どんどん離れるのがツラくなる。
「ありがと、アキラ」
出てきた声が意外と落ち着いていて、安心して続ける。
「もう、大丈夫だから。アキラは、行っていいよ」
あの人のところに、とは言えなかった。
はぁ、とアキラのため息が聞こえる。
「リョウ・・・お前さ、俺のこと好きか?」
アキラからそらし続けていた視線をアキラの方に向けると、目が合う。それだけで心臓が止まりそうだ。
好きだよ、好きだ。
嫌いになれる方法を教えてほしい。
それでも、言ってはいけないと吐き出したい想いを必死で我慢する。
黙っている俺に焦れたように、アキラが俺の肩を揺さぶった。
「答えろよ」
「・・・アキラには、あの人がいるだろ・・・?俺の気持ちなんて関係ないだろ・・・」
残酷なことをさせないでくれ。
これ以上、惨めな思いはしたくない。
「オレのことはどうだっていいだろ! お前の気持ちを聞いてんだよ、答えろ!」
怒鳴られると、ビクッと体が震える。
どんどん強くなる肩を掴む力に、まだ鮮明に思い出される暴力が重なり、頭が真っ白になってしまう。この気持ちを言ってしまえばどうなるのか、どこかでわかっていながら、自ら泥沼に飛び込んでいく。
「・・・・・す・・き」
一度箍が外れてしまえば、もう止まらなかった。
「すきっ、すきだ、アキラがすきだよ、すきだっ」
あんなに我慢していた涙も、想いと一緒にこぼれ出る。
この苦しさから抜け出したいと、目の前のアキラにしがみつく。
「なら、何にも考えるんじゃねえよ。オレを好きってことだけでいい」
残酷なことを言われているとわかっていて、必死で何度も頷く。
「俺がっ、アキラをすきな、だけでっ・・・いいッ」
「それで、いいよ」
アキラの満足そうな笑顔が見えた。
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